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【Queen和訳】6/11マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン~さぁ、大騒ぎを始めよう!~大英帝国の光と闇

はじめに

フレディ・マーキュリー作詞のQueenの楽曲「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」の和訳・分析をしています。

前回は詩の1番の後半の最初の2行の詳しい解説。

今回は残りです。

※注意!差別的な表現を含みます※

"The March Of The Black Queen"
Written by Freddie Mercury

詩の1番

You've never seen nothing like it no never in your life
Like going up to heaven and then coming back alive
Let me tell you all about it -
And the world will so allow it
Ooh give me a little time to choose
Water babies singing in a lily-pool delight
Blue powder monkeys praying in the dead of night

Here comes the Black Queen, poking in the pile
Fie-Fo the Black Queen marching single file
Take this, take that, bring them down to size
Put them in the cellar with the naughty boys
A little n*gger sugar then a rub-a-dub-a baby oil
Black on, black on every finger nail and toe
We've only begun- begun
Make this, make that, keep making all that noise
Now I've got a belly full
You can be my sugar-baby, you can be my honey chile, yes

(直訳+手直し)

あなたはそのようなものを見たことがありません、あなたの人生で決してありません
天国に上がってから生き返るようなものです
それについてすべてお話ししましょう-
そして世界はそれを許します
ああ、私に選ぶ時間を少し与えてください
睡蓮の池で喜びに歌う水の子
草木も眠る真夜中に祈る少年兵

黒の女王がやって来る、束に囲まれて、突っつきながら
ファイ・フォー! 女王様!一列に行進する
これを取れ、あれを取れ、やつらを縮み上がらせておやり
わんぱくなガキどもと一緒に地下室に入れておけ
砂糖を少しやってから、ベビーオイルをダバダバかけて
すべての手と足の爪に黒く塗れ
まだ始まったばかり
これをしろ、あれをしろ、そのすべての騒音を出し続けよ
今、私は腹がいっぱいになった
お前は私のシュガーベイビーになることができる、お前は私の愛しい子になることができる、はい


今回はこの太字について発音から解説します。


解説

前回↓

Here comes the Black Queen, poking in the pile
Fie-Fo the Black Queen marching single file

前回は、闇夜から突如、女王の軍隊が出現し、メロディも変わりました。

Take this, take that, bring them down to size

続くこの部分も、ちょっとテンポが変わって、3拍子っぽくなり、ちょっとダークより光が差す感じになります。やっていることはさておき、軍隊の威厳のある様子です。そして、

(March to the Black Queen)

というコーラスが高らかに入り、リズムが戻ります。


音的には、take this, take thatで、耳障りが良いです。


「これをとってあれをとって、それら(彼ら)を縮み上がらせよ。」

bring ~ down to size

といういい方はあまりないです。bring downはあってもto sizeはあまりつきません。

to sizeでは、モノをちょうどいい大きさに(する:切る、作るなど)の表現があります。

cut 人 down to size

なら、ある人をその人が思っている自己評価より低いと気づかせる(身の程を知らせる)という意味です。

bring と cut ~ down to sizeのくっつけた造語と思われます。

bring 人 downはいろいろな意味があり、俗語で「(人を)打ちのめす(下にひきづり下ろす)」などもあります。bring 人 down to earth(人を夢から現実に戻す)という表現もあります。


まとめると、これやあれやをうばって、それら(them)を、(城に)持ちかえる(bring ~down to the castle)とともに、ちょうどいいサイズに切り刻むという意味かもしれません。

この場合、これやあれは、盗るのはモノ(them)だけじゃなく、人のことかもしれません。

前の文で、fie-foという掛け声のようなものが出てきたことを考えると、巨人のようなものが食べ物(人間)を見つけた時の表現だとします。

巨人とは、強大な力を持つ軍隊とともに、子供にとって巨人(大人)という意味も含むと思います。

犠牲者が、前の詩に出てきた、浮浪児たち(や水の子たち)だとすると、彼らをとらえて城に持ち帰り、地下食糧庫にいたづらボーイズ(前の犠牲者かも)とともに込めるのかもしれません。そして自分たちのちょうどいいサイズにするのです。と同時に、暴力と権威を持って彼らに身の程を知らしめる。


そしてコーラスが

March to the Black Queen

というので、女王のいる城へ行進するのです。

女王は最初は列の先頭か、間にいると思いましたが、城にいたようです。


最後の単語 size は、pile や file とも同じ母音です。


ギターソロ(ミニ)

そして、ギターで女王登場の頃のメロディーを繰り返し、時間経過を示します。この間に殺戮や大騒ぎが起こっていると思います。

太鼓の音も、行進の鼓笛隊なのか、ワイルドにドンドコしています。


Put them in the cellar with the naughty boys
A little n*gger sugar then a rub-a-dub-a baby oil

them(それら)をその地下食糧庫(地下牢)に、それらいたづらボーイズとともに込めよ。

ここは上記で述べました。

裏で太鼓の音がドドドドドンと繰り返されます。声は高め。


少しの黒砂糖、それから、ダバダバ・ベビーオイル。

rub-a-dubも以前少し述べました。

太鼓ドンドンという意味と、マザーグースでは、rub-a-dub-dubで、バスタブでごしごし、みたいな感じで使われています。rubはこするという意味。オイルをすりこむのも使う。

ここでは、前にも述べたように、「水の子どもたち」の作者、チャールズ・キングスレーは19世紀のイギリスの牧師で、イギリスの浮浪児たちをきれいな水でごしごしすれば真人間になれると考えて話を作りました。

ごしごしも、太鼓も意味にあっていると思います。

そして、ベビーオイルをダバダバかけている擬音にも聞こえます。

なぜベビーオイルかはわかりません。

あとの詩で「黒くする」、と出てくるのになぜ透明なのか。

ベビーオイルの主原料は鉱物油(ミネラル・オイル)で、黒色の原油を精製したら無色透明になるとのこと。

ちなみにワセリンなど、赤ちゃんにも無害な保湿剤は石油でできていることが多く、安心して使えます。アゼルバイジャンなど石油の産油国でも、真っ黒な原油のお風呂に入るという医療行為がポピュラーです。

ということで、ベビーオイルにも黒の要素はあります。

とにかく、ベビーオイルをかけるということは、やはり子供が犠牲者だということではないか。


砂糖の方は、やはり子供が喜ぶものではある。

差別的表現を含み、これは「トムソーヤー(1881)」のマーク・トウェインにもみられる。彼はアメリカの奴隷制度の残るアメリカを忠実に再現しており、この物語を分析することは銃殺刑に当たると茶化して初めに書いている。

世界を忠実に書くにはモラルに反することもあり、これをうまく回避している例といえる。彼はもともとは記者だったという。

アメリカの奴隷制度の残る時代の、精製のあまり高くない砂糖をこういい、精製度の高い白砂糖は高級品でした。

独立行政法人農畜産業振興機構のサイトにはこうあります。

 15世紀末にコロンブスが、第2回目の航海時にサトウキビの苗を西インド諸島の島に移植し、アメリカ大陸へ砂糖をもたらしました。それを皮切りに、16世紀から19世紀にかけてイギリスを中心としたヨーロッパ諸国は、アメリカ大陸で大規模な砂糖プランテーションを展開しました。

つまり、当時イギリスも奴隷制度に関わっていたということです。

これもこの曲がBlack Queenといわれる所以かもしれません。いままでもあったクイーンの音楽によく出てくるテーマです。

こういった黒砂糖(ブラウンシュガーに近い)のようなものを少し。

これを子供にやるという意味かと思います。


韻は、cellarとsugar(アーの一種)、boysとoil(ォイ)。

あとはn*gger-sugar(アーの一種)と、rub-a-dub-a babyはB多め。


Black on, black on every finger nail and toe
We've only begun- begun

ここは、これまでの韻の踏み方から考えると、ちょっと変則的かもしれない。

コーラスのように高い声で歌われる。


また黒が出てくる。

少しの砂糖と多量のオイルの後は、黒く染めるらしい。

まずは爪と足の指(の爪?)。

まだ始まったばかり。

何を意味するのだろう。

Black onとbegunが2回ずつ繰り返される。どちらもBはじまり。


因みにフレディは初期に左手の爪を黒いマニュキュアで塗っていた。

ボヘミアン・ラプソディのPV(1975)やライブ映像(オデオン座ハマースミス1975)でも見られる。

一部で人気となり、1974年などのライブではフレディがファンがまねして忠誠を表しているのを数えたりしている。

メイ氏はホワイト・サイド担当のせいか、白のマニュキュアを塗っていた。

このように、音楽と現実をリンクさせることがよくある。

やはり歌われている犠牲者は、クイーンのファンのことなのか。


Make this, make that, keep making all that noise
(March to the Black Queen)

ここは、前のtake this, take thatと同じメロディ。3拍っぽく、明るくなり、最後にコーラスが入る。

今度はtakeやbring(とる)ではなく、make(させる)。

makeは作るという意味もあるが、この行進が何か創造的なことをしているとは考えにくいので、自分の好きなように変えていると取る方がいいのだろう。

「これをさせ、あれをさせ(または作り)、全ての音をたて続けよ。」

私が思い浮かべるのは、モーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ~Where the Wild Things Are~(1963)」。空想の怪獣たちの行進です。Let the wild rumpus start。さあ、大騒ぎを始めよう。

事実、ピアノ、ベース、ドラム、ギター、ボーカル、コーラスなど、全ての要素が勢ぞろいする。


ここで、詩の1番を、最初からここまで構造のおさらい。

Here comes the Black Queen, poking in the pile
Fie-Fo the Black Queen marching single file
Take this, take that, bring them down to size
(March to the Black Queen)

Put them in the cellar with the naughty boys
A little n*gger sugar then a rub-a-dub-a baby oil
Black on, black on every finger nail and toe
We've only begun- begun
Make this, make that, keep making all that noise
(March to the Black Queen)

最初は、

pile-file と size。(パイルーファイル、サイズ:「アイ」)

2個目は、

boys-oil と noise。(ボイズーオイル、ノイズ:「オイ」)

さらに、1個目と2個目の最後 size と noise で韻を踏む。(イズ)

black on ~ begun のところだけ韻のルールがないことに気づく。

むしろ、1個目と2個目は、メロディは違うが構造的には似ているとわかる。


最後、

Now I've got a belly full
You can be my sugar-baby, you can be my honey chile, yes

1個目ではギターソロが入ったところ。

ここではセリフ調のボーカルが入る。

Now I've got a belly full

は、バックに高いピアノが加わる。

声の感じからしても、犠牲者(子供)の声のようだ。

詳しくは前々回参照。

You can be my sugar-baby, you can be my honey chile, yes

これは女王の声と思われる。

犠牲者を調教し、言うことを聞いて黒の教えに染まったら、自分のお気に入りの奴隷に育て上げる、ということか。

さっきも出てきたsugarや類似のhoneyが形容詞になり(愛しい)、baby, chileは子供(や恋人)のこと。

ディズニー「アリス」でも、赤の女王はアリスに「my child」「my dear」などと話しかけている。


また、chile(チャイル)はchildのことだと思われる。

ジミ・ヘンドリクスの1968年のブードゥー・チャイルドは、もとはブードゥー・チャイルというセッション曲だった。ブードゥー教というアフリカの宗教の息子という意味。SFを取り入れたといわれる一見意味の分からない意味深な詩だ。


fullとchileで L(ル)で終わるので韻を踏んでいるのか。belly fullもエルが多い。

この2行は冒頭がBも多い。

繰り返しによりリズムもいい。

最後のyesは女王か。励ましているのか。しめしめという感じか。


間奏部分

そして詩の終わりとともに、またギターソロ。同じメロディを奏でる。

ここから40秒ほどの長い間奏に入る。


途中でリズムが明らかに変わり、どこか明るくなる。

take this や make this のような、威厳のある感じになる。

ギターの後、手拍子(?)、チューブラー・ベルのチャイム音(続く4音階を順に下がっていく)、ベース(同じ音階)、ピアノの連弾みたいなもの、コーラスと次々と入る。

コーラスは「ラララ・・・」の大合唱。最後は「ララー」と語尾が上がり、高らかに歌われる。

かつての大英帝国や、王国の威厳を示すかのような堂々としたメロディ。

ここですべての楽器とコーラスがそろい、盛り上がりは最高潮まで達する。


そして、はじまりから3分ちょうどで、最高潮を見せた演奏とコーラスが全てやみ、突然バックに静寂が訪れる。


同時に、ア・カペラが静かに始まる。


まとめ

ここまでをまとめると、

物語に女王が現れて、死んだような闇夜から一転、阿鼻叫喚の大騒ぎとなる。

子供たちは城に持ち帰られ、地下牢に込められて調教される。

音楽は、大英帝国の、あるいは他のヨーロッパの王国で行われた、闇の歴史と威厳あるサウンドが鳴り響く。

王国と女王を称えるコーラスは最高潮に達する。


続きは次回。

ありがとうございました。

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