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フランスから、食関連ニュース 2020.04.28

フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。

⒈ 今週の一言

フランス政府は5月11日からロックダウンを緩和していくとの声明を出しましたが、その目標に向けて、『防備、検査、隔離』を軸にしたプランが本日発表されました。さらに議会内での投票、最終週にも状況を鑑みて調整が図られていく状況です。

ロックダウン下で集客があってこそのレストラン、カフェ、バーなどは最も厳しい業界の一つです。解除後の、客席の設け方、サービスする料理の安全性、キッチンはもちろんサービスのマスクの着用、換気、などなど、解決すべき問題を挙げたら数え切れません。5月末に6月2日以降のオープンが可能であるか討論され、感染者が少ない地方から段階的に解除を進め、見通しのつかない都市部であるパリとパリ近郊では最も遅れるのではないかと予想されます。

そんな中4月中旬からいくつかのレストランがテイクアウトを始めました。星付きレストランも例外ではありません。希望的観測でもパリは6月15日辺りからのオープン開始、バカンスである7月8月も休まず稼働させることも囁かれている中、デリバリー・テイクアウトで着実にお客をつかんでいくのが現実的であると意識を変えているようです。実際にオープンしても、通常とはほど遠い稼働率しか見込めないでしょう。安全性からもちろん満席にはできませんし、お客も行く店を限定するなどを想定すると、今までのやり方では成り立たないという現状です。

「フランス人のガストロノミー的食事」は10年前、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。技術や外交、産業によって洗練されてきた料理を食するだけでなく、食卓での会話を楽しみ、作法が洗練されてきたというフランス独特の風景、社会環境とも関わって培われてきた伝統であり芸術であるガストロノミーは、継承されるべき文化として国内外で承認されました。アラン・デュカス氏などが代表を務める、そのフランス料理を継承していくために立ち上げられた組織コレージュ・キュリネール・ドゥ・フランスは、この非常時、マクロン大統領に向け、「フランスガストロノミーを守るために、レストラン・ホテル業界に対する迅速な対応を要請」したのも、当然の成り行きでした。外交の場である食卓が失われること、すなわちそれはガストロノミーの喪失にも繋がるからです。と同時に、ガストロノミーに今後求められていくこと、あるいはガストロノミーとして今後継承していかなくてはならないことを、考え直さなくてはならない時代が到来したようにも思えます。

もう25年以上も前に、これからのビジネスはガストロノミーではないビストロだと弟子たちに提言して、その弟子たちがビストロノミーという新たなレストラン形態を生み出すことになったという逸話のある、師匠のクリスチャン・コンスタンさん(70歳)著名になった弟子たちの数たるや枚挙のいとまがないほどで、時代を読む力もある名シェフです。ル・クリヨンのシェフを務めたのち、街場のビストロを自らもオープンして、ガストロノミーで磨かれたセンスと技術、豊かな業者との関係を武器に、リーズナブルで美味しいビストロ料理を提供して、未だに人気を誇る店として君臨しています。今回もいち早くテイクアウトに取り組みました。FBを活用して、多くのシェフたちもメニューや写真を載せているのに対して、コンスタンさんはやはり頭一つ出ていました。本日のメニューを一皿一皿ビデオで簡単に説明するという、たったこれだけのことですが、ただのビーツのサラダも、ぜひ食べてみたい一皿になる。テイクアウトもありがたいと思いつつ、写真やメニューだけでは臨場感が足りず、想像力を掻き立ててくれない。お客に向けて、正面から声がけをしてくれる心は、消費者の心にも響きます。マクロン大統領の政府声明の時のように。例えスクリーンの向こう、あるいはマイクの向こうであっても、視覚と聴覚の影響力の大きさ、あるいは可能性をも感じさせられます。そういえば、料理の演出に聴覚の刺激を使った試みが新進気鋭のレストランで前衛的にされたことがありましたが、聴覚の大切さはもっと違ったところ、当たり前のところにあるのかもしれません。

2. 今週のトピックス 【A】トゥール・ダルジャンのパン屋に女性シェフが就任 【B】星付きレストランがデリバリー開始 【C】パリ・ビール・クラブ、販売マップ作成 【D】小麦粉の売り上げ上昇 Eワイン競売で医療従事者支援

2. 今週のトピックス

【A】トゥール・ダルジャンのパン屋に女性シェフが就任

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