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本を通しての心の旅 

自粛生活もそろそろ終わりを迎えようとしている。

この期間に大流行したのがバトン。前回のnoteにも書いたが、自分らしくありたいという思いもあり、受け取ったブックカバー7日間チャレンジを、私の人生に何らかの影響があった7冊の本と、それにまつわる物語を気まぐれに書いた。タイトルを『本を通しての心の旅』としたこともあり、そのまま流してしまうのは、なんだかもったいない気がして…。

最初の一冊目に選んだ民俗学者・柳田國男先生の『先祖の話』だけでも書き残しておこうと思う。

この本の初版本は、昭和20年10月に出版されているのだが、昭和20年というと終戦の年。戦後直ぐにこの本は出版されている。序文に「まさかこれほどまでに社会の実情が改まってしまおうとは思わなかった」とあるが、まさに今、この時を生きている私たちの心の声と重なる様なきがする。

このコロナ騒動は、世界中の人々全てに影響を及ぼしている。命の危機を感じ、仕事に変化を及ぼし、暮らしも一変させた。そして、様々なカタチで家族関係にも意識を向けさせているのではないだろうか。

柳田國男先生といえば、「日本人とは何か」という問いかけを探究してきた日本民俗学の父と呼ばれる人物である。柳田先生の高弟子である折口信夫先生と共に『民俗学』の礎を作り上げた功績は、計り知れない。

ワタシが民俗学に興味を持ち始めたのはいつだったのだろう。ただ、仕事でも日本各地を巡ることが多くなり、それぞれの地で、文化、風習、伝統などを教えてくれる人物とも出会う様になり、自然と興味が深まった様なきがする。

その都度、ワタシは日本という国の素晴らしさに感動し、自分が何者であるのか、突き詰められる様な感覚になる訳だが…。特に縄文から脈々と続く文化に出合えた時には、自分の奥深くにある今、命あることに感動すら覚えるのだ。

なぜ、この本を最初に選んだのか。それは、多分ワタシが日本人であるからかもしれない。日本各地に残る先祖の祀り方など、日本人の死生観生観そのものを紹介している本ともいえるだろう。

本の中では「先祖になる」という言葉についても触れている。「自分の御先祖には、こんな人物がいる」と時折耳にすることがある。それは、子子孫孫まで名前と共に功績も言い伝えられということだ。よほどのことを成し遂げた結果であるが、逆の言い方をするならば、普通に生きていた限りでは、子孫に言い伝えられる様にはならない。ただ、その名も残さなかったかもしれないが、命を繋いでくれた祖先がいたから、自分の命が今ここにある、ということは紛れもない事実である。

ところでワタシ自身、日本各地を旅する様になり、その先の多くの地で柳田先生の足跡を見つける。

その都度「先生。ここにもいらしていたのですね」と語りかけている。日本を強く感じる場には、やはり強い引力の様なものがあるのだろう。

縁とは不思議なもので、成城にある柳田國男先生のご自宅に招かれたことがある。もちろん、柳田國男先生に招いていただいた訳ではない。(柳田先生は、私が生まれた年に帰天)義娘である、柳田富美子さんに招かれてのことだ。富美子さんとは偶然、いや必然だろうか。柳田國男先生の代表作ともいえる『遠野物語』の舞台、遠野で出会った。年齢的には半世紀ほどの隔たりがあるが、有り難いことに意気投合。ご自宅に招待された日、柳田國男先生が愛用されていた品々を沢山見せてもらい、興奮したことを、昨日のことの様に思い出す。

この本には、富美子さんの言葉も末尾に綴られている。

自分の命を思い、自国の文化、風習、歴史を学ぶことは、他の人の命を思い、他国の文化、風習、歴史を大切に思うことに繋がる。

ワタシは日本人だと強く思わせてくれた一冊である。

#柳田國男 #ブックカバーチャレンジ #天川彩

#コラム



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