『Genesia Ventures ESG Report 2023』をリリースしました!
こんにちは!日本・海外(アジア、一部アフリカ)でシード期のスタートアップに投資するベンチャーキャピタル(VC)ジェネシア・ベンチャーズのポートフォリオマネージャー宮原です。
ポートフォリオマネージャーの役割は、IRやファンド管理といった基幹業務を担うことだけでなく、時代の潮流や市場の動きに応じて柔軟に変化し、そして多岐に及ぶことを先ずお伝えできればと思います。
関わらせていただくステークホルダーは、ファンドの有限責任組合員(LP)を含む事業会社、監査法人、証券会社や銀行などの金融機関、行政、アカデミア、地方関係者(自治体、地方企業、地銀)、NPO/NGOなど、多岐に及びます。私たちは、スタートアップエコシステムに関わる様々なステークホルダーとの連携を通じ、支援先スタートアップのバリューアップやサポーターづくりを側面支援しています。
そうした中で、今回ジェネシア初となる『Genesia Ventures ESG Report 2023』を作成しました。ESGという共通言語を通じ、様々なステークホルダーの皆さんとの対話に繋がると有難いなと思っていますので、ぜひ本編をダウンロードのうえ、様々なシーンで対話の糸口としてお使いいただけると嬉しいです!
🌿作成の背景
昨今ESGという非財務情報開示の動きが大企業・上場企業を中心に広まっていますが、スタートアップのエコシステムにおいても無関係ではないと考えています。
「なぜシードVCである私たちがESGに取り組むのか?」この問いに対して、私たちは、スタートアップ自らがESG経営の理念や企業文化を早い段階から育むことで、自社の体制強化や制度構築のスムーズな着手につながり、結果として企業価値の最大化に繋がるという正のサイクルが創られる、という仮説を持って取り組んでいます。
私たちがESGをどのように捉えているのかについては、昨年(2022年)、様々なステークホルダーを招へいしたESG Summit2022開催時に事務局メンバーでも話し合ったことがあるので、ぜひこちらもご一読いただければと思います。
さらに、上述の仮説に加えて、ESGという一種の共通言語を通じて多様なステークホルダーとの対話の機会がもたらされることの価値も特筆すべき点だと考えています。
多種多様な考えや立場の人間が集まり高みを目指そうとするなかで、「ESG」という一種の共通言語を利用し、社内外のステークホルダーとの対話を重ねることで、企業が自らの企業価値や存在意義を再評価したり、因数分解を行うプロセスが生まれます。もちろん情報開示も大切ですが、そうした思考の探索こそが大事なことではないかなと考えています。これは大企業においてもスタートアップにおいても同じだと思っています。
また、個人的な話ですが、私は以前、政策金融機関で日本企業の海外事業展開のサポートに関わっていて、欧州やアジアなどで勤務する機会がありました。グローバルに目を向けると、ESGにアラインした非財務指標の開示は投資活動を行う企業にとってますます重要になっていて、例えば環境先進国といわれる欧州では、「EUタクソノミー」と呼ばれる持続可能で環境配慮的な経済活動に具体的な指針が示され、法的拘束力も伴うため企業は待ったなしの対応が求められています。
一方で、日本では2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、政府によるガイドラインの制定やタスクフォースづくりなどキャパシティビルディングは行われていますが、もっと強制力を持たせるべきだという批判的な声も散見されています。また、一部の新興国・途上国では、高い経済成長や旺盛なエネルギー需要を背景に安価な石炭由来のエネルギー源が重宝される国もあり、一口にESGといっても各国の事情によりさまざまな捉え方があります。
多様な国々が共存するグローバル社会で、ESGを糸口に「持続可能な経済活動」を再考し、社会実装に落とし込んでいくには、イノベーションや発想力という武器を片手に、スピーディに課題解決に取り組むスタートアップの存在は欠かせないと考えており、スタートアップにおけるESG取り込みについてこれからも考えていきたいと思っています。
📚期待される読み手
本レポートの読み手の皆さんの属性としては、既にファンドに関わっていただいているLPの皆さんや支援先スタートアップ関係者の皆さんが中心になるかなと思っていますが、既出のとおり、スタートアップエコシステムに関わる様々なステークホルダー - 事業会社、監査法人、証券会社や銀行などの金融機関、行政、アカデミア、地方関係者(自治体、地方企業、地銀)、NPO/NGOなど、様々な方に情報が届くことを期待しています。
「シードVCがどのようにESGに取り組んでいるのか?」「今後ESGに注力するファンドやスタートアップと連携したい」など、様々な思いを抱えていらっしゃる皆さんに届くと嬉しいです。
👀ちょっとかいつまんで読んでみよう
レポート第1弾となる今回は、約90社の国内支援先の経営者/CxOの皆さんにESG経営に関するアンケートにお答えいただき、その内容を取りまとめています。
本編についてはぜひダウンロードしていただければと思いますが、お忙しい皆さまのためにこちらでも少しかいつまんでご紹介します。
【Environment】事業ステージや組織体制も発展途上にあるスタートアップでは、身の回りのできることから環境配慮の取り組みに着手
調査対象全体で、「事業を行う上で環境配慮の取り組み(リモートワーク導入によるペーパーレス化、節電など)を行なっている」と回答したのは約80%
シリーズA以降になると、環境意識が組織カルチャーとともに定着し、具体的なアクションの検討・実行が進む傾向
【Social】従業員の成長機会の創出・エンゲージメント施策は全ステージで進むも、人的資本経営に向けたDE&Iの推進や心身の健康バランスへのケア対応などは道半ば
調査対象全体で、「従業員のエンゲージメントを高めるための施策がある、または検討中」と回答したのは約80%。事業ステージに関わらず、従業員の能力・才能を発揮できる機会を提供している企業がほとんど
シリーズAに入り、組織づくりに専念しやすいフェーズになると、評価制度や組織にあった補助制度など具体的な検討・導入が進む傾向
一方で、「多様性を意識した採用ができていない」、「労働時間と従業員の心身の健康バランスを保つための取り組みができていない」と回答した企業はそれぞれ約30%あり、取り組みは道半ば
【Governance】事業ステージの進捗とともに、より透明性が高く、健全な経営体制の構築に向けた意識および施策実施が高まる傾向
「業務を円滑に行う仕組み(業務マニュアルの整備など)」は事業フェーズでの差は少なく、約80%の企業が取り組んでいる
一方で、シード〜プレシリーズAの事業ステージでは、「稟議制度や再鑑制度がある」へ「はい」と回答したのが約20%に対し、シリーズA以降の企業では約70%にのぼる
同様に、「経営者や従業員による横領などを未然に防ぐ仕組みはあるか」の質問に対し、「はい」と回答したシード〜プレシリーズA企業が約40%に対し、シリーズA以降の企業では約80%にのぼる
総じて、シード〜プレシリーズAの事業ステージでは、制度化や施策に着手できる企業は少ないが、シリーズA以降では具体的な取り組みが進む傾向
より具体的な施策内容や施策実施に向けた様々な課題など、本編でぜひご確認いただければと思います。
🗻ファンドの価値最大化に向けて
スタートアップにおけるESG経営やESG事業の取り組みは、なかなか定量的に指標として表しにくい側面もあります。「健全な経営体制に取り組んでいるか?」との問いにYes/Noで答えることは可能ですが、その山の登り方は企業や起業家によって千差万別です。
今回のレポートでは、支援先スタートアップ数社を選抜し、「ESG経営の取り組み」や「将来的な企業価値への貢献」などについて、経営者/CxOがどのように考えているか、インタビュー形式でヒアリングしています。ぜひこちらもご一読いただき理解を深めていただけると嬉しいです。
今回は、ジェネシア・ベンチャーズとして第1弾となる取り組みであり、支援先スタートアップがESGに対してどのように向き合い、価値創造の一端と捉えているかというファクトを認識し可視化を行うことが主眼のレポートになっています。
今後はよりエビデンスを積み重ね、支援先スタートアップの取り組みが企業価値の向上に貢献しているか?という問いについてブラッシュアップを行い、将来的に、長期リターンに繋がるESG経営の方法論やVCとしての支援の在り方を確立し、さまざまなステークホルダーから理解を得られるような仕組みづくりを行っていきたいと考えていますので、ぜひ皆さんのご知見も拝借できると嬉しいです。
🤝さいごに
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。まだまだ至らない点も多いレポートかと思いますが、様々な方からフィードバックやコメント、連携のご照会などいただけると大変幸いです。
また、今後のレポート作成にあたって、スタートアップサーベイやESGレポーティングに関わられている方とも繋がらせていただけると嬉しいです。是非今後の連携・協力についてお話できればと思いますのでぜひご連絡ください!
さらに、ジェネシア・ベンチャーズでは、現在ポートフォリオ・マネージャーを大募集しています。採用情報についてはぜひこちらをご覧ください!カジュアル面談でぜひお話させてください。また、同僚の実希さん中心に取り組んでいる、VCファンドコントローラーの横横の繋がりを強化する取り組み(【VC/CVCのファンド管理担当者のみなさんへ】VC Fund Controller Networkのご紹介)も併せてぜひご覧ください!
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