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原典にあたる、ということ (10/365)

「原典にあたる」とはどういう意味でしょうか?

私は、何か新しいことについて学ぶとき、そもそも、その考え方、理論を発案したのは誰なのか、その人の著作には何が書いてあるのかということから学び始めよう、ということととらえており、いつもとても大切に心がけています。

経験に沿って2つの事例を挙げてみます。

「ムーアの法則」一般には、半導体の微細化が進展していく法則のことを指していると思われています。技術系のメディアや経済誌などでもよく見かける言葉なのではないでしょうか。多くの人が物理法則がごとく捉えていますが、これはインテルの創始者のひとりであるゴードン・ムーアが1965年に発表した論説を原典としています。

https://newsroom.intel.com/wp-content/uploads/sites/11/2018/05/moores-law-electronics.pdf

たった4ページの短い論説ですし、簡単な算数がわかれば読み下せる内容です。しかし、驚くべきことに「ムーアの法則」を口に出す人が多いわりに、この論説を読んだことがある人はほとんどいません。

だいぶ以前、前職の仲間と読み込んだことがあるのですが、この論説は物理法則などではなく、現在まで綿々と続くインテルの事業計画に他なりません。半導体の微細化とともに機能の集積化が進む、その時に考えられることは何か、将来の技術課題は何か、について簡潔に、シンプルに書かれています。

「ムーアの法則」がその後の半導体産業にもたらした影響を考えると、これは「偉大なる産業ロードマップ」と捉えるのが適切でしょう。

2つめは、「破壊的イノベーション(disruptive innovation)」です。この言葉は、クレイトン・クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」という著作を原典とします。

この書籍はビジネス書のベストセラーになったこともあるので、手に取ったり本棚に並べている人は相当数いると思われます。しかしその本質を理解しているのはごくわずかです。

一番大きな間違いは、「破壊的イノベーション」の理解で、ある日突然現れて一夜にして既存ビジネスを破壊するというような意味で使っている人が本当に多いです。クリステンセンの書籍を読み込まずに、メディアの解説記事などで表面的に理解したつもりになっているのでしょう。

疑問を感じた方はこの機会にぜひ読み込んでみてください。

原典にあたることの大切さは、大学院時代に指導教官から学んだように思います。重要な新分野を切り開く著作や論文というのはその後広く参照され、拡大していきます。しかしその中には枝葉末節も含まれるため、本質を理解するには、根幹の「原典にあたる」のはとても自然なことです。

大学生の頃は、いや社会人にになってからも、

「これでわかった〇〇」
とか
「30分でマスターできる〇〇」

みたいなお手軽な本に惹かれますが、一見遠回りと思えても、しっかり「原典にあたり」時間をかけて取り組んだ方が理解が深まるし早いと思います。

新しいことを学ぶとき、まず「原典にあたる」ことを心がけていきたいものです。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

追伸

気づいたのですが、「原典にあたる」「原点回帰」はとても近い考え方ですね。以下の記事も読んでいただけると嬉しいです。

https://note.com/awash1965/n/n8659fca9b9b0


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