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エッセイ

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自分が書いたエッセイをまとめています。
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#エッセイ部門

名前をひらがなで書いていると、忘れていた何かを思い出す

自分の名前を全て漢字で書けるようになったのはいつからだろうか。 小学校へ入学したてのころ…

秋、中天に楕円球。

秋風が吹き始めると私は大きく深呼吸をする。鼻の奥が少しだけ冷たくなり、ツンとした香りが鼻…

祖父と交わした生き方の約束

「ヒロちゃん、ええか。最後は人に使われない人になりなさい」 2年前に他界した母方の祖父は…

ようこそ、赤ちゃん。あなたの「美味しい」のそばに。

ハロー、ワールド。2023年3月25日。午前5時13分。我が家に第一子の女の子が誕生した。小さな手…

「待ち時間」の中にある豊かさ。僕はもうすぐパパになる。

「待ち時間」と聞くと何を思い浮かべるだろうか。 僕の場合は、エスカレーターでの待ち時間が…

ピンク髪とヒョウ柄で、僕は今日も東京にいる。

どうにもこうにも人の目を見て話すのが苦手だ。 相手が男であろうとも女であろうと関係はない…

あの日の香りが連れてくる思い出に、僕らはいつも見えない涙をこぼす。

春が近づいてきた。地下鉄にマフラーがちょっと息苦しい。北風と南風が混ざったぬるいビル風は、なんだか追い焚きをしている途中の湯船にいるようで、妙な眠気を誘う。日常の中にある小さなグラデーションで今年も春がやってきたんだなと実感していた私は、渋谷の片隅で深く息を吸い込みながら狭い空を眺めていた。 そんななんでもないひとときに、前触れもなく胸を引き裂かれるような切ない感情に襲われる。妙に懐かしく、淡く、儚いそれは反芻するには心がもたない。ひと齧りしてそっと残りを冷凍庫に残しておき

返して、僕らのスーファミ。

市民プールへ、20インチで駆ける。 河川敷の草花は青嵐と共にささくれ立ち、僕たち二人はギヤ…

この夏、僕は西成で“迷子”になった

僕は一人、当てもなく歩く。 大阪市西成区・あいりん地区。通称、釜ヶ崎。 この夏、僕はここ…

おじいちゃん、インパール作戦について教えて欲しいんだ。

今年も大阪に夏が来た。 近鉄電車に揺られ上本町駅で降りる。 全身にまとわりつく湿気とアス…

サントリーと開高健とわたし

「コピーライターになりたいんやったら、そら、あんた、開高さんやナ」 私が大手家電メーカー…

探偵!ナイトスクープで彼女ができた話

何を隠そう、私は東京育ちである。 学生時代は原宿でマリオンクレープをかじり、渋谷のタワー…