雨上がりの部屋に燻らせた炎
美雪には、学生時代からたいそう渋い趣味があった。
いわゆる「お香を焚く」というもので、はじめて興味を持ったのは雑貨屋さんの店頭で香りを嗅いだ時に気に入ったことと、立ち上る煙の不定期にゆらめく動きが気に入ったことだった。
早速お小遣いでお香の箱を買うと中には香立てが入っており、以来美雪は様々な香を買い集めた。
幸い家族にお香を嫌がる人は居なかったので、部屋でも居間でも自由に香を焚いては楽しんで過ごしたのだった。
そんな美雪も大人になり、一人暮らしをするようになった。
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