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言霊(ことだま)の国から来た男 #13

第13話 決戦

「うおぉー、最高じゃあ」

 バヌスは興奮して叫んだ。

 彼らは、グリフォンの背の上にいた。藤田の要請ようせいに応えて、二十頭ほどのグリフォンが飛来し、彼らを背に乗せて飛び立った。

 彼らは今、雲霞うんかのごとき大軍を眼下に見て、魔王軍の奥深くへと入り込んでいくところだった。

 彼らが乗る五頭のグリフォンを中心に、残りのグリフォンたちが編隊を組んで飛ぶ。それを率いるのは、黒い大きな鳥……

 藤田は、その鳥が三本の足を持っていることに、気がついていた。

「我々を導くのが、ヤタガラスとは……光栄です」

 いつ死ぬかも分からぬ状況であったが、戦場の極限の緊張感のなか、彼はたぎる血潮を感じていた。

 巨人族は極超音速ミサイルで倒され、敵本陣にも大爆発が起きて、すきが出来た。魔王の足下へ、突入するのは今しかなかった。

「さあ、ようやく俺たちの出番だぜ」

 マーカスが意気揚々と剣をかかげる。

 グロリアは腕組みをして自信に満ちた笑みを浮かべながら、金髪を風にたなびかせていた。

 バヌスは抜け目なく仲間たちに防御力を高める祈りをささげ、カールゲンは攻撃魔法を唱える準備をした。

 グリフォンたちが敵の大海を飛び越え、魔王のすぐそばに降り立つ。

「来たか……ソーリ」

 魔王がとどろく声を響かせた。

 藤田は、勇ましく叫び続けた。

「うぉお~トマホーク! トマホーク! レールガン! レールガン! トマホーク!」

 その都度、魔王のもとでは大爆発が起きるも、傷を負いながらも魔王は倒れなかった。

「トマホーク! トマホーク! 極超音速ミサイル!」

 やがて、言霊は具現化されず、彼の言葉だけがむなしく戦場に響くようになった。

 藤田は息を切らしながら、ついに恐れていた事態が訪れたことを悟った。残弾切れ……

 魔王はよろめきながらも大きな一歩を彼らの方へ踏み出すと、勝ち誇ったように勇者たちを見下ろした。

「なかなかいい攻撃だったが、魔力がつきたか」

「魔力が、つきた? 言い得て、妙だ……」

 藤田は肩で息をしながら、そうつぶやいた。両膝に両手をつき、前屈まえかがみになる。残り少ない髪の毛も、汗にまみれ、乱れていた。

「まだまだ!」

 藤田の言霊によるものよりは小規模なものの、火球が炸裂さくれつして魔王は再びよろめいた。

 魔法使いカールゲンの呪文であった。

「よくやってくれた、ソーリ! そして、これからが本番だ」

 勇者マーカスも星のかけらを集めて作られたという剣を魔王に切りつける。彼らをここへ運んだグリフォンたちも、魔王の攻撃に加わっていた。

 魔王との戦闘は、本格化した。

(つづき)

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