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小説

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オリジナルです。いつかは短編集を作りたいと考えております。
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Two guys

Two guys

カツッカツッカツッーーー

 銀杏並木を連ねた静寂なる大道は、昨夜降り積もった雪一面に、初夜の月明かりが反射して、昼のような明るさを模していた。明後日は満月である。

 カツッカツッカツッーーー

 この通りの通行人はこの男女のつがいだけである。うち1人は下駄で足早に歩く大学助教授である。そしてその後を追うようにスノーブーツを履いた女学生が1人。名は玲香。2回生である。一見するとこの2人は各々が個

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道化師の苦悩

道化師の苦悩

ええ、わかりました。できるだけ、端的に言います。僕は何をしていても笑えません。        

 クスリともしないんです。ええと、いつからでしょうか。確か、2年前に仕事を始めてからでしょう。ええ、そうです。仕事を始めてしばらくしてからです。仕事が僕を故障させてしまったんです。

 高校を卒業した僕は母のために仕事に就きました。それまでは国から扶養を受けてました。家には僕と母と一人の妹だけです。で

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二度寝

 朝、憂鬱の朝。ジリジリと鳴る目覚まし時計。憂鬱の象徴。まだ寝ていたい、そう思っていると母が起こしに来る。今日の母は不機嫌そうだ。母が私から無理やり掛け布団を剥がす。だが掛け布団を剥がされたくらいで私は起きない。必死の抵抗の末、母は諦めて1階へと降りていった。一定の間隔で聞こえる階段を下る音は徐々に小さくなっていく。それと同時に私の意識もまた薄れていく。そして眠る。心地の良い音だ。そう思ったのも束

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婆とバス停

 できるだけ端的に身支度を済ませて、朝食に取り掛かろうと思い立ち、ふと、時計を見ると、ちょうど8時だった。もうこんな時間と呟き、昨日新調した淡い水色のスニーカーを履こうか、履き古した運動靴を履こうか迷った挙句、面倒くさくなって履き古した運動靴に、乱暴に足を突っ込んで、急いでバス停まで走った。
 バス停に着くと、いつも顔を合わせる男の人たちが居た。間に合ったあと思ってベンチに腰を下ろすと、ピー!って

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