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<36>バレンタイン戒厳令、そのとき珍獣男子の小鼻はふくらんだ。

じじょうくみこが誕生して丸10年と半年。というわけで勝手に生誕記念⁉でウェブマガジン「どうする?Over40」に連載していた処女作の「崖っぷちほどいい天気」をこちらに転載しております。もはや10年より丸11年のほうが近くなってまいりましたが、気にせず続けてまいります。

四十路ハケンOL編が、ちょうど旬なバレンタインの話題でした。今って企業のバレンタイン事情どうなっているのでしょうか。義理チョコとかなさそう。廃止されてそう。むしろ女子が食べてそう。どうなんですか世の中のOLさん。

ちなみにわたしが働いているシマ島の職場では、数年前にチョコ配り文化が廃止されました。子どもたちは手づくりチョコをプレゼント交換しているみたいです。何もない冬のイベントとしては、楽しそうですね。

それでは、どうぞ~。

*** 2015年2月8日の記事***

バレンタイン戒厳令、そのとき珍獣男子の小鼻はふくらんだ。


webアンケートで「バレンタイン当日の朝の男子高校生にありがちなこと」というランキングを見ました。内容はこんな感じ。

1位 あえてバレンタインのことを忘れたふりをしてがっついてない男子感をアピール
2位 ずっとそわそわしている
3位 好きな子がチョコをくれたら・・といった妄想にふける
4位 机・下駄箱の中身をきれいにして受け入れ態勢を整える
5位 女子の手荷物がやたらと気になってしまう

これ見て思い出したんですけどね、

職場にいた珍獣男子、これ全部やってましたから

というわけで季節柄これを避けて通るわけにはいきますまい。クリぼっちに続いてバレぼっち確定済み(泣)センチメンタルくみこが見た! 職場バレンタインのお話です。


ハラショー!!


思えばバレンタインにやきもきしたのは遠い学生時代の頃。社会に出てからは「バレンタインを利用して告白する」といった機会自体がなくなり、フリーランス時代に至っては当日誰にも会わないというありさま。もはや存在すら忘れかけていただけに、四十路になって派遣OLとして働き始めた時、最も面食らったのがバレンタインに対する異様な熱さでありました。

私のいた事業部は20代女子が圧倒的に多かったのですが、そのうちの1セクションであるわが職場、通称珍獣パラダイスだけが唯一の男所帯。しかもハタ目にはイケメンとされるアラサー男子たちでした。中にいる人間としてはイケメンの定義を世に問いたい気持ちにかられるのですが、そんな私の声がかき消されてしまうほど事実、珍獣男子たちはモテモテだったのであります。

珍獣パラダイスとは?という方はこちらこちらなどどうぞ。

初期の珍獣パラダイスは男子校のノリだったので、バレンタインも「甘いものは食わねえし、お返しが面倒だからプレゼントしてくれるな」とつぶやいては女子を牽制しておりました。

ところが当日になってみれば珍獣どもときたら、席にいてもソワソワふわふわ、立ったら立ったでウロウロきょろきょろ。そのくせ、いざ女子がチョコを持ってきたら「…どうも」と、つれない対応。まったく男子ときたらプププ。

結局その日はひっきりなしに女子がやって来て、チョコを渡していきました。しかも1人1人に違うチョコを用意し、イラスト入りのメッセージカードなどもついているんですよ。びっくりしました。世のOLさんってこんなにチョコを買っているんですか。すごいよ女子、経済回してるよ。

ちなみにその年、一番たくさんチョコをもらったのは タカス でありました。タカスは星野源似のふんわり系アラサー男子で、下町のプリンスの異名をとる課長・ワタさんと双璧をなすモテ男。

タカスは仕事がデキる上に人なつっこい人気者、おまけに絵がすこぶるうまくて兼業作家としても活動中。プライベートではかわいい彼女を溺愛するという、うさんくさいにもほどがある男子でありました。

タカスが席をはずすとどこからか女子がやってきて、地蔵様にお供えする村民よろしく1つまた1つとチョコを置いていきました。タカスが会議に行くと、帰った時には必ずその手にチョコを握りしめていました。

そして日が暮れる頃には、タカスの席には机が見えないほどのチョコ、チョコ、チョコ。絵に描いたようなチョコの山を私は生まれて初めて見ました。


タカスのチョコの行方はわからない


翌年。
お中元やお歳暮、お年賀など、季節の贈り物を廃止する企業も最近は多くなっておりますが、1月後半のある日、総務部から女子限定で1通のメールが発信されました。

「今年よりバレンタイン行事を組織的には行いません。任意で行うのは構いませんが、あくまで有志のみで決して強制しないでください。参加必須や、参加を断りにくい募り方などは禁止します。またプレゼントする際には、くれぐれも相手にお返しの負担をかけないよう気配りをお願いします。社内はもちろん、取引先も同様です。」

バレンタイン戒厳令の発布

でありました。


恋、それは戦


職場バレンタインはなきゃないでありがたいのですが、人間というのは不思議なもので、ダメと言われるとやりたくなるものです。戒厳令下のバレンタインはチョコを机の上に置かず、こっそりカバンにひそませる隠蔽スタイルが大流行。むしろコソコソ渡すことで背徳感が増し、異様な盛り上がりをみせる結果になりました。

そして珍獣男子といえば「あ、今もらったな」とわかるほど、わかりやすく小鼻をヒクヒクさせておりました。

ちなみにその年、足下にたくさんのチョコを隠し持っていたのは 課長のワタさん でありました。けれどプリンスは下々の食べ物が口に合わないのか、翌日「よかったらどうぞ」と大量のチョコがひそかに回覧され、私の額に大きな吹き出物を生み出すことになりました。

そしてスケールデカ男 イズミン が、戒厳令を利用してバレンタインに新人女子をデートに誘い出し、初お泊まり→懐妊→電撃結婚という恋のロイヤルストレートフラッシュをきめたのも、この年のことです。

そして3年目。
全女子には相変わらず戒厳令が出されましたが、出ようが出まいが女子はチョコをあげるし男子はほしがるので、その年はわりとノーマルに受け渡しが行われました。

ただし、その頃には珍獣パラダイスも男女半々の部署に変貌しておりましたので、女子メンバーが手分けして新旧珍獣男子のリアクションをチェックし、ランキングをつけようということになったのです。まったく女子ったらククク。

残念ながら当日、私は風邪で休んでしまったので直に見ることはできなかったのですが、後で女子たちから聞いたレポートはこんな感じでした。

異動したワタさんにかわって入ってきた ガンダム課長 (何でも「ガンダムでいうところの」と例える四十路男子)は、「ああどうも」といった感じのクール系。ガタイが大きく情に厚いように見えていましたが、チョコをもらい慣れてる感がにじみ出ており、意外と冷たい男ではないかとの説が急浮上。

タカス は相変わらずのモテっぷりで、成田空港に待ちかまえたファンに笑顔をふりまく韓流スターよろしく「ありがとう♪」とキメ顔で授受した模様。イケズ京男 マツタケ はタカスと真逆で、万人受けはしないけどコアなファンから気合いの入ったチョコをいくつかもらったとの報告。「あざっす!」と素直に喜んだらしいので、あんがい優しい男ではないかとの噂あり。

御曹司なのにありえないほど小心者 サトゥ と、新人のくせにオヤジ的飲みニケーションが得意の ベッチ は、プライドの高さから普段は大変女子に厳しいキャラでありましたが、バレンタインの時には嬉しそうにチョコを受け取っていたという目撃情報多数。スレてない感じが好感度を上げました。

アート系男子 ガッタくん は九州男児らしくチョコ全拒否…かと思いきや、意外とすんなり「ありがとうございまーす」。どうやらスイーツ好きであることが発覚。

そんな中、女子のハートをわしづかみにした「King of バレンタイン・リアクション」に輝いたのは、かつてミャンマー出家疑惑を巻き起こした 火消しのミズシマ でありました。

口数が少なく、常にクールで硬派な男というイメージだったミズシマですが、女子にチョコを渡されると嬉しいような困ったような表情を浮かべて、

「ありがとうございます。…気を遣わせちゃってすいません。でも、嬉しいです…」

とつぶやいて、まるで少年のようにはにかんだ笑顔を見せたのでした。

義理チョコなのに!
本命だったら一体どうなるのキャーーーー!!


と女子たちをキュンキュンさせたのでありました。

職場バレンタインに事件あり。願わくばいろんな会社の2月14日をのぞき見したいところです。ちなみに、あの トクナガワンハンドレッド がバレンタインに手作りチョコを女子に配ったという伝説が、本当かどうかは定かではありません…。

By じじょうくみこ
Illustrated by カピバラ舎

★おまけの相関図★

バレンタインで盛り上がった左上青いゾーン

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