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「ニュースの真相」

原題:Truth
監督:ジェームズ・バンダービルト
製作国:アメリカ・オーストラリア
製作年・上映時間:2015年 125min
キャスト:ケイト・ブランシェット、ロバート・レッドフォード

 この映画を観に行く人々は「Truth」の意味が解らない人なのか、否だ。娯楽映画として不特定多数を対象に作られた映画ではないことは顕か。この陳腐過ぎる邦題も酷いに尽きる。
 三大アンカーマンの一人と云われるダン・ラザー氏が映画の中で「質問をしなくなったらアメリカは終わりだ」と話す場面がある。ニュース報道の中で要となる人へのインタビューはパフォーマンスではなく真実を得るための手段としてこの映画の中でも何度も現れる。何を引き出すのか?何を語らせるのか?

 ラザーゲート事件でダン・ラザー氏、アブグレイブ刑務所での虐待を報道しピーボディ賞を受賞したCBSプロジューサーメアリー・メイプス女史、他関係プロジューサー3名がメディアから消された一連の疑惑を描いている。ジョージ・W・ブッシュ元米大統領の軍歴詐欺を暴く為の資料が偽造文書だと「ブロガー」告発され、メディアがネットに揺さぶられていく。

 実話が元になっている映画と云うことは、CBSから解雇された形になったラザーゲイト事件が納得されず時間を経てもう一度問われているということ。勿論、ブッシュ側からすると「何を今頃また蒸し返すのか」というのは説明を聞かずとも想像に難くない。どちらのサイドから観るかでこの映画の評は分かれる。監督はinterviewの中で「…彼女とは、あの出来事があった1年後に会っていて、一緒に過ごす時間も多かった。当時の彼女は、まだ非常に傷ついていて、今にもうずくまりそうだったよ。それから9年の付き合いだけど、彼女は、その間に少しずつ立ち上がり、今は少し胸を張って少しずつ落ち着きを取り戻している。見ていて非常に嬉しかった。…」と語るところからもみても興味本位に対岸から他人の言葉で描いてはいない。

 映画終盤の委員会にて「取材の趣旨が気に入らないと報道した人間の政治傾向や客観性、人間性まで疑ってかかり、スクラム組んで喚き真実を消してしまう。異常な程騒いで、全てが終わった時には本来の内容は何だったかさえも思い出せない。」と語る彼女の毅然とした姿勢から放たれた言葉は日本のジャーナリズムにも当てはまる。
 映画制作方法の問題ではなく映画の課題(主旨)は今現在も消化不良が残る。TVで取り上げた資料が偽物だと糾弾されながらもブッシュの疑惑が一向に晴れないままなのは真実が隠されているからではないのか。偽物を「敢えて作成できた」事実を知る人物の影も消えない。

 ロバート・レッドフォードとケイト・ブランシェット、お二方のキャステイングなしにはこの映画は生まれなかっただろう。
 映画の中で「Trust」の言葉もチームの中で何度も使われ「Truth」と同じように印象に残る。
★★★☆

 

 
 
 

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