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リハビリテーションにおける目標設定Report No,1『なぜ目標を設定をするのか?』


本日から毎週金曜日に計3回に渡り、『目標設定と意思決定』について皆様のお役立ち情報として発信させていただきます。

今回は、リハビリテーションにおいて『なぜ目標設定をするのか?』という内容でまとめております。
是非、最後までご一読いただき、改めて自己に疑問を投げかけていただければ幸いです。

⒈ 改めて考える目標設定の意義とは?

リハビリテーションにおける目標設定の位置づけはどのように捉えたら良いでしょうか?正直、目標設定をしなくとも目の前の対象者への徒手介入、運動指導などのリハビリテーションを行えないかと言えば、そうではありません。
ただ、これは何のために行っているのか?ということを問いただしていくと(Why)、最終的には目標(Goal)のためにというところへ辿り着くのではないでしょうか。

例えば、私たちは目の前の対象者に疾患特異的な症状、それに必要な検査を列挙し、問題点を抽出するという、いわゆる上記のような思考過程、行動は学生の頃からルーチン的に身についています。
しかし、その検査・測定も何のためか?もちろん、その方の問題を洗い出すのは間違いありませんが、その問題は何かの理想形(Goal)があり、そこへ到達するための問題・課題を洗い出すと考えるのであれば、何が理想なのか?というところをある程度定めなければいけません。
本人のなりたい姿や望まれる将来の形であったり、目指すべきGoalに対し、現在位置がどこかを把握するのが検査・測定であり、評価だと思います。

つまり、まず対象者と目指すべき目標を定めることへ取り掛かる必要があり(もちろん粒度は様々です)、現在地との差分を図り、目標までの道筋を構築していく作業が必要になりますので、そう考えると目標設定はリハビリテーションの『はじめの一歩』なのかもしれません。


⒉ 目標設定にはどんな機能があるのか?

さて、リハビリテーションにおいて、目標設定を行うことでどんな目的やその結果において有益なことがあるかご存知でしょうか。
目標設定への効能もあまり意識したことがないかもしれませんが、今回はこちらの論文よりご紹介させていただきます。

大きくは4点あると言われていまして、1)
① リハビリテーションのアウトカムを改善させる可能性
② 患者の自主性を高める
③ 介入結果を評価すること
④ 契約上、法律上、または専門的な要件を満たすため(コンプライアンスの遵守)

という機能・目的があります。
いかがでしょうか?何となく頷ける部分も多いのかと思います。
恐らく皆さんが最も気になる点は『①リハビリテーションのアウトカムを改善させる』という部分ではないでしょうか。
確かに目標設定がアウトカムを改善させる!?という事実は大変興味深いかもしれませんが、そのアウトカムを改善させる重要な要因として
『②患者の自主性を高める』ことだと気づいた方も多いのではないでしょうか。

理学療法士、作業療法士であれば誰もが経験し、対象者の訓練に対するモチベーションの低下や自己効力感の低下により、思うようにリハビリテーションが進まないことへ頭を悩ませることがあるのではないでしょうか。かく言う、リハビリテーションにおいては、医学的治療(手術や薬)とは異なり、当事者の協力や自主性・主体性がアウトカムへ大きく影響することは普段の臨床から痛感していると思います。

そう考えると、リハビリテーションを提供する側の素地として、どう対象者の自主性を高め、モチベーション及び自己効力感を底上げできる戦略があるのであれば、知っておくことにより訓練の効能を一層高める可能性があるかもしれません。
実際、今回こちらの論文(メタアナリシス )でも大きな効果とは言えませんが、目標設定あり群と目標設定なし群を比較すると、目標設定あり群で対象者の自己効力感を高かめる可能性があることが示唆されております。2)

⒊ 満足感や自己効力感を高める秘訣って?

では、対象者の満足度や自己効力感が高まる秘訣はどこにあるのか?
結論を言うと、『様々な情報を理解・吟味して、自分で意思決定すること』によって、自己効力感, 治療への参加意欲の向上することが研究から分かっています。2)自己決定することは、イコール他者に決められるのではなく、自分で意思判断をすると言うことになります。既にモチベーションなどの動機付けの研究は、リハビリテーション分野以外で盛んに行われていますが、この自己決定での成果報酬と他者決定での成果報酬では、自己決定の方が内発的動機づけに関与する脳局在の活動が惹起させることも分かっています。3)

まとめ

今回、リハビリテーションにおいて『なぜ目標を設定をするのか?』というテーマで、リハビリテーションにおける目標設定の位置づけや機能をまとめさせていただきました。これだけ重要視されると、どうしても目標設定することが目的となり、決めることだけが先行してしまうとそれは本末転倒になり兼ねません。
どうご利用者の意思決定を促進し、一緒に決めていくことが目標設定の本当の意味になります。
”リハビリテーションの目標は対象者のために立案され、介入に関与する人々によって(可能な限り)能動的に選択され、計画的に作られ、目的を持ち、共有されるもの“です。

参考文献
1)Levack WM, et al.Purposes and mechanisms of goal planning in rehabilitation: the need for a critical distinction. Disabil Rehabil . 2006 Jun 30;28(12):741-9.
2)Levack WM, et al. Goal setting and strategies to enhance goal pursuit in adult rehabilitation: summary of a Cochrane systematic review and meta-analysis.Eur J Phys Rehabil Med . 2016 Jun;52(3):400-16.
3)Kou Murayama,et al. Neural basis of the undermining effect of monetary reward on intrinsic motivation. Proc Natl Acad Sci USA . 2010 Dec 7;107(49):20911-6.Epub 2010 Nov 15.

次回は、来週の金曜日(22日)に投稿させていただく予定となっておりますので楽しみにしていただければ幸いです。


執筆者:AViC THE PHYSIO STUDIO 岩澤 尚人(Naoto Iwasawa)理学療法士
認定理学療法士(脳卒中、補装具)

https://www.avic-physio.com/staff/naoto_iwasawa/




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