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原点回帰・NECのC&C (8/365)

日本企業復活の鍵は原点回帰にあると考えています。以下の記事もぜひご覧ください。

戦後の高度経済成長期からバブルがはじけるまで、日本の企業には勢いがありました。その後の衰退は、欧米に追い付け追い越せのキャッチアップモデルから自らが新しい産業を生み出すべきフロントランナーになりきることができなかったという戦略的側面があります。

しかし、それだけではなく、バブル崩壊の恐怖から、それ以降30年以上も保守的な発想から脱却できないというのが大きな要因ではないでしょうか?ありていに言えば「負け犬根性」です。カイゼンやDXもよいですが、まず原点回帰して挑戦の志を取り戻すことがとても重要だと思います。

さて、NECと聞いてまず思い出すのはコーポレートスローガンである「C&C」です。若い人はなじみがないかもしれませんね。

C&Cは、Computers & Communications を意味し、Communications は通信と人々の交流のダブルミーニングになっています。このスローガンは1977年のインテルコムで発表されました。GAFAの時代にも通用する極めて本質的なスローガンとして注目に値します。

このスローガンは国内各社にも影響を与えました。

東芝のE&E Energy and Electronics
富士フイルムのI&I Imaging & Information

などです。さらに、「コアコンピタンス理論」で有名なプラハラード、ハメルによるハーバードビジネスレビュー誌上の論文に、企業の戦略的意図、strategic intention の代表例としてC&Cが取り上げられました。

https://hbr.org/2005/07/strategic-intent

戦略的意図は、企業に明確な行動指針を与え、細分化した目標設定なしに各事業部門が自律的かつ柔軟に目標を達成して行くという効果があります。なにより社員に挑戦する志を与えるものだと筆者は考えています。

C&Cはまさにそういうものでした。事実、「コンピュータ」「通信」そしてそれらを支える背骨としての「半導体」によって1980年代のNECはエクセレントカンパニーとして大躍進したのです。

あるとき、インテルコムでC&Cを世界に向けて発信した小林宏治氏のインタビューを観る機会がありました。「世界に向けて素晴らしい発信ができましたね」という質問に、「いやそうじゃない。あれは私の背後にいる全社員に向けた発信なんだ」というようなやりとりがありました。素晴らしい経営者だったと思います。

バブルが崩壊し、日米半導体協定をきっかけに半導体も競争力を失い、2000年前後のアメリカのインターネットバブル崩壊も相まって、NECも競合と同様輝きを失っていきました。

NEC株価の推移(Google Financeより引用)

この間C&Cは表舞台から徐々に姿を消し、コーポレートスローガンも移り変わっていきます。コーポレートスローガンと業績の間に明確な相関があるかどうか証明することはできませんし、異論もあるかとは思いますが、私は象徴的な意味を感じてしまいます。

1977 C&C
2001 Empowered by Innovation
2015 Orchestrating a brighter world
2022 Truly Open, Truly Trusted

C&Cという具体的かつ本質的なコーポレートスローガンが、次第に解像度を下げ、社員を鼓舞する力を失っていると感じるのは私だけでしょうか?

NECに限らず、日本の企業は温故知新、まず原点回帰して起業の設立趣意からしっかり考えなおすべきなのではないでしょうか?

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。

追伸

私は、高校生のときようやく手に入れたNECのPC-6001でコンピュータの世界に入りました。その後縁あってNECに入社し最初に配属されたのが、中央研究所のC&C研究所でした。その時の誇らしい気持ちが忘れられません。原点回帰を起点とし新しい繁栄に向けて挑戦して欲しいと願います。

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