わたしの知らない彼女<知らない人の向こう>

写る彼女はお世辞にも
決して可愛い人ではなかった
液晶画面の奥でくつろぐ
くたびれたスウェット姿
蛍光灯の青い光が
雑多な部屋と彼女を照らす

指が画面を暗転させ
わたしは窓の外を見る
夜更けに強盗が入ったと
地元で名を成すコンビニが
向こうで煌煌と光るので
その横顔を影にした

今日の午後二時過ぎまでは
見知らぬ他人だった男の
記憶にとげを残したらしい
わたしの知らない遠くの彼女
あるはずもない残り香を
わたしはその画面から嗅ぐ

語る端からさりげなく
知らない彼女をほのめかす技
わたしはひそかに感心する
そして冷たい季節風が
避けがたく身を刺すように
ひらいた口が押しあてられた

わたしの知らないはずの彼女は
自分の気を紛らわせるために
以前の誰かを引き合いにして
寄りかかることがあるかしら
彼女もまたこの人のことを
傷として持っているかしら

わたしは冷たい口の中で
わたしの知らない彼女を思う
皆たよりない場所に
他の誰かを探していること
暗く翳った横顔は
誰のところへも届かないこと

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