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【SCRAMBLE 1 】ワンゲル部 先輩・後輩
SCRAMBLE MESSENGER【CONVICT】
— クルー (@awe_bafflegab) October 22, 2023
人々はソーシャルメディアでつながり、リアルとネットの社会を行き来してコメントやパフォーマンスを繰り広げ、メッセージを交わす。
そんな日常が物のはずみで非日常へ変わりゆく時、我々は確かな選択ができるだろうか?
プロローグ
その日はバイトが終わり、コンビニに寄ってアパートへ戻った。スマホのタイムラインで、誰かが今日はモルの日だとつぶやいていた。モルってなんだったっけ。全然、思い出せない。ん?
エピソード
なんかアボカドロってチェスの駒よりチェスの駒みたいだな
— クルー (@awe_bafflegab) October 23, 2023
ちょっといいか pic.twitter.com/Mn1jTUUCnf
— エニグマ (@ken_reservoir) October 23, 2023
大丈夫です
— クルー (@awe_bafflegab) October 23, 2023
先輩どこか行かれたんですか?
ワンゲル部じゃなくて仕事の下見でな。うちの代理店が新しく作ったプランで、エクストリームガチャ弾丸ツアーっていうんだ。
— エニグマ (@ken_reservoir) October 23, 2023
なんすかエクストリームガチャって?
— クルー (@awe_bafflegab) October 23, 2023
エクストリームガチャっていうのは、山頂とかの危ない場所でパフォーマンスするエクストリームスポーツでな、GPSの位置情報を入力してガチャアプリを引くんだ。今回は車中泊・船中泊・機中泊を駆使したゼロ泊移動で効率的にガチャを引ける弾丸ツアーになってる。
— エニグマ (@ken_reservoir) October 23, 2023
移動の時点でエクストリームじゃないですか もしかして先輩も弾丸ツアーしてるんですか
— クルー (@awe_bafflegab) October 23, 2023
実は予定が変わったんだ。
— エニグマ (@ken_reservoir) October 23, 2023
俺が行ったのは古代の地下壕。昭和に要塞化されてたって噂もある。どこまで入れるか確認してたら、予想以上に広い。いや広すぎるくらいだ。どこまでも続いていて、明かりが見えた先に進んだらここに着いた。
なあお前はどう思う? pic.twitter.com/QX20uhoKxS
地球空洞説。最初は地球の中心が空っぽで巨大な空間があるって話だったんですけど、本当は異世界に通じてるって主張が出て来て。
— クルー (@awe_bafflegab) October 23, 2023
惑星の深部にある超極小点は、膨張する宇宙の始点の欠片で、膨張前の空間への出入口になっているっていうんです。
なるほど。そんな説があるのか。
— エニグマ (@ken_reservoir) October 23, 2023
今、物陰に潜んでるんだが信じられない。爬虫類と人間を合わせたような生き物が集落を作ってるんだ。人型だけじゃなくて、ダチョウに手が生えたような大きい個体もいる。凄く物音に敏感で身動きがとれない。
まさかディノサウロイド。恐竜が絶滅せず進化したら人型になるっていう説です。
— クルー (@awe_bafflegab) October 23, 2023
建造物や集落があるってことは知的生命体のはず。脳が進化したなら記憶を定着させる深い睡眠が不可欠です。なんとか寝静まるまで様子を伺いましょう。
まずい。慌ててたんでサイレントモードになってなかった。職場からの電話で気づかれちまった。なんとか振り切って廃墟へ逃げ込んだ。多分、さっき見せた場所のどこかだと思う。どうすればいい?
— エニグマ (@ken_reservoir) October 23, 2023
音に敏感っていうことは耳が良すぎるんです。何か高音を出せれば相手はひるむはずです。スマホに爆音の曲とかありませんか?
— クルー (@awe_bafflegab) October 23, 2023
そうだな。ノイズミュージックなんてどうだ? いきなり爆音で流せば、かなり耳ざわりなはずだ。
— エニグマ (@ken_reservoir) October 23, 2023
でもそれだけで大丈夫か?
そうですね。コップみたいなものがあればスピーカー代わりになるって聞いたことがあります。急いで探してください。
— クルー (@awe_bafflegab) October 23, 2023
見つけたぞ。工場の食堂みたいな場所にあった。俺達が使うみたいなプラスチックや陶器にガラスがあるな。どれが良さそうだ?
— エニグマ (@ken_reservoir) October 23, 2023
ガラスですね。尖った不協和音になります。試す余裕はありますか?
— クルー (@awe_bafflegab) October 23, 2023
大丈夫だ。変な鳴き声だか話し声みたいなものが聞こえてきたが、全力で逃げて時間を稼いだぞ。この仕掛けならなんとか行けそうだ。
— エニグマ (@ken_reservoir) October 23, 2023
わかりました。直接、音を聞かせるのは危険過ぎます。タイマーを設定して逃げましょう。残念ですがスマホは諦めてください。連絡待ってます。
— クルー (@awe_bafflegab) October 23, 2023
マジか。くそう。生きて帰んなきゃ何も始まらないか。わかった。ワンゲル部の力で逃げ切ってみせる。連絡待ってろ。
— エニグマ (@ken_reservoir) October 23, 2023
エピローグ
数時間後、朝方になって先輩から連絡があった。手近なネットカフェからだった。
「こんな時間まで待たせて悪かったな。今回は本当に助かった。お前のおかげで命拾いしたよ。持つべきものはいい後輩。信頼できる仲間だ。」
いつもマイペースな先輩が、いつになく真剣に感謝を伝えてくれた。なんだか照れくさいけど、素直にうれしい。「先輩、無事で良かったです。ほっとしましたよ。」
「心配かけてすまない。一応、会社にもメールで一報を入れた。やっぱりスマホがないと不便だな。夜が明けたら忙しくなりそうなんで、とりあえず仮眠したい。あらためて礼はするから楽しみにしててくれ。」
そうかそう言えば、「会社から電話があったんでしたね。きっと大騒ぎになってますよ。お礼の件は確かに聞きました。ひとまず休んでください。お疲れ様でした。」
数日後。先輩から連絡があり行きつけのバーに誘われた。高級なお酒をたくさん飲ませてもらっていい気分だったが、先輩はいろいろ大変だったらしい。
スマホの通話が中断され、すぐに電波が途切れたせいで、野生動物に襲われたとかテロリストに連れ去られた、あるいは神隠しにあったと噂が飛び交った。大規模な警備隊が組織され、近隣の山岳地帯の徹底捜索がなされた。運の悪いことにテロ疑惑から捜査が極秘になされ、会社の人々が保護対象となり社内から連れ出され外部との連絡が遮断されていた。先輩は浦島太郎状態で途方に暮れていたそうだ。
変な話だが、先輩の方から捜索願いを出しに行ったら真相発覚となった。
「不思議なのはあれから地下壕に行っても何も見つからない。中はすぐに行き止まりで、長いこと土砂崩れで塞がれたままだっていうんだ。」
「どういうことですか? 警察が調べれば、基地局の電波を辿って位置情報はわかるはずですよね。」
「わからん。スマホのデータはアドレス帳くらいしか復元できなくて、お前とのメッセージも残ってない。」
「あれ? 待ってください。こっちのメッセージも残ってませんよ。いつの間に?」
「そうか。だがもっとおかしいのは時間経過なんだ。俺が地下壕に潜ってお前に助けてもらったのは、あの晩だけだったろ。なのに俺は二ヶ月近く行方不明だったらしい。」
「そんな。一体、どうなってるんですか?」
「俺達は何か触れてはいけないものに触れてしまったのかもしれない。」
壁l・ω・) 壁l)≡サッ!!