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バキバキンニクでリボーンBONE

会社の後輩であったMr.Mに捧ぐ。

彼は筋肉バカだった。
私が今まで会ってきたどんな人間よりも筋肉バカだった。

新入社員の給料なんぞ、20万前後だ。
そこからMOROMOROを引けば、手取りは10万円代後半だろう。
その給料の大部分を、彼は自分の筋肉のために使っていた。
ジム代やプロテインなど、筋肉にはお金がかかるらしい。

彼は毎日ジムに通っていた。
健康のためのジムではない。筋肉を拡大するためのトレーニングだ。
会社のデスクにあったカレンダーには、
肩・腕・足など、今日取り組むべき筋トレの部位が書き込まれていた。
厳密に言えばこれは仕事とは関係ないスケジュールであるが、
その辺は黙認レベルである。

彼には彼女がいなかった。
彼の恋愛観はとても独特だ。
ジムに行く時間を犠牲にしてデートしたくなる女性だったら、
付き合っても良いと豪語していた。
随分上から目線なのである。
お前の筋肉は女性から引かれるだけだ。
自分の筋肉に恋愛していれば良いのだ。

残念ながら彼は会社を辞めてしまったが、
地元がこちらと言うこともありその後も交友が続いた。

数ヶ月前に飲んだ時、彼はフィジークに出たいと言い出した。
ボディビルとの違いがさっぱりわからないが、
筋肉がバランス良くついているかを審査する競技らしい。
ボディビルのように怪物みたいな大きさの筋肉はいらないのか。

自分自身の筋肉を愛しているならまだしも、
その筋肉を見せびらかす大会に出るのだと言う。
とうとう狂ってしまったなと私は思った。

そんな彼だが、今朝SNSのプロフィール写真が更新されていた。
悟空のような肉体
油で固められた頭髪
黒く焼けた全身にヌルテカのオイッルを塗っているのだろう。
それなりにフィジークしていたのだ。
これは変化ではない、進化である。

彼が会社を離れてからは、毎日彼のことを見ていたわけではない。
そんな中彼は相当な努力をしていたのだろう。
そのアウトプットの結果がこのツルテカとは、やるじゃないか。

私は彼のことを尊敬している。
筋肉キャラというのはとてもキャッチーでわかりやすい。
しかし普段人は洋服を着ていることが多いので、
筋肉質の人間でも一見はわからないはずだ。

そのため私は彼に口すっぱく言っていた。
筋肉キャラをうたうのであれば、
遠くから見ても一瞬でわかるくらいにならないと
それはアイコンとは言えないと。

彼はまっすぐに筋肉を愛する人間だ。
今日のアイコンを見る限り、彼はバカ筋肉キャラを樹立させた。

全てを犠牲にしてまで愛せる体の部位はあるだろうか?
私にはない。

彼にはこういった愚直さや気持ち悪さを忘れないので欲しいのだ。
愚直に頑張れる人間は人を幸せにできる。
筋肉への愚直さと同レベルの感情を他のものにも持てたらの話だが。

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