【社会人のための“教育ってそうなってるのか!”講座】通信教育のノウハウから考える授業のオンライン化
20代を大手通信教育業界で過ごしました。
ほぼ100%紙媒体でのコミュニケーションでしたが、
当時のことを思い出してみると、
そのコミュニケーションの「キモ」みたいなものが、
いまの「子どもたちが学校に行けない」という状況において、
もしかしたら役に立つのかもしれない、と思うようになりました。
大事なのは、学校の授業をオンラインで代替えすることではなく、
おかれた環境も含めて学びをデザインすること、なんだと考えています。
そこで、通信教育って、どんな工夫がされていたんだろう?を
ふりかえってみることにしました。
●「大人の願い」なんて、子どもは興味がないという前提に立つ。
当たり前のことではあるんですが。
子どもたちは、決して勉強が好き子ばかりではない、
という大前提が常にあったように思います。
要するに、大人の願いという「大人の都合」を
考慮して「動いてくれる」なんて、ないってことです。
でも、それぞれの理由で勉強をしたいとは思っています。
だから、どう興味を持てるようにするか、
モチベーションをどう維持するかが、課題になります。
年齢に応じたキャラクターが登場して気持ちを代弁してくれたり、
(かわいいイラストがあればいいわけじゃないですし、
年齢が高くなったらキャラクターがいない方がいいことも。)
教材の冒頭にトピック的な読み物があったり、というのも
興味を喚起し、モチベーションを維持するための
仕掛けだったのだと思います。
また、いちばん大事なのは、
「何ができるようになるのか」が明確に示されているかということ。
そのためには、「大人の願い」ではなく「子どもの願い」に
寄り添って考えているか、というところがキモになります。
次のテストでは点数をあげたい、とか、部活をがんばりたい、とか、
いろいろあるはず。
なんのために学ぶのか、それぞれのゴールが描けず、
自分のなりたい姿に役立つもの、手段であると思えなければ、
学ぼうとは思えないでしょう。
●子どもたちがいまいる「環境」を想像できているか?
勉強しようと思っているけど、うまくできない何かがある。
だとしたら、それを解決するためには、
彼らがどんな環境にいてどんな気持ちなのか、を
とことん知る必要があります。
通信教育は必然的に家庭学習になりますから、
学校から帰ってくるのは何時頃なのか、
宿題以外で使える時間はどれくらいあるのか、
どんな部屋で勉強しているのか・・・なども、
かなり意識していたように思います。
1ヶ月分の教材のボリュームや、
そこから逆算して1日どれくらいやることにするのか、
学習者自身にも学習計画を描けるつくりにしていく工夫も
丁寧にされていたように思います。
1日分の内容も、むずかしすぎず、簡単すぎず、
モチベーションが続く出題と解説の工夫もあったように思います。
また、単元ごとにどんな見方・考え方をつかむべきか、
それにそった問いが考え抜かれていた点も工夫ポイントだったと思います。
また、通信教育においては、
月1回の教材がどんなパッケージで届くかというのも
けっこう大事だったんじゃないかと思っています。
届いた時に、ワクワクしたり、がんばろうって思えたり、
そういう機会にもなりますから。
また、近年は「専用タブレット」も提供されていますが、
「市販のタブレットでも使える」のではなく、
「専用」にしているところがポイントだと思っています。
起動する動作が学習モードへの切り替えになるっていうところが、
学習の環境づくりとしてとても大事なはずです。
↓ ↓
●これから必要なのは時間のデザインと思考のデザイン?
こう考えると、
「役に立つ動画コンテンツをそろえてUPしました!」が
子どもたちの状況に沿っていないことは明白かと思います。
大人の願いが起点になっている、一方通行だからです。
動画コンテンツもオンラインツールも、パーツにすぎない。
授業を何かで代替えする発想で考えるのではなく、
環境にあわせ、使えるツールをどう使って、どんな思考を起こすのか。
そもそもどんな資質・能力を身につけることをめざすのか、から
デザインしなおす必要があるのだと思います。
ツールは、オンラインも、動画配信も、
実は教科書やノートなどの紙媒体も、
学習のデザインには欠かせないツールだと思っています。
紙、なくしちゃダメです。
いくつかの好事例でも見られるように、
同期型のオンラインは、授業の配信よりも、
朝礼や個別面談など、メンタル面のフォローの方がおそらく有効だし、
置かれた環境に即して考えても、必要になりそう。
中高生であれば子どもたちひとりひとりの学習計画の策定支援にも
有効かもしれません。
一方で、学校や行政が公開する動画コンテンツ、良いものだと見ています。
(いくつか拝見しましたが、さすが、先生!です。ほんとに!)
であれば、これを活用しない手はない。
単元ごとにめざす資質・能力を整理した上で、
・パフォーマンス課題の提示
・知識習得のための動画コンテンツの視聴
・課題に取り組む活動
*協働やオンラインディスカッションなども!
・プレゼンテーションと相互評価
・ふりかえり
・・・など、という流れも考えられます。
反転授業ですね・・・というと、全く違うもののように見えますが、
実は、先生たちがいつもやっている授業のデザインと、
やるべきことは同じなんじゃないでしょうか?
課題は「授業時数」という枠組みなのかもしれませんね・・・
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松倉由紀
キャリア教育コーディネーター・教育研修プランナー。1975年長野県上田市生まれ。静岡大学人文学部卒業。地元での就職に失敗(4か月めで退職届!)ののち、大手通信教育会社、人材派遣会社、コンサルティングファームを経て現職。キャリア教育の領域で教育プログラム開発と「しくみ作り」をする「企画屋」であり「風呂敷たたみ屋」。2016年4月個人事業主から法人成り(株)ax-factory(https://ax-factory.wixsite.com/corporate)を設立。2020年京都造形芸術大学通信教育部(グラフィックデザイン)を卒業。デザインで学びをおもしろくします。
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