研究者が注目する世界の環境系プロジェクト「フードロス削減」

森・里・海のつながりを総合的に研究する「RE:CONNECT(リコネクト)」は、日本財団と京都大学が共同で行うプロジェクトです。本プロジェクトのクリエイティブ部門を担当するコンサルティングファーム、Nue incからお題をいただき、研究者が記事を執筆する本企画も、はやくも4回目となりました。第4弾では、RE:CONNECTの研究者が注目している環境系プロジェクトを紹介いたします。情報収集などに役立てていただけましたら幸いです。

世界中で対策が進められている持続可能な開発目標,SDGs。最近は街に出てもテレビを見てもSDGs関連のことであふれていますね。生物を研究している人間としては,「海の豊かさを守ろう」や「陸の豊かさも守ろう」をはじめとして,どんな企業が生態系保全に対してどんな取り組みをしているのか,日々アンテナをはって過ごしています。が,今回は,取り組みやすく個人的に実践している「フードロス削減」について。SDGsでは主に「つくる責任,つかう責任」に該当します。

フードロスとは,本来なら食べられる食品を廃棄してしまうこと。利益の追求,消費者からのクレームなど様々な要因が元で先進国では食品が大量に廃棄されるのに,世界の貧困地域では今も飢餓に苦しむ人々がいる。日本も他人事ではなく,年間643万トンもの食品が廃棄されています(2016年,農林水産省)。驚くことに,この食品廃棄の半分近くは家庭由来なのです。

とはいえ,私もこの点には十分心当たりがあります。私がフードロス削減に取り組むようになったのは,学生時代の自身の行いへの反省がきっかけとも言えます。

一人暮らしをしていた学生の頃は自炊でした。普段寝泊まりしていた実験所は市内から車で1時間,最寄りのショッピングモールでも車で30分,となると,効率よくまとめ買いしてしまいます。きちんと購入する日数分考えて必要なものだけ買えば良いのですが,当時は何も考えず,食べたいものを買っていました。研究ばかりに打ち込むと,頭が冴えている時は研究優先で食事を抜いてしまったり,おにぎり一つで簡単に済ませてしまったりで,せっかく購入した野菜などのナマモノは傷んでしまってゴミ箱行き…。とても申し訳ないと思いつつ,余裕のなかった当時は卒業するまでこれが続きました。

多忙を極めた学生時代終盤とは打って変わって,育休で研究を中断した1年ちょっとは,何もしないでいる自分が苦痛で(若干育児ノイローゼ…),毎日の散歩を兼ねて,1日分の食材を買いに出かけるようになりました。必要分だけ買いに行くようになると,食材の把握が容易な上に冷蔵庫もスッキリして,腐ったナマモノや傷んだ食べ残しを捨てることがほとんどなくなり,今まで自分がどれほど無駄なことをしていたか,初めて気がつきました。

一瞬でも専業主婦をしてみて気がついたのは,スーパーの値引き商品は意外と夕方よりも朝一に多いこと(夕方はお惣菜?)。賞味期限間近の廃棄直前の商品を買うことで,こんなちっぽけな自分でも,もしかして商品の廃棄削減に貢献できるかも??と思うようになりました。考え方が変わると,いろんなことに気がつきます。街の小さなパン屋さんでも,昨日の売れ残りを半額で売っていると,応援したくて足しげく通うようになりました。露店では包装なしの新鮮な野菜が並び,形の悪い野菜を0円で好きなだけどうぞと置いてあります。最近はスタバでの閉店前の値引きや,イオンでの冷凍保存期間の延長に成功したとの報道を見かけました。このような環境に優しい取り組みが増えていくと嬉しく,このような企業を応援したいと思うようになります。

世界でも,色々な取り組みが行われています。フランスでは世界に先駆けて2016年に食品廃棄禁止法が制定され,オーストラリアでは訳あり食材を消費者が言い値で購入できるスーパーができ,イギリスでは廃棄食材の共有アプリが開発されています。アジアでは最近,中国から食べ残しを禁止する法律が制定されました。日本でもコロナ禍の中で,飲食店や小売店からの食品廃棄が問題となり,より一層身近なものになったように思います。

「フードロス削減」に取り組みましょう,とのテーマでいかに食材を無駄なく綺麗に料理するニュースをつい先日観ました。まるで無駄のないアンコウみたい,とそのアイディアに感心します。いつかはこれくらい丁寧に生きられたら良いなと思いますが,背伸びをすると続かないので,まずは今自分ができるところから。食材を腐らせて捨てないよう気をつける。食べ残しをできる限り減らす。たった一人の些細な行動でも,飢餓を減らすことに繋がり,無駄な包装,流通に伴う二酸化炭素の排出,廃棄コストや環境負荷を減らすことに貢献できるかもしれない。そんなことを思いながら,ちっぽけな自分にできることを増やしていこうと気を引き締めた次第です。

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