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とある中将閣下とブクロの平日

先日25歳になりました。

記念すべき生後四半世紀の節目ということで、たいへん感慨深く、とくになにを考えているわけではありませんがそれっぽく虚空を見つめ目を細めています。

ここまでそれなりに真面目に生きてきたつもりですが、やはり25年生きていれば多少のエスケープやアバンチュールは避けられないもの。

私有地とは知らず山奥でタケノコを掘って警察署に連行されたり、忘れ物を取りに行くと言いつつそのまま高校から脱走して2ちゃんねるに顔晒したり、二丁目で千円札を口に咥えてセクシービキニの隙間に挟んだり、ハプニングバーに1人で潜入したり、恐い人に「一緒にマカオに行かないか?」と口説かれたり、ほかにも今思い出すと「よく何事もなかったな」ということが幾つも思い浮かびます。

まあ生きていればいろいろあります。幼い私が想像していた地点とはだいぶ外れたところにきてしまいましたが、それと同時に普通ではないような素敵な巡り合わせもたくさんありました。

今回はそのうちの1つ、鳥肌実先生と過ごしたある日の昼下がりについてお話ししようと思います。

先生についての詳しい説明はここでは割愛します。知らない人は調べてみよう!

(本人らしきアカウントがあり、Twitterに詳しく書くのは憚られるのでnoteに書くことにしました。べつに怪しい関係だったとかではないのですが。)


謁見

大学生のころ私は鳥肌実の熱狂的なファンだった。いわゆる全盛期と呼ばれる頃のお姿を見て一目惚れ。それからネタにもどっぷりハマり、ある日、意を決して千葉で行われたライブに赴くことに。

当然付き合ってくれる友達などおらず、1人で見知らぬ土地に降り立った私は、地図を頼りになんとか小さなライブ会場に辿り着いた。

ライブハウスの入り口には4.50代くらいの強面の男性たちがタバコを吸いながらたむろしており、明らかに小娘が分け入って入れるような雰囲気ではなかったが、ここまできたら行くしかないと思い、半分目を瞑って入場。背後から「マジかよ」とおじさんたちの驚く声。恥ずかしい。

空いている席を探し足早に着席してから10分ほどで開演。ステージに現れたはじめての生、鳥肌実。

私は泣いていた。

お姿は変わっても、演説の鋭さはニコニコ動画で聞いた音源と遜色なく、むしろそれより洗練された絶妙な間、声。まさに熟練。涙を流しながら本当に来てよかったなと思った。

そしてライブは無事終演。サイン会開始。

サイン色紙を買って順番に列に並び、ついにご本人の前へ。

ドギマギしながら二言三言言葉を交わし、色紙にサインしてもらう。それから先生はなにやら文字が書かれた小さなチラシを私の前にスッと差し出してきた。よく見てみると…あっ……

LINEのIDじゃん!!!!

よっしゃ〜〜!!!!!!!

私はガルちゃんで「鳥肌実はライブの客で気に入った女性に連絡先を渡す」という情報を事前にキャッチしており、もしかしたらもしかしてという期待を胸に、バチバチにおしゃれしていたのだ。

っていうか普通にみんなの前で渡すのか。周りのお客さんも「お〜〜」みたいな反応。

しっかり登録して帰宅。するとさっそく先生から連絡が


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なにこれ超怖いんですけど。好きならまだわかるけど絶対好きってなに…?もしや私に催眠をかけようとしているのか。

その後、なんやかんやで食事の約束をした。

新宿で待ち合わせ 

ある平日の正午ごろ、待ち合わせ場所の新宿伊勢丹前に到着する。 

車で迎えにきてくださるということなので、もしかして霊柩車で来るのかとソワソワしてしまった。来たのはシンプルな黒のセンチュリーだった。

助手席に座らせていただくと「お待たせして申し訳ない」「来てくれてありがとう」などと先生。それから、ものすごく申し訳なさそうに「自宅にお財布を忘れたので取りに行ってもよろしいですか」とおっしゃる。

私は「なんて下手な嘘なんだ。このまま家に連れ込む気だろう。」と心の中で狼狽したが、既に乗りかかった船。今更どうこう言うまい。快く承諾。

しばらく車を走らせると先生の自宅らしき建物に到着。私を置いてそそくさと部屋に入って行く先生。

しばらくして、先生は財布を持って申し訳なさそうな顔で戻ってきた。

いや本当だったのかよ。

無事財布を手に入れた我々は食事予定の池袋に向かう。

車内

道すがら、先生は車の中で延々と喋っていた。本当にびっくりするほど喋っていた。

なんの躊躇もなくあったばかりの小娘にギャラの話をしていた。ほかにも、集めている日本軍の軍靴軍服の写真を見せてくれたり、「寂しいと食べちゃう」という悩みを打ち明けてくれたり、私に「親戚のおじさんだと思ってなんでも相談しなさいよ」と言ってくれたりした。

カッコつけて口説こうなどといういやらしさは全く感じられず、先生が話したいことをひたすら話しているので私もすっかり警戒心がなくなりとても心地が良く過ごした。

無事池袋に到着。ちなみになぜ池袋かというと、夕方には隣駅の大学に授業を受けに行かなければならない私に先生が配慮してくださったからである。

お寿司

先生がよく行くというお寿司屋さんに行く。お寿司屋さんといっても港区女子がインスタグラムに載せるような瀟洒(しょうしゃ)な店構えではなく、魚市場にあるような賑やかで気取らない良い所だった。

先生はここでも延々と喋り(主にお寿司のウンチク)、そしてたくさん食べていた。お店の人とも顔馴染みのようで、今日アレあるかい?などと聞いたりしていた。お寿司はとてもおいしかった。

まだ少し時間があったので近くにあったソフトクリーム屋さんに立ち寄る。女子らに混じって2人でアイスクリームを食べる。

「亜和さんは将来なにになりたいんだい?」と先生。

当時、私は記者になりたいと漠然と思っていたのでそう答えると、

「亜和さんは華があるからなれるさ。華があれば何にでもなれるのさ。女優にだってなれるよ。頑張りなさい。」とアイスクリームを頬張りながら激励してくれた。

別れ

授業の時間が迫ってきたので再び車へ。車は数分で大学の前に到着した。

かつてこの学習院大学に、ミスター不敬野郎鳥肌実の運転するセンチュリーで乗りつけた人間がいただろうか。私は西門の守衛に誇らしげに睨みを利かせてやった。

先生にお礼を言い車を降りようとすると、先生は私の右手を取り、そっと甲にキスをしてくださった。

そしてそのまま肘のあたりまでペローッと舐め上げられた。

これが鳥肌実。

この人はこの期に及んでも鳥肌実を演ってくれていると感じた。ありがとう先生。

最近ライブにも行けていない。いまだ大学卒業の報告ができていない。コロナが収まったら挨拶しに行こう。

先生は私を憶えていてくださいますか。

もし私が将来オリンピックに携われることになっても、きっと先生とのツーショットが流出して引きずり下ろされると思うので諦めます。

これからも応援しております。無為こそ過激。

亜和

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