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【社会人のための“教育ってそうなってるのか!”講座】 大学入試改革の「アレコレ」に惑わされないモノの見方

来年度から実施される予定だった大学入学共通テスト、
「英語」が従来通りのカタチに・・・という報道があり、
賛否両論、いろんな議論が飛び交っています。

議論をするのはいいことだと思っているのですが、
こと入試は、経験してきた大人が大多数を占めるため、
個人的な経験からの意見になりがちです。
ときにはずいぶん極端な意見も見え隠れするのですが、
専門家でない私たち大人だって、

 「この混乱に惑わされないモノの見方を持っておくこと」

も、いま必要なことなんじゃないかと思っています。
そこで、
ごくごく単純で当たり前のことなのですが、

「目的」と「手段」をわけて考えることから始めてみたらどう?

っていうのか、今回の話です。


くだんの「英語の試験」について、
「目的」と「手段」をわけてみると、
次のように整理ができます。

●目的●
 従来の「読む力」「聞く力」に加え、
 「話す力」「書く力」の養成が必要。
 ゆえに大学入試も4技能を問うものへ。


・・・
この方向性に対しての賛否もあると思いますが、
 (「大学入試から英語をなくしてしまえ」とか
  「そもそもの大学入試改革から中止せよ」という
  極論を主張されてる方もいらっしゃいますが・・・)
今回起きている問題は、ココではないはずです。
これだけ国際化が進む中で、4技能は必須という判断は
方向性としては悪くなかったはずです。

では、こうした目的に対して、手段は適切だったのか?
ここは、いくつか段階にわけて考える必要がありそうです。

●手段●
(1)国がイチから4技能を測る試験を開発するのは困難だと判断
(2)すでに運用されている4技能を測る民間試験(7種)を活用することに
(3)国際的な言語運用能力基準(CEFR)に当てはめて段階評価する
(4)民間試験の結果を共通テストに活用するのに「共通 ID」を使う


・・・
問題が起きているのは、手段に関することではないでしょうか。
  (今回は(4)の直前に中止が決まったのですが)
「民間=悪」のような論調の記事も多いのですが、
民間のノウハウの活用は決して悪いことではないはずです。
でも、CEFRでの段階評価に無理はなかったのか、
大臣の発言にもあったような地域格差などの
課題を解決できる策は検討されていたのか、
運用開始までの準備期間に充分な時間があったのか・・・
そもそも国独自の開発は本当に困難だったのか、も
見直してみる必要はあるのかもしれません。
 (きっといろいろ起きていたのだとは思うけれど・・・)

肝心の受験生を振り回してしまったと考えると、
お粗末すぎる対応だったことは否めませんが、
手段が適切ではないから目的からすべて否定したら、
それって思考停止じゃん、とも思うのです。

未来のために、いいものにしたいなぁと、思うし、
目的を見失わないようにしたいなぁと、思います。


ちなみに、同じことは、
付随して話題になり始めている「記述式問題」にも
言えると思います。
「目的」は、知識・技能「だけ」でなく、
思考力・判断力・表現力を身につけること。
そのための「手段」として、
大学入試でも記述で解答する出題を増やし、
思考力・判断力・表現力を問えるようにする。

記述式問題は採点が困難なので、
思考力・判断力・表現力を問う必要はない、
これまでのセンター試験のままでいい、
なんてことはないのでは、と思います。
「目的」ではなく「手段」を議論する必要がある。
もしかして思考力・判断力・表現力を記述以外の方法で、
なんていうミラクルアイデアも、あるのかも・・・?

松倉由紀
キャリア教育コーディネーター・教育研修プランナー。1975年長野県上田市生まれ。静岡大学人文学部社会学科卒業。地元での就職に失敗(4か月めで退職届!)ののち、大手通信教育会社、人材派遣会社、コンサルティングファームを経て現職。キャリア教育の領域で教育プログラム開発と「しくみ作り」をする「企画屋」であり「風呂敷たたみ屋」。2016年4月個人事業主から法人成り(株)ax-factory(https://ax-factory.wixsite.com/corporate)を設立。
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