女性社会起業家が見るニューノーマル社会(第3回:SOC travel Social Enterprise 第1部)
2020年9月21日 LEAP DAY プレイベントにて
沖縄で12月に開催される、社会課題を解決する起業家や学生たちの交流イベント「LEAP DAY」。このプレイベントの第3弾にAWSENも登場しました。登壇者はベトナムで観光業によって地域を変えたShu Tanさん。コロナで沖縄の観光業も大打撃を受けています。Shuさんの方はどうでしょう?コロナ禍の今の様子をお伺いしました。
第1部では、Shuの起業についての想い、コロナ禍での状況などをお話ししていただいた。
1. モン族として出生〜ツアーガイドへ
ベトナムの人口(約9,000万人)の約14%は54の少数民族で構成されている。私の育ったSapa(北ベトナム)は、人口の約50%が私の所属する少数民族 モン族であり、その他にも主に4民族が暮らしている土地である。
小さいときは家族と農業を行いながら生活し、11-12歳の頃に観光客向けに物を売り始めた。貧しく学校に行けなかったため、友人や外国人から英語を学びながら、道で物を売る生活を続け、5年の月日が経った。
Sapaは世界各国(日本も)から旅行客が訪れる美しい場所だったので、私はよりよい生活を求めツアーガイドとしての活動を始めることとし、観光客に町のことや文化を紹介して回った。この仕事を通し、多くの地元の女性や子どもが、“民族特有の言語“と”読み書きの能力不足“により、ビジネスチャンスを逃していることに気づいた。「たくさんの観光客がこの美しい町に人に出会うために訪れているのに、学力もお金もない地元の人々は多くの機会を逃している。自分と同じ問題をみんなが抱えている。どうにか解決したい!」と考えるようになった。そしてそれが私の夢となった。
しかし、みんな自分の家族を養うのに一生懸命で、他の人の面倒を見たがらず、私の発言は受け入れられなかった。私は諦めず、ツアーガイドとして、観光客を案内し、自分の夢を語り続けた。
「私は他の人に頼らず、地元の人が自分でビジネスをできるようにしたい!これだけ美しい町なのに、教育が足りてない。みんなの生活を変え、もっと未来を見てほしいと思う」
地元の人には受け入れられなかったが、観光客は肯定的で、「頑張れ!」と応援してくれた。
2. ツアーガイド〜会社設立
2002年、高校卒業したてのオーストラリアから来たボランティア4人に出会った。彼らは読み書きを知らない私に、アルファベットから教えてくれた。その後も交流は続き、私は彼らに自分の夢を伝え続けた。町の人は誰も信じてなかった私の夢を、彼らは信じ、応援してくれた。2007年にSapa O‘Cha(ありがとうという意味)というウェブサイトを作成。2009年、Lao Chai Villageにて少数民族のホームスティを開始。2010年、英語教室をオープン。ツアーガイドとして10年の経験を経て、次のステップにチャレンジした。お金も場所もなかったが、外国人がボランティアで助けてくれた。Sapaでは、女の子は学校に通えず、読み書きもできない。男の子はできる。男女でクラスを分け、約50人のこどもたちに英語を教えた。2011年、SOC cooperative設立。2013年には、SOC travel companyを、2017年には、SOC travel Social Enterpriseを設立した。今は、地元の人が収入をきちんと得られるしくみを作りたいと思い、企業を設立した。
3. 現在の会社、SOC travel Social Enterprise
SOC travel Social Enterpriseは、トラベルエージェンシーに加え、ホテル、レストラン、ホームスティのサービスを展開している。事業所は2つあり、例えば、2-5日でのトレッキングツアーなどを企画。ツアーでは、地元の人がガイドを行なっている。
この会社の利益で教育支援をしている。授業料が払えず高校に行き続けることができない生徒には、高校生活3年間を支援したり、高校卒業生や中退者には、英語とホスピタリティ(テーブルサービス等)技術を教える1年間の職業訓練を提供している。英語はボランティアが、実際のホテルで研修を行なっている。大学へ進学したい生徒には、奨学金のサポートやキャリア教育を行なっている。
スタッフは、地元の人を採用している。さまざまな民族の出身なので、それぞれ異なる言語・文化を持っている。そのため、チームビルディングの研修などを行い、結束を強化している。
2010年から今まで、500人以上の少数民族の若者、20以上のホームステイ先を支援してきた。今後は、田舎の貧困を支えるために、もっと活動してきたい。さらに地元の人に自分たちの文化・環境の未来についてどう責任をもつかということも伝えていきたい。
新型コロナウイルスの影響により、観光業は壊滅的。現在は農業を行なっている。苦しい状況ではあるが、こんな時だからこそもっと学びたいと思う。観光客がまた戻ってきたときに、すぐ対応できるように準備しておきたいと思う。困難な状況で、地元の人は仕事を失い、苦しい。でも、学校は続けている。将来のために今は準備期間。
いつかコロナ終わったら、みなさんのもとを訪れたいと思う。
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