マガジンのカバー画像

日付のない即興の詩

32
趣味で書いた詩のまとめ。
運営しているクリエイター

2021年8月の記事一覧

詩:『たったひとつの』

詩:『たったひとつの』

人生は、たったひとつのものに巡り合うこと。

たったひとつのものは、何とも比べられない。

たったひとつのものと、何度も出会い、何度も別れる。

繰り返し刻まれた景色が、最後振り返った時にみえる。

scene0827

scene0827

「優しさって、欲しい人から貰えないよね」

傷ついて泣いている私の横に座り、

彼女は私の顔を覗き込んで微笑む。

スローモーションのように柔らかく落ちる髪。

月明かりに照らされ、魔法のように光る艶。

滲んでぼやけて、景色が屈折する。

隣にいるのに。

美しくて、遠い。

当事者でないかのように振舞う彼女に私は、

「きみの話をしているんだよ」

と、口にする気にもなれなかった。