レヴェナント

「レヴェナント」

原題:The Revenant
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
製作国:アメリカ
製作年・上映時間:2015年 157min
キャスト:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン

 自然採光に拘り、特に朝夕の撮影可能な時間は1時間というタイトさ。画面の何処かに太陽が位置するシーンが多かった、写真同様斜めの光による陰影、奥行きが狙いだろう。当然ながらその太陽の殆どは中央から下方の低い位置。
 季節自体が氷点下冬の世界の為元々色は限られているが、加えて人工ライトを用いないとなると水墨画のように静かな絵となる。時折り現れる色は松明や焚火の炎、食肉の赤、流される血。この抑制された「静」に対して復讐のディカプリオが「動」となる。
 157minは長くはなかった。氷点下27℃の中のブリザード或いは同じく氷点下5℃での川への飛び込みと厳しい撮影をこなしたディカプリオ始め出演者ら。ディカプリオは今は10人話者がいるかと云われるネイティブアメリカン2言語をマスタする姿勢からもこの映画へ賭けるものは十分に伝わる。だが、映画とはいえグリズリーに襲われ瀕死の人間の立ち直りは早過ぎる。リアリティがあるようで実はない。殺された息子への復讐が彼を突き動かしたというが、親子関係の描きが不足している所為で単に復讐に留まっていることが残念だ。全体に自然の描写は全く問題がないが人物を掘り下げていない為に大作の割には観終わった後心に残るものが少なかった。映像美と出演者の熱演といったところか。
★★★☆


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