見出し画像

20代のころのアイドルに会いに行く


20年少し前、19、20歳くらいのころ洋楽をたくさん聴くようになった中で、
特にサイケデリックミュージックに興味を持った。(多分世の中も60s70sブームだった)
その頃はまだ結構あったレコードショップに通ったり、ちょうどインターネットが普及してAmazonなどオンラインショッピングが身近になりつつあり、自分自身も大人になって(と思っていた)行動範囲が広がったこともあって、欲しいと思っているCDやレコードが比較的簡単に見つかる時代になったところだった。

私がアマゾンで初めて代引きを使って購入したのが、Merrell Fankhauser& H.M.S BountyのThings というアルバムのCDだった。
その時はそこまでアーティストについて気にしていなかったのだが、後になって知ったいくつかのバンドにも同じ名前を発見して、少し調べてみると、なんと日本のレーベルからCDをリリースしていたりもして、なんか知る人ぞ知るすごい人なんだ、と思った。
例えばレコード屋で”M”の所にまだ持っていないアルバムがあったら買って聴いていく中、これはダメだなというものがなくて、コレクションが増えるにつれ彼の音楽はより身近なものになっていった。
ある日、本人のウェブサイトがあることを発見した。英語はそこまでよくわからなかったけど、そこに載っていたインタビュー(マウイのジャングルに住んでいた話や臨死体験の話など)はすごく興味深く、馬鹿馬鹿しい発想だけど、当時の私はこの人とすごく気が合いそうだと思った…。
あともうひとつちょっとアレなのだが、日本で一番のファンは自分なのではないかとも思っていた。

00年代後半頃、自分が聞いてきたアーティストがどんどん亡くなっていった。
自分が好きな曲がどうしても古いので、当たり前なのだが、今見れる人たちは今見とかないともう見れないかもしれない、と考え始めた時期だった。
同時に、SNSが普及し始めて、色々な情報のチェックしたさに、比較的早い段階でFacebookに登録した。
このあたりから私は謎の行動力を発揮して、色んな人にコンタクトをとるようになっていた。(当時、とりあえず、皆最高!っていうことを直接伝えたかった)
Merrellにもこのころメールを送っていて、確か今もライブしているのかとか、アメリカに旅行行くことがあったら是非見たいとかいうような内容だったと思う。
その時は本人から返事が来て、今もライブをしていることなどが書かれていた。すごくうれしかった。Facebookでも友達になった。
そこからたまーにメールのやり取りをするようになり、紆余曲折あり私がアメリカに引っ越すことになった事も伝えた。
彼がカリフォルニアに住んでいることは知っていたので、いつか会いに行きたいというようなことを漠然と考えていた。

アメリカの生活にもちょっと慣れてきたなという頃に、パンデミックがやってきた。仕事もずっと休みになり、でも他にも何もできないという日が続いた。
相変わらずMerrellにはたまにメッセージを送っていて、私は会いに行くの諦めてないから!的な事を伝えていたのだが、先日ついにご本人に直接会いに行った。
私の住んでいるところと彼の家は車で4時間ほどの距離にあり、近くもないのだが、アメリカのハイウェイの運転にも慣れてきたところだったので、是非会いに行きたいと伝えたところ、快諾してくださった。

実際会うまでは実はすごい嫌な奴だったっらどうしよう、とか不安と期待が入り混じっていたものの、会うと同時に思った通りの人だということが分かった。
私が彼の音楽に出会って20年、メールのやり取りを初めて大体10年の時が経ち、Merrellは78歳になっていた。
彼は自宅のスタジオを案内してくれ、そこは彼のYouTubeでよく見る風景であり、感動した。そこにあった今までのディスコグラフィーと共に、色んなことを何時間も話した。
今はコロナもあり、ライブ活動はしていないものの、たくさんのドラマや映画のBGMとして彼の音楽が使われているということで、今も彼の音楽は愛されていることがよくうかがえた。
スタジオには、結構前(まだ私が日本に住んでいたころ)に本人に送ったプレゼントを飾っていてくれて、それもすごく嬉しかった。
そこから、また違った形の交流が始まり、一瞬ではあるが、彼の地元のラジオにもインタビュー出演させてもらい、つい先週にオンエアされたようだった。自分のアイドルに逆インタビューされたのである!

一番初めに書いたように、洋楽、特にアメリカの60s70sの音楽を中心に探究してきた20年であるが、まさか自分自身がアメリカに引っ越すこと、自分が聴いてきた音楽を作った人たちと交流を持つことなんて当時誰が予想できたのか。
良くてアメリカに旅行に来て、ライブを見に行くくらいだろう。そう思うと本当に自分はラッキーだ。
そしてこれがもしもっと昔(例えば音楽のリアルタイム)だったら、外国に住んでいる自分にはこうはいかなかっただろう。ネットワーク技術の進化にも感謝しきれない。
そして一番の感謝は、一ファンのコンタクトに丁寧に返事をくれたアーティストの皆さんへ。

※そしてこの度Merrell氏のBOXセットがめでたくリリースされる。氏は現在このプロモーションで大忙しの日々を送っている。

https://www.amazon.com/Goin-Round-Mind-Fankhauser-Anthology/dp/B0B9GXLF4B



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?