見出し画像

拝啓 シネマサロン様


大阪在住20代女性。
化粧品会社勤務である。

趣味は映画鑑賞。

私の母親世代はミニシアター全盛期で、
多くの人が少し背伸びをしてミニシアターに通い、難解な映画を見てみて、おしゃれさや雰囲気に酔いしれてみたり、
「意味わかんなかったよねー。でもなんか良かったよねー」
と言い合ったり、全ての人が今よりもずっと映画と映画館が最も身近にあった時代を過ごしていた。

しかしながら、
なかなか今のご時世、サブスクやDVDレンタル、そしてなにより映画以外の娯楽がそこら中に転がってる現代社会に生きる私にはいまだに映画仲間なんて存在はいない。

職場も華やかな人が多い中で、美容やファッションや海外旅行のような趣味を持つ人たちが楽しそうに情報交換をするのを横目に、
「ああ、私もこんなふうに昨日自分が見た映画の感想を語り合える人が近くにいてくれればいいのになあ」
と思いながら彼女たちのおしゃべりを眺めている。

新しく買った服やコスメや行ったリゾートの話をするように、映画のことを語り合える友達や仲間がいればいいのに。

なんて思ってみるけど、激務と見たい映画の公開に忙殺されてなかなか交流会には足が伸ばせない。

(大体の交流会がシニア向けで平日の昼に企画されているというのも一因になってるけどね!)

映画は、もちろんみてる瞬間もすごくすごく楽しいけど、
それを見終わった後、自分が感じたことや思ったことをぐるぐると自分の頭の中や心の中で思考を走らせることもすごく楽しい。

パンフレットや予告映像やチラシを見返しながら、
「あー、これって後から考えるとこういうことだったのかなあ」
とか、
「やっぱりここの主人公の決断は納得できないなあ」
とか、とか。

はたまた、自分が詳しくない事象を題材に扱った映画の元になった事件や社会問題についての本を帰りの書店で買って読んでみたり、ネットで検索してみたりする。

そして必ずみた日に自分のノートに万年筆で感想や感じたことを書き綴っておく。

その一つ一つの過程が1人でももちろんすごく楽しいけれど、ときどきどうしても1人では整理できなかったりどんなに考えてもしっくりこないことがある。

もともと、香港や中華圏が大好きで
ウォンカーウァイの4k一挙公開を皮切りに映画の世界に夢中になり、シネマート心斎橋やシネリーブル梅田に通うようになって、
毎月毎月映画を15本くらいみるようになった。

そんななかで、去年の7月に「プアン/友だちと呼ばせて」というタイの映画が公開された。


この頃マックスでウォンカーウァイの世界観にはまりこんでいた上に、このタイの監督の前作の「バッドジーニアス」も大好きだった私にとってはまさに超期待の一本だったのだ。

ただ、これを見終わった後なんとも言えない腑に落ちなさが残った。

ノートに感想を書き散らしてみてもモヤモヤは収まらなかった。

ネットで検索しても、概ね評価は高いし、
映画に低い評価をつけてる人のレビューの中に私が共感できる言葉を見つけることはできなかった。

そんな時、私がプアンプアンと検索していたのをYouTubeが嗅ぎつけたのか、
おすすめに出てきたのがこちらの動画だった。

ハイボール片手に軽い気持ちで見始めたのに、
引き摺り込まれて途中からメモ帳片手に見てしまった。

私が夢中になったこちらの動画は、
「シネマサロン映画業界 ヒットの裏側」というチャンネルから出ているものである。

このチャンネルは、Tさんという若い女性と、竹内さんと酒匂さんという2人の映画プロデューサーが3人でいろんな映画についての感想や考察や背景を、話し合っているチャンネルで、毎週公開されている作品から一定数の作品を選定して取り上げているチャンネルだ。

プアンの解説動画の中で、竹内さんが言った質問に私も考え込んでしまった。

「じゃあさ、Tさんにまず問いたいんだけど、
ウードというのはどういう人物ですか?」

プアンという映画の中の2人の主役のうちのウード。

Tさんに投げかけられた竹内さんの質問に私も何も答えることができなかった。

言葉が浮かばない。

私と同じように考え込むTさんに対して、

「やっぱりこの映画の問題はウードという人物について全く描かれてないということです」

バラバラバラーっと頭の中をビー玉が転がっていくような衝撃が走った。

いろんな人のレビューを見てても、
ウードという人物に対する批評や、意見はあったけど、
ウードという人物について何も描いていないということを指摘している人はいなかった。

「元カノめぐりを意味がなかったと思わせてる映画のつくりが問題だと思う」

という言葉にも、

そうそうそう思ったのよーーー!

「曝け出す人物の人格がわかんないと感動にはつながんないと思うのよね」

モヤモヤがカチカチとパズルのようにハマっていく気持ちよさがあった。

1人で2、3日ぐるぐる考えた果てに、
私のぐるぐるを言葉にしていく姿を見て快感があった。

この言葉が当てはまってるかはわからないけれど、
映画を俯瞰してみている竹内さんと対照的に、
酒匂さんは「ウードふざけんなよ!順番が逆だろー!」と完全に映画の中のボスの視点に立って話しているのもすごく共感できて、

Tさんの最初の感想から2人の意見を聞いて色々考えていく過程もすごく私と似ていて面白かった。

「映画ってこうやって3人でみたら3人とも違う感想になる。正しいなんて言葉はない。
示し合わせたように同じ感想ならつまらないじゃないの」

という竹内さんの言葉が本当に嬉しかった。

映画ってなんとなくすごく詳しい人の声が大きくて、高尚なもののイメージがあるからなかなか大きな声で自分の感想って自信を持って言いづらくて。

でも、こんなにも映画を立体的に見て感想や考察をできる人がどんな感想になったっていいんだと言ってくれたことにすごくホッとした。

私って映画好きって言っていいんだ、と思った。

動画を見終わった時、
私もあの3人の中で感想をわいわい言ってたような気持ちになって映画を見た後1人で黙々と考えたり書き込んだりしてたところから、
みんなで話し合ってワイワイと話す喜びみたいなものを味わえていっそう映画が楽しくなった。

このプアンをきっかけに、
毎週選ばれるシネマサロン課題作品や、
面白そうな映画を見つけてきては自分も見にいくようになった。

前よりもたくさん映画館に通うようになったし、
前は絶対手を出さなかった中華圏やアジア以外の映画にも手を伸ばすようになって自分の世界が広がった。

いつも、映画を見た後すぐにシネマサロンを見たくなるけど手を止めて自分の感想を先に必ずノートに書くようにした。

竹内さんや酒匂さんみたいに映画を見れるようになりたい。

彼らの感想や考察を見たらそれがそのまま自分がなんとなく納得して受付けてしまうからそれでは自分で思考ができなくてもったいないから、必ずノートに自分の思ったこととか疑問点とか感想を書いてから、シネマサロンを見るようにしている。

そうすれば、
2人の言葉を聞いて自分のノートと見比べてなんだか自分もそこに入り込んだような気分で、自分なりの考察を守りながらも楽しむことができるからだ。

劇場でもらってきたチラシなんかも貼り付けて感想を書き殴る。別に大したことなんて書けないけどね!

チャンネルを見ながらいつも自分が書いたノートを片手に、
「そうだったよね。私もそう思った!」とか
「いや今回は違うと思うぞ!」と突っ込んでみたり1人でiPadに向けてお話しするという奇行を繰り返している。

いつもなら難解な映画や、難しそうなものを避けてきたけど、ちょっとチャレンジしてみてわからなかったらわからないなりに、色々考えてみる。

映画を消費するような見方をしていたところから、
映画を理解して自分が何を受け取ればいいのかと見る見方をシネマサロンは私に見せて、教えてくれた。

まるで大学の授業を受けているような気持ちになるのだ。

もはや忙殺されてるサラリーマンの私は、
特に何も学んだり努力もしてない仕事人間だけど、
それでも人間の知識欲というか、そういうものは確実にあると感じていて。

映画を選んで、見て、考えて、シネマサロンを見て。

ああ、こんなふうな見方をするのか。
こんなふうに考えるのか。
こんなことがあったのか。

と考えると、あの頃学生時代に大好きな授業をワクワクしながらノートを取って聞いていたような感覚を思い出すのだ。

竹内さんの、どんな映画であっても切り捨てないで拾い上げてそこに散りばめられたものを言葉にして、リスペクトの感情を持って分析してくれる映画愛と、たくさんの映画を見てきたからこそ映画を作る人にもみる人にもおおらかで自由でいさせてくれる優しさが好き。

酒匂さんの、少し抜けてて優しくて時々2回見に行ってみたり、映画に対してどこまでもまっすぐで、
私のような映画を見始めて間もない人の感覚にも寄り添ってくれるあったかさが好き。

Tさんのまっすぐで映画を楽しんでる冒頭の感想がいつも楽しみ。

竹内さんの言葉のこだわりの糸に引っかかって
「ん?それってどういうこと?」とツッコミツッコミされて、「えっと…」と言葉に詰まって困ってる酒匂さんを眺めてると、竹内さんと一緒に笑ってしまうし、あの3人の空間に流れているなんとも言えないちょっと緩くて暖かい空気が本当に好きです。

私が見始めた頃はチャンネル登録者数もまだまだそんなに多くなくて、
こじんまりと見ていたシネマサロンも、
ついに最近登録者数1.2万人を超えて、
きっとこれからも伸び続けていくのだろうと思う。

これからも大大大ファンでいるし、見続けるけれどもっと有名になって私の言葉が届かなくなる前に「大好き」って言葉と「このチャンネルをやっててくれてありがとう」という言葉だけは送っておきたい。

仕事で悩んだ時とか行き詰まった時とか、
一歩踏み出すことに迷いが出た時、

竹内さんの「運と縁とタイミング!」という言葉に背中を押されて、
憧れの部署への打診を背伸びして真正面から受け止めて前に進めたことがあった。

上司に激烈に詰められてどうにも心がめちゃくちゃな日に映画館で映画を見てそれでも気持ちが晴れなくて、家に帰ってきてシネマサロンを見ていつもと変わらない3人の会話に自分の中の日常の感覚を取り戻して明日に迎える日があった。

寂しい一人暮らしでやることがない土日を目の前にしょんぼりしてしまうコロナ禍の金曜日に、
今週公開の映画を楽しみに語る様子を見て自分もワクワクして映画のチケットをネットで予約して楽しく過ごせた土日があった。

東京のどこかから発信されてるYouTubeチャンネルは、

大阪の寂しい限界OLの本当に大切な楽しみで、
幸せの元になってるから、絶対にやめないでください!
絶対にずっとやっててくださいと伝えたい。

ノートと万年筆とお財布をカバンに詰め込んで今日も今日とて映画館に通う。

映画が好き。
映画は面白い。
映画は不思議。
映画は自由。

教えてくれて、気がつかせてくれてありがとうございました。

あなたたちのチャンネルのおかげで、
どうしようもなく嫌な時もあるサラリーマン生活がなんだかんだで結構楽しいです。

これからも益々のご活躍と、動画の更新をよろしくお願いします!!

おしまい。

追記

ちなみに私が1番楽しく拝見したのは、
七月と安生の動画でした。

酒匂さんがただのお父さんで気のいいおっちゃんになって本気で映画に入り込んでる姿が楽しくて優しくて、ほっこりする動画でございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?