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「藝泊」ワークショップ:各案講評、全体講評

2020年8月6日(木)に行われた、「藝泊〜泊まれるアートを考えよう〜」ワークショップの最終発表案への講評を発表します。Stand.fmでのアフタートークで語られた全体講評も合わせて公開します。

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Aチーム「未知に導く言葉と出会う」

【企画概要】
宿泊者が自由に言葉を残せるホテル。随所に設置されたマシーンに言葉を入力することでカッティングシートが出力される。それを館内に自由に貼り付けることができる。

・何かテーマが用意されていてそれにひもづく言葉を考えて残すという設計にすると、宿泊者側にもう少し内省の発見があって面白くなりそう。 
・言葉は語彙の意味単体だけでなく、「どういうシチュエーションで、誰が発するか」によっても意味が変わってくる。どんなシチュエーションの絞り込みをすると、個人の個性や空間全体としてのユニークな意味をもてるようになると思う。

Bチーム「一晩、変身するためのBGM」

【企画概要】
宿泊者が屋上の特別カウンターで「なりたい自分」を言うと謎の黒い封筒(レコードスリーブ)を渡される。部屋に戻って封筒を開けると中に、アナログレコードが。再生すると「なりたい自分」に合わせたBGMが再生され、香りのプリンティング技術を使って、レコード針の摩擦でレコードから「なりたい自分」になれる香りが立ち上り、部屋に広がり、特別な時間が流れる。

・渡される人物像に何かルール付けを行って、与えられた役を自分を演じるというフレームを作った方が効果的では。
・レコードに香りをつけられるかは要検証。
・屋上で受け渡すなど場所を移動させる場合は、屋上に呼び出すだけの理由づけが必要。

Cチーム「読まない詩のホテル」

【企画概要】
部屋に置かれている詩集に紐づくアイスクリームを味わうことができるサービス。何味なのか食べてみないとわからない、食べてみても何味なのかわからない。正解が気になって心に引っかかったまま。だから滞在後も滞在した時の思い出が残ったまま、正解を見つけたくてもう一度訪れたい、もし他の詩を選んでいたらどうだったんだろう?もう一度訪れてみたい。そんな気持ちにさせてくれるサービス。思い出に残る滞在とは?から、匂いや食感からのアプローチを考えた。

・食べ物は、アイスに限らない。チョコやクッキーなど、なんともいえない味という体験がおもしろそう。その味について気になって詩集を改めて読んだりする体験は面白い。答え合わせをしない謎かけ。
・「詩のホテル」は既に実施しているので、そのまま使うと二番煎じの印象になったり、逆に「詩のホテル」そのものを知らない人にとっては伝わらないかもしれない。別のネーミング、詩にしなくてもいかもしれない。

Dチーム「音のチケット・音だけで泊まるホテル」

【企画概要】
予約する際に、文字や部屋の写真などはなく「各部屋のコンセプトの音」のみで部屋を選択して予約する。
予約をするとARコードがスマートフォンに送られる。チェックインの時にそのARコードをかざすと予約時に聴いた音楽がフロントのスピーカーから流れて、それが部屋に入るファンファーレになる。「コンセプトの音」に即した内装の部屋/サービス体験で一晩過ごすことができる。

・予約をする段階から宿泊体験と捉えて、泊まる当日までの間の単なる待ち時間にも意味を与えているのがユニーク。
・「なんのコンセプトの音なのか」をネタバレをしない状態で、泊まりたいと思わせるのは難しそう。
・ネタバレしなくても面白さがユーザーに伝わるアイデアを考えて欲しい。(伝わる見せ方や一緒にこの企画をつくるスタッフ座組みなどで)

Eチーム「毎日がアニバーサリーなホテル」

【企画概要】
訪れるだけでその日特有の記念日を体験できる宿泊プラン。記念日の演出は、映像技術・食・VR/ARを駆使して五感を刺激して感じる。「何の日だったか」はチェックアウト時に渡される冊子・香りで明かされる。

・このアイディアにVR/ARを使った演出が本当に必要かどうかは検討の余地があると感じた。もっとシンプルな手法でもAXを体験させられそう。
・アニバーサリーは、一緒にいる人や自分ごと化できる出来事を祝うことに価値があるので、その当事者感をどうやって共有するかがポイント。
・宿泊中に宿泊者の意識をどこに向けさせるべきかを考えると良い。たとえば「この部屋何の日を表しているか当てる」など。お客さんが最後にその日の意味や価値を感じられるようにしたい。

全体講評

アイディアについて

学生の皆さんの発想の自由度がとても秀逸。普段だとどうしてもホテルのセオリーやビジネス的なフィジビリティありきで考えてしまうが、それらを良い意味で無視した、柔らかいアイディアが良いと思った。

実装に向けて、乗り越えるべき課題

今回出ていた企画はインスタレーション的なものが多かったように思う。事前にネタバレできない、詳細に説明すると野暮になるようなもの。
体験することで得られるものが曖昧な状態で、お客さんにどう魅力的だと思って購入してもらうか。「宿泊体験がアートなんです」のような安易な方法には逃げたくない。

「未知」は本体偶発性の強いものを、今回は故意に作り出そうとしている。その中では細かいところで感情の設計が大事になるのではないかと思っている。

最も個人的な体験こそが最もクリエイティブである

感情が大事になるゆえに、企画の時点でどれくらい実際のお客さんの顔が具体的に想像できているかが重要。のっぺらぼう相手ではなく、具体的な誰か一人に向けて考えられているかどうか。

ゼロから発想するのは難しい。他のホテルに泊まりに行ったり、インスタレーションを見に行ったり、ゲームをしたりすることでもいいので、インプットをたくさんして欲しい。

自分の中にある痛みや気づきをよく観察して、超利己的に考えたアイディアこそがエッジが効いていてクリエイティブになるのではないか。今回出した企画が「本当に自分が泊まりたいものになっているかどうか」はもう一度振り返ってみてほしい。

▼Stand.fmでのアフタートークはこちら(龍崎、魚住、渡辺)

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