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「小さな恋のメロディ」

原題:Melody
監督:ワリス・フセイン
製作国:イギリス
製作年・上映時間:1971年 106min *日本公開1971年
キャスト:マーク・レスター、トレイシー・ハイド、ジャック・ワイルド

  映画「卒業」と同じ日に観る。いつもの館内と違うことはこの種類の作品では珍しく、おそらく60歳は超えていらっしゃるようにお見受けした男性お一人が多かったこと。公開当時リアルタイムでご覧になった方々なのだろう。

 「卒業」と全く同じ、観ていないにも拘わらず作品のことは音楽も含めて知ってはいるがネットでも観たことがなく初めての全体を通しての鑑賞。リアルタイムでご覧になった方々のように当時の自身を重ねることは出来ない為、以下客観的な感想になる。

 冒頭ビッグベンを後方に捉えたままロンドン市内風景が写される。短期旅行で数日しか過ごさなかった場所ながら、日本でいうところの懐古的な昭和のような印象を受けた。SNSどころか携帯電話もない不便なようで自由な時代の、それも将来の夢に制限がかかっていない11歳前後の子らの初々しい子がここを舞台に描かれていく。

 ミドル階級のダニエル、労働者階級のメロディ、生活が厳しいトム。置かれている階級を気にするのは「大人」であって、子らの三人は友への気遣いはあっても自らの環境を卑下することがない描かれ方は救われる。

 日本公開当時が1971年とすると、海外旅行はまだ限られた人らの物でありこうして描かれる世界に憧れもあったに違いない。オープンカーを日本の母親が乗り回してはいないのは確か。

 音楽科の場面でダニエルがチェロ、メロディがリコーダーという設定も階級の差ではあるが、彼らはそれを比較の材料にはせずその待ち時間にアンサンブルを自然と始める。

 こどもってこんなに走る?移動シーンはエネルギー弾け走っている子ら。
 気取った子でもない、ごく普通の日本でいう小学校高学年の生活が丁寧に描かれる辺り本国ではそれほど受けなかったのも解るような。日本、南米でヒットした背景には「生活への憧れ」は外せない。

  「一緒に居たいから結婚したい」結婚の本質だ。親は結婚は早過ぎると当然の対応をする中、おとぎ話が始まっていく。

 ガキ大将トムが結婚の立ち合い。微笑ましいシーン。
 「人前式」参加者全員が証人となる。その参加者はクラスメイト。

 愛らしいビジュアルの主役の存在が影響したことは否めない。貧困、天才、大人びた子、そういったものを背負った作品とは違い「こども時代」を一生懸命に生きる姿の作品は少ないだけに光る。
 Bee Geesの音楽もまた心地よかった。
★★★

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