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住職さんの話。

皆さま、いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。
今回はあるご住職さんのお話です。怖い、不思議なお話ではなくて、ユニークなお話です。

書きながらもう、思い出してピクピクして笑いを堪えています。。

当時、初めての奥さんと籍を入れてから間もなく、四国の徳島へ出張が決まって、行った時に、嫁母、つまりお義母さんが離婚後、愛媛に住んでいた。それを思い出し、挨拶でもしておこうと現地での仕事終わりに車で走って行きました。
その時は、徳島から愛媛なんて淡路島一周くらいじゃないの?と、軽い気持ちで車を走らせました。そして走っても走っても着かない。当時は全線国道の山道でかなり疲れていたものの、次の日にはまた予定が有って、トンボ帰りをしないといけない状態で、段々と焦り出してここで初めて道路地図を開いてみて、驚きました。四国をまともに横断、早くて片道5時間半、往復11時間。現在地はほぼ真ん中地点。時間は23時、、どうしようか、、

ここまで来てるし、行けー!と云うことで、午前1時を回ったところで着いたのです。そして、電話を掛けたところ、迎えに行くと言われ迎えに来てもらった後に、小さなお店に連れて行かれました。

義母は小さな飲み屋さんを営んでいて、「よく来てくれたね」と言ってもらいました。そして、看板の電気を落としているお店に招かれ、入ったところ、一人、スキンヘッドの着物の人物。 誰?それが再婚相手の方でした。妙な風体に違和感を覚えながら、不覚にもビールを一杯飲まされ、意識を失いました。

目を覚まし、気づいた時、だだっ広い畳の間に寝かされていて、どこだ?と目を凝らしていると「目が覚めた?」とお義母さんが声をかけてくれました。
ここは何処ですか?と聞くと「心配しないで休みなさい。」と言われ、また夢の中へトリップしてしまうのでした。

 何となく遠いところから読経の声に心地良さを感じながら、ふと、俺は何やってんだ?とマッハのスピードで目覚め、現実に戻りました。確か、アポイントは10時だったよな、、時計を見たら10時、、やってもーた!速攻戻っても最速で4時間、、。 挨拶もそこそこに戻りました。勿論クライアントに大目玉喰らいましたが、事情を話すと良くそんな時間で戻れましたねと許してくれました。そして、商談は成功に終わったのでした。めでたしめでたし。

 そして次の夏に改めて遊びに行く事になり、遊びに行ったのでしたが、ものすごい歓待を受け、はしゃいでいる住職と、とりあえず魚を釣りに行く事になりました。
お義母さんの里がそこそこデカい漁港の出身で、ほぼ兄弟全員が漁師。そのお義母さんのお兄さんが漁港長で、ここでも飲まされ歓待。
それで、じゃ、行くか!と云うことで漁港に連れて行かれ、「ちょっと待ってね」と、普通に車でも持ってくるような感覚で待っていたらクソデカい漁船が横付け。その船にドド〜と氷と餌の小魚もドド〜と船倉に詰め込み、漁の出発。

船って小さいボートの様なものを予想していたのですが、初っ端からビビるくらいの船(笑、 そして海の中に設置されている生簀の横に船を付け、餌の小魚を生簀の外側にスコップで撒く。小魚と言っても15センチは最低でもあるような鯖やイワシです。それを撒くと一瞬でバシャバシャとすごいことになるのです。釣竿など無く、ぶっとい針とぶっといテグスだけでポイ!っと海に投げ入れると瞬時に、それこそ嘘でしょ!という様なハマチや鯛がかかるのです。
それを1時間ほど続けると、山盛りヒャッホー!となるのでした。

漁を終え(笑、後で届けてもらうことで待っていると、トラックで配送。
とりあえず何匹か捌いてお造りにして乾杯。
そのまま朝まで飲み続け、残った魚はお義母が「痛むから炊いちゃうわ」と頭とひれをガシガシと切り取り、バンバンと全てぶつ切りにし、大鍋にぶち込み大量の生姜を入れて全部炊いた(笑。
これで、1週間の食事メニューが確定。私と住職は飲みながらなので、酒のつまみに魚に文句はなかったが、一緒に行っていた嫁のブー垂れ度が半端なかった(笑 丸々1週間朝昼晩と魚を炊いたもの、、魚好きの人でも白旗上げるのではないでしょうか。。

 そのお義父さんである住職さんに色々とお話をして、分かったことが沢山あり、元々、北海道で高校の先生をしていたんだと。
そして、お寺の継ぎ手が無くてそのままだと廃寺になるので手を上げて、引き継いて住職になったらしいと話してくれました。なので、このまま跡継ぎが居ないと廃寺になるのだそうで、そうすると出て行かなければならないのだとも言っていた。

そんな現実の話を聞きながら、お勤めで経を上げているのを後ろから眺めながら坊主頭を見ていると、蚊がプーンと飛んできて止まって血を吸い出すのでした。一匹目が血を満タンにして飛び立ち、間も無く2匹目が止まり、血を満タンにして飛び立ちました。だけど、住職は動じない!さすがすごいなぁと思っている時に3匹目が着地、満タン目前で「クソ痒いんじゃー!ボケー!」とボコボコになっている頭をボリボリ描きながらムヒを塗っていた。正座していた私はズッコケて面白すぎて転げ回る。お勤めが終わるとずっと私と飲んでいた。住職さんって案外暇なのねと話を聞くと、「暇やでー」と言った。 この時、一瞬住職になるのも良いかなと頭をよぎったので、もっと突っ込んで聞いてみたのです。

一番気になっていたのが、
”おばけ出ない? 怖くない?”
全く怖くないよ、たまに火の玉飛んでるけどね、、で、たまに横にある家の方に出るんだそうだけど、「出て行け!ここはくるとこ違う!」といえば消えていくらしい。

”お寺って忙しいの?”
盆と正月くらいかなぁと、あとはヒマ!と笑っていた。

”お寺って儲かるの?”
檀家さんの数で決まるんだけど年々減っていて、そんなに儲からんなぁと言いながらも飲みに出掛けていた。

実際、寺の本堂の大屋根の葺き替えを国の補助でやったみたいだけど、全額じゃないので結構キツいみたいだった。 そして盗難にも一度あったみたいで、社務所に置いてあった大きな金庫を引きづって盗まれたそうだ。中身は入ってないのにご苦労なこった、、と笑っていた。

結果、そんなに美味しい職業じゃないのね、、と早々に余計なことを考えるのを辞めました。

このご住職も数年後に亡くなり、お寺は廃寺になったのでした。

長々と読んで下さりありがとうございました。

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