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フランスから、食関連ニュース 2020.04.21

フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。

⒈ 今週の一言

 自宅のアパート管理人のマリーはポルトガル人です。ポルトガル・ポルト市出身で、アートの世界の憧れパリにやってきて、早30年ほど。今は独立しリヨンに住んでいる20歳になる息子がいますが、女手一つで育ててきた逞しい女性です。同じ番地には2棟。両方彼女が管理してくれているのですが、彼女は私が住むアパートの1階に住んでいます。全部で20世帯ほどが住む小さなアパートでアットホーム。マリーの気配りが行き届き、彼女のカラカラとした明るい声が響き渡ると、こうした状況下でも癒されます。毎日夕方、中庭とゴミ捨て場の周辺の水掃除を欠かさず、ドア、タイルの消毒、ゴミ捨ての日には、空になったゴミ箱の清掃など、1番にウィルスにさらされる仕事だと思いますが、嫌な顔一つせず、取り組んでいるのには頭が下がります。仕事に誇りを持っているのでしょう、アパートに住む人々とも対等に接しており、私たちも彼女に一目置いている。7区という場所柄、小さなアパートでも、正直スノッブな住民もいるのですが、マリーのコミュニケーション能力で、平等で平和な秩序が保たれています。自転車をそのまま放置したり、失礼なゴミの捨て方をしたり、アパートをバタバタ歩く人もいない。全て、彼女が、それぞれの住民に対して、分け隔てなく真正面から、こうして欲しいという真っ当な要求や提案をしてくれているからこその賜物で、優秀な指揮力だなと感心しています。

 世の中は人工知能の時代。今までは人間にしかできなかったような作業や判断をコンピュータが行える時代になりつつあります。それを、我々はどうやって可能にしてきたのかというテレビ番組がありました。気づかせてくれたのは、生の人間の膨大な仕事無しには実現できない技術であるということと、表面には現れない安価で過酷な仕事が隠れているという現実が浮き彫りにされていました。例えば、AI知能搭載車。事故なくパーフェクトに近づけるためには、知覚させる膨大なデータの集積が必要。例えば、人は傷つけてはならない障害物であるということをコンピュータに学ばせるために、数え切れない人々に町を歩いてもらい、映像データを送ってもらうという仕事が存在するということ。エキストラ、といえば、聞こえはいいかもしれません。また、フェイスブックは、危険性のある画像や動画を自動的に排除する独自の機械学習システムを搭載していますが、その機械学習システムを可能にしたのは、たくさんのモニターたちに突きつけられる、信じられない数量の、さらには残酷な映像の検閲の仕事。実は、過酷な仕事が強いられている人がいる。会社によっては、そうしたチェックを強いる仕事の場所を本拠地から出来るだけ離そうとする。なぜなら賃金を安価にするため、あるいは、本拠地の心理的な重荷を取り除くため。まるでペットボトルの処理場のように。夢のように思われる時代は、今まで以上の貧富の差を生んでいました。

 「レストランを支えるのは洗い場」と今年フランスのミシュランガイドで3つ星を獲得した小林圭さん。縁の下の力持ちで、どれだけ迅速で円滑な仕事を可能にするかは、彼らの力にもかかっているのですが、地位は上がることもなく、影の存在です。レストランのオーナーが、どれだけ彼らの存在を尊重しているか、ということが見えた時に、その店の価値も見えてくる。そんな仕事にここ最近、料理メディアもスポットライトを当て始めました。あるいは、洗い場もキッチンも、サービスも関係なく、それぞれが平等に仕事をするというレストランも登場しています。色々な意味で、世界が2分されていくであろうことを感じています。

2. 今週のトピックス【A】アンジェ市の助け合い【B】METROフランス、コロナウィルス 下の情報サービス始める【C】有機栽培農家支援のオペレーション【D】特別融資の現状『E』ベルギーのレストラン・カフェ支援プラットホーム【F】ワイン業界、消毒用アルコール液生産許可求める


2. 今週のトピックス

【A】アンジェ市の助け合い

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