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Polyphia『Remember that you will die』(2022)

2011年にアメリカのテキサス州で結成されたインストルメンタルバンド。
バカテクギタリストScott LePageとバカテクイケメンギタリストTim Hensonの2人の天才ギターヴァーチュオーソを中心とし、Clay Gober (Ba.)、Clay Aeschliman(Dr.)を加えた4人からなる。
当初はVoも在籍したが、2012年に脱退してからは曲ごとのフィーチャリングゲストで加わる程度で、パーマネントメンバーとしては不在。

Scott LePageは、どちらかというと割と激しめのディストーションサウンドで早弾きを多用するのに対し、Timはクリーンサウンド主体でタッピングでフレーズを構成する展開が多い。

2人のプレイは、Djentムーブメントど真ん中だったこともあり、まずはテクニカル志向のマスロック、プログレロックをベースにして、EDMやHip-Hop、ファンクといった様々なスタイルの音楽をミックスするスタイルに自然となっていったという。
 
ロックの世界でインストでメインストリームシーンを狙うのは相当な演奏テクニックと強烈な個性が必要で、かつてはSteve VaiJoe Satrianiに始まり、Mattias EklundhKiko Loureiroといったジャズやフュージョンやミクスチャーのテイストを取り入れた形で成功した例はあるが、このPolyphiaはそれら名アーティスト達と似て非なる個性をもち、最新鋭のスタイルで世に問いかけている。
 

Remember That You Will Die

4枚目となる本作『Remember that you will die』は前作までと比べてフュージョンやロック風味は薄まり、一方で様々なスタイルのアーティストとコラボした楽曲が並ぶ、言わばコンピレーション的な一枚という印象が強い。

——
* Tim Henson-Gt
* Scott LePage-Gt
* Clay Gober-Ba
* Clay Aeschliman-Dr
—-

■Genesis feat. Brasstracks
ブラスを取り入れたファンキーなオープニングトラック。
初っ端から少し意外な曲調だったが、ブラスサウンドとの軽妙な掛け合いも実はテクいギターに相性ピッタリというのが分かったし、何より色んな要素を不自然なく取り入れてアレンジしちゃうPolyphiaのコンポーザーとしてのスキルが遺憾無く発揮されているので、満足度がめちゃくちゃ高い曲。

■Playing God
流麗なメロディラインと美麗なハーモニクスを多用したメランコリックな調べ、そして軽快なボサノヴァの香りが耳を芯から満たしてくれるシャレオツテクニカルソング。
昼下がりの微睡に一杯の珈琲と一緒に聴くにはちょっとテクニカルすぎる…か…?

■The Audacity feat. Anomalie
カナダのキーボーディストAnomalieをフィーチャリングしたJazzyな一曲。
ギターの一フレーズ一フレーズがテクニカルで、心が持っていかれがちだが、ドラムの変態的リズムセンスとベースの極上華麗スラップとうねるラインも尋常ならざる誘引性を持っている。
■Reverie
前曲に引き続きスラップベースが良いお仕事している曲。
1:56からディストーションギターでさらりと入ってくる爽やかなフレーズが色々沸(たぎ)る。
後半、突如別の曲のようにメロウで妖艶なパートになるのもプログレ好きメタラーの方々は骨抜きにされる展開ではなかろうか。

■ABC feat. Sophia Black
日米ハーフ美女シンガーSophia Blackをフィーチャーした曲。
中間部に日本語で入っている
「ちょっと待って、ヤバい超カッコいいんだけどー、無理無理笑」
は正直どうかなと思ったが、TimがOK出したなら、まぁいいか笑。

■Memento Mori feat. Killstation
Noran santana のKillstationが参加したデジタルコアサウンドが全面に来るミドルテンポチューン。


■ Fuck Around and Find Out feat. $not
ラッパー$notをフィーチャーしたフロリダの海風を感じる開放的な曲。

■All Falls Apart
重ね合わせたギターが美しい、壮大で1分ちょっとの短い曲だが、感情が浄化されるようなチル感に溢れた曲。

■Neurotica
ギターテクニックの宝石箱のような煌びやかな技術が目白押しの、ギターキッズには堪らないチューン。
タッピングハーモニクス、チキンピッキング、ゴーストノート多用、高速上昇下降フレーズ、スウィープ、、ギター教則本の最後の方に載っているようなテクが満載の難易度ライオンマーク(YoungGuitar参照)の情報量過多な曲。

■ Chimera feat. Lil West
打ち込みドラムマシンにヘヴィなギターサウンドが主張したあとメランコリックないつものPolyphiaサウンドに戻る前半と、Lil Westがラップを刻む後半の二部成からなる。
一見、異ジャンルハレーションが懸念される展開でも違和感なくフュージョンしてしまうPolyphiaの凄さ。



■Bloodbath feat. Chino Moreno
DeftonesのChino Morenoが参加しているモダンなニューメタルチューン。
バッキングギターがズシズシ来るヘヴィなメロコアサウンドで、ギターソロはメロデスなのに、そこにTimのファンクなチャカチャカカッティングが新鮮過ぎて大好き。

■Ego Death feat. Steve Vai 
変態の神様、Vai 先生とのコラボ曲。
前半はうねうねするピロピロするいつものやつ。
後半のロックフュージョン的な展開は前作まで大量に聞かれたPolyphiaの中にある、ある意味暴力性や激情といったパワフルな要素をVai先生が引き出してくれたのか。
大好き。



総合満足度 87点(人はいつか死ぬ、それを忘れるな。でもその前には聴いておきたいレベル)

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