見出し画像

簡体字と繁体字(正體字)の違いは文字だけじゃなく、考え方にある。 英語の中国語表記を例に考えてみよう。[中国語学習者必見!]

こんにちは。

中国語を勉強する前に、中国の標準語である普通话を簡体字で学ぶか、華語を繁体字で学ぶか、迷う事はありますか?また、同じ中国語なのに、なんで違う字体が存在し、日本の漢字とはまた微妙に違うの?と戸惑うこともありますよね。今日は、簡体字と繁体字の違いについて、軽く、そして浅く説明していこうと思います。専門用語をどしどし使うと、どうしても言語学の論文になりかねないので、分かりやすく説明するために、簡潔にまとめました。

まずは、使う国やRomanizationが違います。簡体字は中華人民共和国(香港と澳門特別行政区を含まない)でもある普通话の文字で、Romanizationはピンインを主につかいます。また、中華系の多い東南アジア(シンガポール、マレーシア)、そして中国系の移民した人たちもほとんど簡体字を使います。繁体字のユーザーは台湾、香港、マカオ、及び台湾系の移民した人がメインで、Romanizationも各地域によって違ってきます。しかし、その中でも頻繁に使われているのは注音です。

画像1

しかし、本質的な違いは使う国とRomanizationだけではありません。それは、考え方、価値観と文法です。

例えば、外国の名前を中国語で表記する時、繁体字を使う時は発音を再現するように表記しますが、簡体字は中国語で読みやすいように表記している傾向があります。いくつか例をあげてみましょう。

画像2

こちらはアメリカの元と現職大統領のバラク・オバマ氏とドナルド・トランプ氏。

オバマ氏の場合、簡体字だと贝拉克 奥巴马(ベイラク・アオバマ Bei4 La1 Ke4 Ao4 Ba1 Ma3, 声調の表記方法が分からないので数字で書きました)です。

画像3

しかし、繁体字だと、歐巴馬 (オウバマ, Ou1 Ba1 Ma3)になっています。アメリカ英語の発音は[Oubama]なので、繁体字の方が元の発音に近く、簡体字は読みやすさをもっと重視した感じがします。

画像4

余談ですが、日本語も発音を重視しつつ、若干読みやすさをとっていますね。例えば、日本でも「オバマ大統領」と定着していてとても読みやすいのですが、誰も「オウバーマ大統領」と書かないし、読まないと思います。日本語の感覚だと読みにくいし、しっくり来ません。

続いて、Twitterばかりやってるトランプ大統領。実際、トランプ大統領の中国語表記は二種類あり、どちらもよく使われていて、どっちを使っても通じます。例えるなら、「マクド」と「マック」みたいに、使う地域が違っても意味は伝わります。しかし、中国の簡体字だとニュースなどでは唐纳德 特朗普 (タンナーデー・テランプ, ピンインのE発音は日本語にないので最大限に日本語で再現しました、 Tang2 Na4 De2 Te4 Lang2 Pu3)と表記します。

画像5

しかし、繁体字だと唐納 川普(タンナー・ツウアンプー Tang2 Na4 Chuan1 Pu3)になることが多いです。

画像6

アメリカ英語の発音で、Donald Trumpはダーノウ(軽くd)チュアンプなので、繁体字の方がもっと現地の発音よりで、簡体字は読みやすさ重視ですね。日本語だと、「トランプ大統領」で定着していて、「トランプ」も非常に呂律が回り、読みやすいですね。誰も「チュアンプ大統領」なんて言いませんし、言われてもピンときません。

トランプ大統領とオバマ大統領の場合は、アオバマもオウバマもテランプもツウアンプーも似ているので、本当に「マックとマクド」の差かと思いますが、他の政治家の場合だと極端に違ってきます。

例えば、ロシアのプーチン大統領。プーチン大統領のフルネームはВлади́мир Влади́мирович Пу́тинで、英語表記はVladimir Vladimirovich Putinです。ロシア語の発音を日本語で最大限に再現すると、ウラデイーミr・ウラデイミロウイッチ・プーテインです。なぜここまで詳しいかって?それは、ロシア語の授業の初めにキリル文字を習う時、プーチン大統領で発音練習と筆記体を描く練習をしていたから。笑 日本語に例えると、平仮名を覚えたての外国人が「あべ しんぞう」で平仮名書き読みの練習をするようなもんです。w

画像7

簡体字だと、プーチン大統領は普京(プージン Pu3 Jing1)と上記します。名前が長すぎるので、割愛を...と言いたいところですが、せっかくですので、すべて載せます!弗拉基米尔 弗拉基米罗维奇 普京(フラジミER フラジミルオウイチ プージン Fu2 La1 Ji1 Mi2 Er3 Fu2 La1 Ji1 Mi1 luo2 Wei2 Qi2 Pu3 Jing1)。ぜひ中国語の早口言葉練習として活用してみてください。

画像8

しかし、繁体字だと普丁(プーデイン Pu3 Ding1),普廷 (プーテイン Pu3 Ting2)などいろんなバリエーションが出て来ます。ここでもわかるように、簡体字は読みさすさを重視したのか、本来の「プーテイン」を「プージン」と表記しており、繁体字は発音をできるだけ再現しようと「プーデイン」かロシア語の発音に近い「プーテイン」と表記しています。ちなみに、アメリカ英語でも発音はプーデインです。

画像9


本編では、簡体字と繁体字の違いを理論的に説明するのではなく、外国語の中国語表記の視点から違いを比べてみました。ちなみに、日本、韓国、北朝鮮、シンガポール、マレーシアなど漢字文化圏の国の人物は、漢字をそのまま使います。例えば、安倍首相はそのまま「安倍晋三」(アンベイジンサン An1 Bei4 Jin4 San1)です。

それでは。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?