百日百首(57〜63)

57日目:4月20日(火)
 僕はこれまでの人生の中でずっと、二番手や三番手に甘んじつづけてきた。優秀な兄の背中をずっと見て、比べられながら育った僕は、スマブラではルイージを好んで使い、斜に構えたものいいを覚え、いわば「二番手」であることにある種のアイデンティティを見出してさえいた。短歌においては、笹井宏之賞で個人賞をいただいた——裏を返すと、大賞や次席よりも下位に甘んじたときに、自分の短歌はここぞというときに200%を出力するんではなく、平均して7、80%ぐらいをこつこつと出し続けるタイプなのかもしれないし、自分もその作風が向いているのかもしれないと思った、思ってしまった。僕の歌集『ビギナーズラック』は、現代歌人集会賞、現代歌人協会賞、日本歌人クラブ新人賞という、第一歌集を対象とする賞のいずれのタイトルも獲ることができなかった。(ちなみに現代歌人協会賞は歌人協会未加入の新人の歌集(≒第一歌集に限らない)を対象にし、現代歌人集会賞は、中部以西の西日本の歌人の第一歌集のみを対象としている。)(続)

バランス。それは美しくて、愚かしい僕の前にもバランスが降り注ぐ

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