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「ストリート・オーケストラ」

原題:Tudo Que Aprendemos Juntos
監督:セルジオ・マチャド
製作国:ブラジル
製作年・上映時間:2015年 103min
キャスト:ラザロ・ハーモス、エウジオ・ビエイラ、カイケ・ジェズース

 毎回邦題の酷さを指摘し辟易されているかもしれないが、今回も例外にならず酷い。まだ、英語圏内の「The Violin Teacher」の方が救われる。そもそも原題直訳では「我々が一緒に学んだというすべて」となる。確かに映画はスラム街の子らによって結成されたエリオポリス交響楽団誕生の実話だが、映画は「楽団誕生の話」ではない。日本のポスターはどう解釈するとお花畑になるのか、理解出来ない。ポスターの穏やかなシーンは全体であの一場面だけだ。

 スラムという生徒が置かれた生活は厳しく、生き残ることが日々問われる。
 こうした日常の中で音楽が彼らを救い、監督の想いは生徒らの成長だけではなく、生徒と関わったことで挫折から立ち上がるバイオリニストの救いも描いている筈だ。だからこそ「一緒に学んだ」とあり、教師彼自身のオーデション場面が丁寧に描かれている。

 教師役ラザロ・ハーモス氏は自らこの主役を申し出たらしく、白人設定で進められてところが変わったそうだ。彼の育った環境は映画で描かれるスラム街よりも厳しかったとも話している。
 ブラジル発信の映画はネガティブな物が多い中、この映画は希望を伝えたいと話されていた。監督、ラザロ氏らの想いが決して手放しのハッピーエンドにはならないが形になっている。

 一見、よくあるように前半クラシックは結界のように用いられている。クラシックが生活になかった子らにとって、そこは異次元ではある。しかし、音楽の垣根の無さの表現が見事で、ハッピン・ウッヂとクリオーロというブラジル音楽界の代表ラッパーが2人の出演にも現れているように「音楽」という流れの中で繋がれ倍化していた。
 暴動のシーンでモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番が奏でられる。
 人々の怒りが映像で、悲しみが音楽で表されていて感極まる。
★★★


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