tempest


「今日はとても良い天気だ」


 教会の側、十字を切りながら通り過ぎる。性別も宗教も知れない私を、誰も救いはしない。嵐が近い。


(駅改札前には喫煙し舌打ちをする人あり。待ち構えていて、隙あらば唾を吐きかけようとしてくるので注意されたし。土の香り。)


 市井の人の言葉、国勢調査で知れたことか。ここは治安がわるい。魂削り出した台詞を数えきれぬほど書き留めては履き捨てられる。


 やまない雨、病まない夢は無い幻想。取り憑かれても良い。ぜんぶ扁桃体が見せる悪夢。言い聞かせる。風を切る。家路。

 あとすこし、


 讃美歌がどこからか遠く、椋鳥の声とともに降り注ぐ。途方もないかなしみ抱きこんで、みな眠りにつく。



(21/7)雑誌投稿用

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