天川 彩

北海道生まれ。作家、脚本家、コラム二スト、映像監督など多岐に活躍。自然の叡智と命の尊厳…

天川 彩

北海道生まれ。作家、脚本家、コラム二スト、映像監督など多岐に活躍。自然の叡智と命の尊厳をテーマにした企画事務所『オフィスTEN』代表。日本初となる平和の民ホピ族の専門店「Sun&Rain」オーナー。コロナを機にオーガニックチョコレート&珈琲豆の店やギャラリー運営なども行っている。

最近の記事

輪島の海女と漁師一家を応援することを決めたハナシ その5

東京の事務所で、能登の早瀬家から預かってきた輪島塗の器を広げてみました。 深い光りの美しさ。手に持った感触も柔らかく…あ〜、これが本物なのだなぁと改めて実感。輪島に行って預かって来た時は、とにかく無我夢中でお預かりしてきたので、実感がなかったのですが、やはり輪島塗は凄い漆器でした。 販売会を前に、私も輪島漆器について少し勉強してみました。 そもそも、輪島塗はなぜ丈夫で高価なのか。 それは、気が遠くなるほどの行程を丁寧に経るからです。 まずは木地と呼ばれる木から器を掘

    • 輪島の海女&漁師の一家を応援することを決めたハナシ その4

      被災地では、宿そのものが再開の目処もたたないところも多く、運営していたとしても、災害復興の工事関係者の方々が長期で使っているなど、なかなか泊まれそうな宿を探すことが困難でした。 早瀬家の海女さん、千春さんに相談すると、お友達が運営している宿に一部屋空きがあると連絡が。ただ自力でもリーズナブルに泊まれる宿をネットで探し、ちょうど見つかり予約を終えたところでした。なので、丁重に千春さんに見つかった旨お伝えしていたのですが…。能登半島は私の想像以上に広く、輪島から予約した宿は1時

      • 輪島の海女&漁師の一家を応援することを決めたハナシ その3

        早瀬家を訪問すると、千春さんが出て来てくださいました。 先祖代々、能登で海女を続ける家系に育った千春さん。震災後、海に入れない日々なのが一番辛いと話してくれました。 千春さんたち、輪島の海女さんたちが本来活躍しているのは、輪島市の沖合、48キロに位置する「舳倉(へぐら)島」という島です。 震災になるまでは、その島近郊を漁場として、およそ160人の海女が活躍していたのだとか。輪島の海女による伝統的素潜漁は重要無形民俗文化財。更に世界農業遺産にも指定されています。 海に入るの

        • 『輪島の海女&漁師一家を応援することを決めたハナシ』その2

          仕事と仕事の合間を縫って、ようやく時間を見つけることができたのは、5月20日(月)と21日(火)の2日間。 さて、どうやって能登まで行けば良いのかしら、と思い、色々調べてみました。 一番ポピュラーな行き方は、金沢まで新幹線で行き、そこからバスで輪島まで…という方法でした。ただ問題はそこから先。やはり車が無いと不便すぎる。 それなら、羽田から能登空港まで行って、空港でレンタカーを借りて、とも思ったのですが、調べるとレンタカー屋さんそのものが被災し閉鎖していました。 金沢

        輪島の海女と漁師一家を応援することを決めたハナシ その5

          『輪島の海女&漁師一家を応援することを決めたハナシ』その1

          2024年の元旦。我が家では、家族が集い毎年恒例となっている特別な団欒のひとときを送っていました。きっと日本中の多くの家庭が似たような時間の過ごした方をしていたのではないかと思います。でも、この日、能登半島では大地震が猛威をふるい、そこに住む人たち全ての運命を変えました。 何か、少しでもお手伝いできることはないだろうか…。 そう模索する中で、私は友人が立ち上げたプロジェクトを通して、輪島で400年続く海女漁をされている千春さん、そして代々輪島で漁師を引き継いでいるお兄さん

          『輪島の海女&漁師一家を応援することを決めたハナシ』その1

          コロナ時代・新たなる始まり 第15話「未来に向けて」

          あれは確か…2020年の2月のある日のこと。新型コロナは、まだ、それほど深刻な状態でもなく、ワタシは2年掛で準備していた大きな企画の為の出張から東京に戻ってきたばかりだった。この頃までは、普通にHopiショップを営業していたこともあり、その日は久しぶりにお店に出ていた。 Hopiショップは、前にも書いた通り2014年に奇跡の如く誕生した店である。店の大家さんは、いわゆる地元の名士。Hopiショップが入っている建物の他にも、周囲の土地や建物を所有されていて、ご自身のお仕事の他

          コロナ時代・新たなる始まり 第15話「未来に向けて」

          コロナ時代・新たなる始まり 第14話「進化していく」

          プロフェッショナルな人は格好良い。その仕事に対する姿勢も進め方も、スマートで無駄がない。 磯部さん姉弟も、それぞれにプロフェッショナル。内装をお洒落にプロデュースする佳世子さんと、腕と感性が光る木工職人のイソベさん。この二人に出会えたことは本当に大きい。 2021年6月。セレクトショップも順調に進み、アルバイトスタッフにある程度任せられるようになった頃、ワタシは、磯部姉弟にハミングバードの改装工事をお願いした。 保健所から指示があった増設及び変更箇所は6箇所。 キッチン

          コロナ時代・新たなる始まり 第14話「進化していく」

          コロナ時代・新たなる始まり 第13話「神様の言う通り」

          昔、演歌歌手の三波春夫さんが「お客様は神様です」という言葉をよく使われていた。ワタシはずっと、三波春夫さんが、お客様を持ち上げ気持ちよくさせる為、リップサービス的に使っていた言葉だと思っていた。が、そうではなかった。 「自分にとって歌うことは、あたかも神前で祈るようなもの。雑念を祓い、澄み切った心にならなければ完璧なものは届けられない。だから、お客様を神様と捉えて歌を唄い、常に歓ばせたいと思っている。お金を支払ってくださる方々(お客様)に期待外れのものを届けては、失礼にあた

          コロナ時代・新たなる始まり 第13話「神様の言う通り」

          コロナ時代・新たなる始まり 第12話「生まれ変わる」

          どんなに頑張っても心を込めても、思い描いた通りに進まなくなることもある。でも、それは神様が「違う道を選んだ方がよいよ」と教えてくださっているだけなのだろう。 『天's SPACE』は、2021年春から貸しギャラリーとして、本格スタートを切ろうとしていた。それまで全国各地の様々なギャラリーでカチーナ展を行ってきた経験を生かし、これがあったら便利だな、あれも必要だな、などと思いつく限り、まさに準備万端整えて、いざ!という直前にストップがかかった。その時は、正直なところ目の前が真

          コロナ時代・新たなる始まり 第12話「生まれ変わる」

          コロナ時代・新たなる始まり 第11話「青天の霹靂」

          「2021年12月22日から『風の時代』になるよ」と西洋占星術好きな娘たちがよくそんな話をしていた。 なんでも、それまで200年続いていた「地の時代」から、大きく価値観が変わる200年になるのだとか。 ワタシは詳しくはわからないが、天体に影響され世の中の流れが変化するというのは、なんとなくあるのだろうと理解もできる。 200年前「地の時代」の始まりには産業革命があり、以後、目に見える物質や安定、経済や資本主義といったものに価値が置かれる時代が続いていたという。しかし「風の時

          コロナ時代・新たなる始まり 第11話「青天の霹靂」

          コロナ時代・新たなる始まり 第10話「女神たち」

          絵と文字のアーティストでもある、あさい享子がオフィスTENにやって来たのは、今からちょうど20年前の2002年のことだった。 当時、大学卒業後しばらくタイの山岳民族の子どもたちが通う学校で絵を教えていた彼女は、ある時、ハタと自分はどこの何ものなのかと思ったのだそう。 山で貧しく暮らしている子どもたちをサポートしに行ったつもりが、彼らは自分たちが何処の部族であるとか、何者なのかということを知っている。真の豊かさを持つ子どもたちに自分は何をサポートしようとしていたのか。日本の

          コロナ時代・新たなる始まり 第10話「女神たち」

          コロナ時代・新たなる始まり 第9話「企画実行」

          『天’s SPACE』は神様から預かったスペースの様に感じていた。ここで企画を立てるのなら、素晴らしい未来に繋がる様な心持ち活動している作家さんのもを置いたり、アーティストの発表の場になれば良いな、と思っていた。 まず最初に浮かんだのが『祈りのアクセサリー展』というタイトルだった。この時点で何人かのアクセサリー作家の顔が浮かんだ。また、大分・別府に住む竹籠作家、野中たんぽぽさんの顔や、糸魚川の翡翠職人、山田修さんの顔も浮かんだ。浮かんだことは全てやろうと思った。 企画展の

          コロナ時代・新たなる始まり 第9話「企画実行」

          コロナ時代・新たなる始まり 第8話「天から預かる」

          コロナ禍の中、紆余曲折ある中で2020年お店がほぼ同時に2つ誕生。そして2022年。大きな流れの中で新たなカフェをクラウドファンディングでつくろとしている。ここまで主に千駄木に誕生したチョコレートと珈琲の店『ハミングバード』の流れについて主に書いてきたので、ここからはもう一つの店について書いていこうと思う。 その店は、誕生当初と今では名前も経営内容も変わっている。なぜ変わっているのかは、後に詳しく書くが、2020年中は、期間限定ギャラリースペースとして運営していた。 実は

          コロナ時代・新たなる始まり 第8話「天から預かる」

          コロナ時代・新たなる始まり 第7話「ハミングバードオープン」

          ハミングバードオープン前日の夕方。完成したお店のフォルムを見て、最初に想像していた通りの…いや、それ以上のお店が出来上がったことに、ただただ感動した。「ここでチョコレートと珈琲の店を開こう!」そう思ってから僅か2ヶ月。コロナ騒動が始まり半年後、世の中が停止しているような状態の中でのお店誕生は、まるで奇跡のようだとも思った。 ワタシはおろしたての制服を身にまとい、完成したばかりの店の扉を開いてみた。 「ハミングバードへようこそ!」そんな心持ちになった。 店内にはシンプルなが

          コロナ時代・新たなる始まり 第7話「ハミングバードオープン」

          コロナ時代・新たなる始まり 第6話「出来上がる喜び」

          ✴︎第1話〜6話までは2020年に書いたものを2022年に編集し直しています✴︎ 予定していたことが、急に変更になる。それは、何か計り知れないモノからのメッセージの様にも感じ…。 「扉のガラスのことですが、実は…」 佳世子さんから電話がかかってきたのは、オープンまであと10日と差し迫っていた頃だった。扉硝子には、ハミングバードのロゴマークが入る予定だった。 しかし、佳世子さんの元に業者さんから「文様が細か過ぎる為、このまま入れることは不可能。デザインを簡素化するか、シー

          コロナ時代・新たなる始まり 第6話「出来上がる喜び」

          コロナ時代・新たなる始まり 第5話「谷根千を颯爽と」

          ✴︎第1話〜6話までは2020年に書いたものを2022年に編集し直しています✴︎ ハミングバードの内装工事と、ギャラリーの内装工事はおよそ一ヶ月。同時進行で動いていた。 期間限定のギャラリー運営内容を考えるのは後にしたことで、少し気持ちにも余裕が。床や壁の内装工事だけは先に進めておいた。 『ハミングバード』は、いよいよオープンに向けて準備を始め、タウンワークでアルバイトの募集も開始し、チョコレート屋さんらしい可愛い制服も作ることにした。 およそ20名近くの応募者が面接

          コロナ時代・新たなる始まり 第5話「谷根千を颯爽と」