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フランスから、食関連ニュース 2020.04.14

フランスにおける旬でコアな食関連のニュースを、週刊でお届けします。

⒈ 今週の一言

昨日マクロン大統領からロックダウンの5月11日までの延長が発表されました。今週のトピックスでも記していますが、レストラン、ホテル関係は5月11日の解除は見込めないとの声明で、2020年は失われた年と、ホテル・レストラン団体は悲愴感をあらわにしています。連日料理人さんや、食品関係のブティックを持つオーナーの方々、職人の方などと話す機会もありますが、ロックダウン後が昔のように戻ることを実際のところ期待していません。何かを変えなくてはならないと考えているのは、皆同じのようです。

しかし、フランスにおいて底力を感じるのは、連帯のもとに社会が成り立っているということでしょうか。例えば、私の家のそばにあるレストラン「ラミ・ジャン」のオーナー・シェフ、スタファン・ジェゴさんが成し得たこと。カフェ・レストランなどの商業施設は何かの大事のために、損害保険に入っていないところはないのですが、今回ジェゴさんは、コロナウィルス感染拡大のために政府が講じたロックダウンによる営業崩壊の危機から保険業者に掛け合ったところ、今回の事態は、リスクリストに入っていないと、一切の補償もしてくれないことが発覚して激怒。ジェゴさんは18年間毎年5000ユーロの加入金を払っている。リストに入っていないことを盾に、この有事を見て見ぬふりをするのはおかしい。さらに、毎日最低でも9000ユーロの売り上げがないと、15人の従業員と3人の見習いを支えきれない。つまり、政府の援助だけでは支えきれないことが予測されることも憂えて、フランス全土のオーナーたちに呼びかけ、12万人の署名を獲得しました。これをもって、デュカス氏とともに政府に掛け合い、政府から保険業者を説得してもらうという確約を得る使命を成功させています。マクロンは今回の声明でもそれを約束。本日、保険業者らは、中小企業への15億ユーロの投資企画を政府に対して公約したところです。

口ばかりの不平不満はよく耳にしますが、こうやってしっかりと行動に移す人がいて、社会の歪みを正していく方向に導いていけるのは、連帯の精神がもともとある国民性からでしょうか。もともと、労働者団体、事業者団体など、必ず横のつながりを堅固にしていってこそ、社会における自分の立ち位置を明確にし、相互協力に結びつけていけるのは、大陸だからでしょうか。また、今回のロックダウン景気で潤った食品会社(パスタなどの売り上げが大きい)が、売上の余剰を零細企業などの基金とするなど、助け合いもはっきりしています。

イギリスのチャリティー団体CAFが2018年に各World Giving Indexを調査したところ、日本は144カ国中、128位だったという結果にショックを受けました。特に、この一年他人を助けたかという数値が142位。明治時代まで「社会」という言葉が日本には存在せず、それに当てはまる言葉が「世間」だったこと、から、自分と他者との間の無常をテーマにした馴れ合いが、今も私たちの心に生きているのでしょうか。自己責任とは、なんであるかを、もう一度考え直さなくてはならないと感じています。今回の企業も含めての国の行動、一挙一投足は、世界からも注目され、今後の評価につながっていくでしょう。

2. 今週のトピックス【A】脆弱なコミュニティを援助する基金創設。パスタなどの売り上げを拠出。【B】レストラン予約サイトがレストラン事業者支援プラットホーム開設。【C】ワイン生産者、業者の保護対策、ANEVが政府に提言。【D】ロックダウン解除期日、カフェ・レストラン・ホテル関係の再開見えず。保険業者が支援を約束。


2. 今週のトピックス

【A】脆弱なコミュニティを援助する基金創設。パスタなどの売り上げを拠出。

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