パワハラ戦闘記1 パワハラキングとの出会い。

「おまえなんか大嫌いだったんだよ。早く死ねよ」

と、この言葉は私が故郷の田舎にいる両親に大阪のど真ん中から電話で吐き散らかした言葉である。

今から一年前、私は人として壊れて、ただ時がたつことをひたすら待っていた。こんなはずではなかった、という思いだけが私を支配していた。

連日両親に暴言を吐き、古い友人とは片っ端から縁を切り、休日はゴミ部屋と変わり果てたマンションのベッドの上で寝て過ごした。

何もかもが狂った毎日で、私はその瞬間その瞬間をやり過ごすことに必死で、自分がおかしくなっていることにすら気がつけなくなってしまっていた。

社会人半年にして私がここまでぶっ壊れた理由は、「パワハラ」だった。

2020年4月。

私は某大手BtoCメーカーに総合職採用の新入社員として入社した。

日本中のすべての人が使ってる商品があって、ゴールデンタイムにガンガンテレビCMが入る、有名大手企業に入社できた私ははち切れんばかりの自信とプライドと「なにかやってやりたい」という期待に胸を燃やし、世はコロナで大変でもそんなことはどうでもよかった。

研修もなんとかうまいことやりきって、ずっとすみたかった関西の営業所への配属も決まり、私の人生は順風満帆、前途洋々のはずだった。

配属されて初出社の日、上長に挨拶して、私は営業第1課への配属になったと教えてもらった。ドラマの中に出てくるような典型的なオフィスに自分用のデスク。

第1課の島に行くと、そこには神経質そうで整った容姿の若い社員と、色の白くて太った中年の男がドデンと真ん中の机に座っていた。

「こんにちは、今日からこちらに配属になりました蒼子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」

ようこそ、とかこれからよろしくって言葉を期待したけど、返ってきたのは「あ。そうなん」と中年の男は私に目も向けなかった。

「どうせ後でみんなの前で挨拶するんやろ??今そういうのええわ」

え??

耳を疑う。

その日は、みんなの前で挨拶して、自分の席に座って渡された資料を手持ち無沙汰に読み続けた。

誰も私に話しかけることはなかった。

その日、同期LINEでは自分がどんな風に歓迎されたのかの自慢大会が開かれていた。

クラッカーに出迎えられたとか、先輩が小規模な飲み会を開いてくれたとか、ランチ会で歓迎してもらったとか。

私は自分の境遇がどうやら普通ではないということを理解し始めていた。

私には歓迎の会どころか、上司からのようこそ、も優しい言葉すらなかったのだ。

それどころか、誰にもかまわれず、ただ一人きりで息を殺して1日を終えたのだから。

えもいわれぬ、ぼんやりとした不安だけが胸に満ちていた。

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