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先天性欠損は問題か問題じゃないか問題

タイトルとイラストの温度差にちぐはぐ感は残るけれど、まあいいか。
たー坊先生、1歳6か月のときに市から歯科検診の受診案内が届いた。ずーっといかなきゃとは思っていたけど、如何せんとにかく母は毎日バタコさんで、日々生きるのにせいいっぱい。月一のシナジス接種に通い、3か月に1度眼科を受診し、2か月に1回便秘外来を訪れ、しかも摂食外来にも通っている。だからもう歯科はいいかなーなんて。でもついに市の福祉課から催促というか促しというかフォローの電話があり、「行かれてみてはいかがですか?」的なトーンのアドバイスをいただいた。ぜひ気軽に受けてみてください、と。歯科検診を気軽な気持ちで受けることができる人ってどんな人?私でさえ歯医者さんに気軽に行けたことはない。でもありがたいことに電話もいただき、アドバイスもいただいたので、思い立ったら吉日。先日気軽に歯科検診に行ってみた。

ダウン症児をかかえるママ友さんたちに相談しながら、おすすめの歯科で、かつ市の指定リストにあるクリニックを選んだ。どうやらいま我々が摂食外来でお世話になっている病院から先生が独立開業したらしい。となると、1歳半検診を受ける意味がますます見出しにくいが、何より本当に気軽な気持ちで行ってきた。

問題なんてないはず。だってたー坊さんは毎日歯ブラシしている(されている)し、仕上げにフッ素がついたティッシュまで使い歯をキュッキュッと拭き取ったりしているくらいだから。でもダウン症の子は歯並びが悪かったり、虫歯になりやすいと聞いたこともあったので、一応気を付けてここまで生きてきた。
クリニックにつくとめっちゃ声に張りがある元気な先生が登場。泣いていやがるたー坊先生を旦那さんと二人係で羽交い絞めにして、歯石をこれでもかというほど、それこそ本当に重箱のすみをつつくほどのレベルでとってくれた。見違えるほどに歯がピッカピカ。歯石ついてたんだなぁ、まだまだだなぁと反省。

「たー坊くん、がんばりました」
「歯石はまあまあそれなりについているので改めて気を付けてください」と。ただ、それで終わないのが毎度おなじみたー坊先生。

先生、
「たー坊くんの下の右側の歯は「癒合歯」の可能性が高いですね」と1発ストレートジャブを放たれた。
・・癒合歯!?結構さらりとおっしゃられましたけども。

癒合歯なんて初めて聞いたもので、先生曰く、2本別々に出てくるはずの歯がお隣さんとくっついて1本として出てきてしまう歯のことらしい。原因はいまだ解明されていないが、生まれる前の胎児の段階で歯の芽が作られる際にすでにくっついちゃっているんじゃないか、と。ということは、21番目の染色体が1本多いダウン症の子の特徴なんだろうなぁと思っていたら、先生私のトーンがだた下がりなのを察知したのか、「ダウン症の子に限らないですから!」とからっとフォローしてくれた。男前ってこういうことなんじゃないか、とほれぼれ思考停止の中で思いつつ、「癒合歯」ってどんな問題を引き起こすのか聞いてみた。先生曰く、特になし、とのこと。

本来出てくるべき歯が2本あるところ1本になってしまっている。
それだけ聞くともやっとするが、それによって将来含めて特に問題がないのなら別にいいか・・いやいいのか・・。歯医者に行って思わぬ事実にテンションだだ下がりの奥さんの気配を本能的に「このままだと、やばい」と察したのか、旦那さんがしゃぶしゃぶに行こう、と提案してくれてお昼からしゃぶしゃぶを堪能し、すっかりごきげんを取り戻した母なのでした。私の場合、どんな嫌なことも大抵はおいしい食事が解決してくれる・・はずだった。

で、癒合歯とかそんなこともはやすっかり忘却の彼方だったある日のこと。
定期通院している摂食外来に行ってきた。摂食外来は、唯一しこたま褒めてもらえるたー坊先生と我が夫婦。その日もルンルンで終わり、この日はなんと、私があこがれてやまない「ストロー使う練習してよし!」の承認が下りた日だった。意気揚々と道具を買いそろえつつ、その後の歯科チェックを待っていた。我々が通っているこの摂食外来は通称「多摩クリ」と呼ばれていて、ダウン症児ママパパ界隈ではかなり名が知れた名所も名所。きっと親同士の口コミで利用者が広がっているんじゃないかとすら思うくらい。
正式名称は、「日本歯科大学付属病院口腔リハビリテーション多摩クリニック」と何だか物々しい。東小金井駅前にあって電車でも通えるペーパードライバーには本当にありがたい場所。しかも仕事をしていてパッツパッツのセッカチ母の様子を察してくれたのか、先生はある時以来、土曜日で時間を確保してくれるようになった。その代わり予約は3か月先とかになる。たー坊先生はこれまでわりと摂食に関してはすんなり進んでいたので3か月ごととかで大丈夫でこれた。

で、例の歯科チェック。多摩クリ内では歯科治療もやっていて、そこの先生がまたすごい。NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」にぜひとも推薦したい先生のお一人。毎度いやがるたー坊先生をがっちり抑えずにちゃちゃっと歯石をとってくれる。手さばきも絶妙で私にはほぼブラックジャック先生(を少しメルヘンチックにした感じ)に見える。ちょうど前回の市の歯科検診の後だったこともあって、「おー!歯はきれいですねー!お母さん、お父さん、よく磨けてますねー!」とべた褒めされて木にも登れる心地だった。そしてここから話は思わぬ方向に。

ふと先生、たー坊先生の上下の歯を一つ一つ確認して、
「うーん、たぶん下の奥の歯は、『先天性歯科欠損』です」と。

「センテンセイシカケッソン」

・・・一瞬何を言われたのかわからなかった。ただ、先天的に何かが足りないということは察した。。先生、何がどう足りないのでしょう。。

先生曰く、最初からたー坊先生の下の歯は、歯の本数が少ないようです、と。乳歯があるべき本数より1本少なくはえてきているので、当然永久歯も1本足りなくなると。乳歯がなくて永久歯が出てくることは絶対にないそう。でその、「先天性歯科欠損」というのは生まれつき歯の本数が足りないという特徴らしい。足元でまた何かがガラガラと崩れていく感じ。普通の子と違う、普通の子よりも何かが足りない、何かができない。そもそも普通ってなんじゃらほいって話なんだけど。あー何か、こういう感じ前にもあったなーなんて思いをはせていたその横で、旦那さんは単純に聞いた単語の意味が全くもって一字もわからなかったらしく、「先生それってどういうことですか?」と全く具体性のない質問をしていた。プロ先生は我々(というか私の)動揺を察知したのか、「ちなみに、たー坊君の成長には全くもって何の影響もありません。ただ、通常より1本足りないので歯並び的にちょっと気になる、ということはあるかもしれませんが、今の時代矯正もできるので」とさらっとおっしゃった。

人は防御なしでジャブを打たれるとそれはもう相当な衝撃をくらうわけで、その10分前に褒められまくって天にものぼる気持ちだった母なだけに前回の癒合歯ジャブよりも相当にこたえたわけなのでした。
ダウン症コンチクショー事案は、たー坊先生が生まれてからここまで全くなかったわけではないが、障がいを持った子を育てるという気概はあるようなないような、あきらめとも受容とも言えるこの感じは、ここまでそれなりにジャブも受けてきただけあって、最近は強いショックを受けることも減ってきたかな、すごいな私。と思っていた矢先だったので、たいそう激凹みした母なのでした。
あえてとりつくろわずに本音を言わせてもらうと、一言に尽きる。

「あー、ダウン症って本当になんなんだ。」

染色体1本多いってだけでそんなに問題なんですかね?1本足りないならわかるのに1本多いがゆえに普通の人と何かが決定的に変わっていくって何なんだ!てか普通ってそれはそれで何なんだ、私。
イライラもマックスな私の横でのほほん父ちゃんは、またトンチンカンな質問をぶっこんでいて、「先生、先生に矯正もお願いできるんですか?」とニコニコで質問しているのでした。「今そこー!?」ってなりながらも、先生はニコニコ「うちではできなくて、指定のクリニックをご紹介することになりますね。でもダウン症の子は保険適用されますので♪」とこれまたニッコニコ笑顔で教えてくれました。たしかにそれはちょっとありがたい!!ナイス、父。

先生曰く、要するにダウン症の子は歯並びもわりと自由形らしく、たー坊先生の歯並びが良いと思っていたのは実は母(及び父)の偉大な愛だっただけで、先生に聞いたら、「そうですね。たー坊君の歯はとってものびのび自由型ではえているので、しっかり定期的に歯磨きと歯石とりを徹底して、元気な永久歯をそろえてから矯正をするといいですよ」という嬉しいような複雑なアドバイスをもらったのでした。

先天性歯科欠損からの矯正、しかもダウン症の子は保険適用内。問題なのか問題じゃないのかが分からない問題に直面し、肝心のたー坊先生はと顔を覗き込むといつもどーり変わらず満面の笑みなのでした。
癒合歯でも欠損でも結果は一緒。1本足りない。

日々ごきげん印
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