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#1-8 プロジェクトの運営手法①予測型

古代のピラミッドの建設の頃から「プロジェクト」の概要はあり、長い歴史の中で様々な運営手法が培われてきました。
現在のようなプロジェクトマネジメントの概念が確立したのは、冷戦期(1950年頃)のアメリカ国防総省だと言われています。

企業におけるプロジェクト活動は「開発」がメインであることが多いので、運営手法とは、現場的には開発手法・アプローチのことです。
現在使われている開発手法は、性質で分けると3つあります。

①予測型
 ②適応型
 ③ハイブリッド型

担当する開発プロジェクトで、どのタイプが適切かを判断することも、プロジェクトマネージャーの大事な仕事の一つです。

今回は「古典的な開発アプローチ」と言われる予測型についての記事です。

予測型

ザックリ説明すると、プロジェクトで行う作業(何を行わないかの決定も含む)、スケジュール、コストを、初期段階で可能な限りすべて決めてしまって、あとは決められたとおりに進める方法です。
最初に予測した通りに進めようとするアプローチです。

最初に大きく決めてしまうので、後からの変更には、とてもコストがかかります。(現実的に変更できない場合もあります)

ウォーターフォール型

 ・予測型と言えば、ウォーターフォール。
 ・ウォーターフォールと言えば、予測型。
というくらい、予測型を象徴するモデルがウォーターフォール型です。
(現場では「ウォーターフォール型」と言わずに「ウォーターフォール」と呼ぶことがほとんどです。)

ウォーターフォール(waterfall)は、英語で、滝という意味ですが、滝って上から下に流れていますよね。
その流れと同じく、工程が上から下に順番に進められていく手法です。

主に、計画 ⇒ 要件定義 ⇒ 設計 ⇒ 開発 ⇒ テスト という流れで、上流工程から下流工程へ進めていきます。


ウォーターフォール型(上から下への図)

始まりは、1968年。NATO機構の国際会議で提言されました。
半世紀以上の歴史があります。
1970年代には、ウォーターフォールはかなり浸透していき、現在でもウォーターフォールで開発されているモノは沢山あります。

全体のスケジュールが立てやすいというメリットがあり、大規模なシステム開発には向いていると言われています。
決められた計画に従うことがメインなので、作業者のタスクは安定しており、進捗の管理もしやすいです。

一方、手戻り作業に弱いというデメリットがあります。
また、出来上がったモノが想定していたモノと違った場合の修正コストが膨大になります。
完成するまで長年かかった場合、計画段階と完成時で社会の状況やニーズが全く異なってしまうというビジネス上のリスクもあります。

「計画が命」という感じですが、実際は、計画通りに物事が進むことはあまりないですよね。

そのため、現在ウォーターフォールを採用する場合は、ユーザーのニーズが明確で、何を行って開発すべきか定義できたり、類似プロジェクトによるテンプレートがあったりするなど、特定の条件をクリア出来ているかがポイントになってきます。

1970年代後半には、そんなウォーターフォールの弱点を克服した新しい開発手法がいくつか発表されました。

この時代のプロジェクトマネジメントの歴史を勉強すると、結構日本人の方のお名前を見かけます。そして、今でも使われているプロジェクトマネジメントのセオリーのもとになったアイディアが含まれています。

1978年『トヨタ生産方式 脱規模の経営を目指して』 著・大野耐一
 ⇒リーンの原点

1986年 「The New New Product Development Games」(論文) 
著・竹内弘高、野中郁次郎
 ⇒スクラムの原点(「スクラムの原典」とも)

『トヨタ生産方式 脱規模の経営を目指して』

『トヨタ生産方式 脱規模の経営を目指して』

コチラの本は有名だと思います。
本は読んだことなくてもトヨタ生産方式という言葉は聞いたコトある方は多いのではないでしょうか。あとは、「カンバン」とか。

(自分はプロジェクトマネージャーなので、この感覚が世間からズレているのかわからないのですが……)

出版後、「かんばん方式」がバズった時の著者の大野さんのコメントが、個人的にはすごくプロジェクトマネジメントの本質を突いているな、と思いました。

「いま、かんばんについてまとめた本がいくつも出ている。私も読んだ。だが、これは実践をやっていない者にはわからん

大野耐一

プロジェクトマネジメントはセオリーの暗記ではなく、実践を通じて理解することが実践が大事です。

それは、企業の営利活動のプロジェクトもそうですが、個人的なプロジェクトでも同じです。
いくらセオリーやフレームワークを取り入れても、自分に合わせたやり方は本人が実践を通じてでなければ、作り上げていくことは出来ません。


さて。

1990年代には、XP(eXtreme Programming/エクストリームプログラミング)と呼ばれるアジャイルという開発手法の原型が登場します。

アジャイルが、記事の冒頭で記載していた3つの開発アプローチの2つ目の「適応型」の一つです。
「適応型」については、次回の記事に続きます。


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