マイク・トランプ インタビュー 「自分だけがこの世でWHITE LIONを名乗ることが出来るんだ」
80年代のLAメタル/ヘア・メタル・ムーヴメントの一角を担い、ここ日本でも人気を博したバンドWHITE LION。数々のヒット曲を作り出した彼らだが、バンドは91年に解散。ヴォーカリストのマイク・トランプはFREAK OF NATUREなどのバンドを渡り歩いた後ソロ活動を開始。現在はバンドに在籍した年数よりソロ活動の方がはるかに長くなった彼だが、これまでに何度もWHITE LIONの再結成の噂は持ち上がっていた。しかし現在に至るまでそれは実現には至っていない。そんな彼がここに来てWHITE LION時代の曲をリレコーディングした作品「SONGS OF WHITE LION」をリリースした。なぜ今リレコーディングなのか。ヴィト・ブラッタとの関係、そしてWHITE LIONの再結成の可能性について、マイク・トランプに語ってもらった。
Q: あなたは過去にもWHITE LIONの曲をセルフ・カヴァーしたアルバムを出しています。今回改めてWHITE LIONの曲に向き合い、リレコーディングする決意をしたきっかけは何だったんでしょうか?
マイク・トランプ(以下M):もし君が90年代末期に出した「REMEMBERING WHITE LION」のことを指しているのだとしたら、それは完全な間違いで、やるべきでは無かったと言わざるを得ない。WHITE LIONが終わって7年、FREAK OF NATURE が終わって2年、ソロ・デビュー・アルバム「CAPRICORN」を出してから1年という時期で、 WHITE LIONを再び迎える準備が出来ていなかったんだ。本当に間違いだった。提示された金額に目が眩んで周りが見えなくなっていたんだ。もし当時に戻れるなら、絶対にやらないよ。だが2022年になってWHITE LION時代の価値ある曲(ヴィト・ブラッタと自分が作曲した曲)に向き合う準備が出来たんだ。今の自分は長年経験を積んで、なぜこれらの曲をリレコするのかというのが判断できる人間になったよ。
Q: ボーナス・トラックを除いてこのアルバムには12曲収録されていますが、あなたが全て選曲しましたか? もしそうならば、どういった基準でそれらを選びましたか?
M:こういうアルバムにはこれは外してはならないという曲もあるし、アーティスト側の選択もある。これは俺が何年も言い続けていることなんだが、「BIG GAME」は未完成のアルバムなんだ! そのアルバムから4曲を選んだことはとても重要なことだったんだよ。
Q: 私がこのアルバムを最初に聞いた時、自然体でオーガニック、そしてヴィンテージ・ワインのような熟成された深みのあるあなたの歌声に感動しました。オリジナルの曲と比べてキーを落としたり、アレンジを変えたりしていますが、このアルバムを録音する時にあなたが歌声に関して一番重視したポイントは何でしたか?
M:ドーモ・アリガトゴザイマス。他の歌手のことを抜きにして、そのことを正確に語るのは非常に難しいし、正しい選択ではないとは思うけど、俺は現在62歳で、「FIGHT TO SURVIVE」を書いて録音したのは23歳の時だった。今、当時と同じ音を出せるわけがないし、同じ音を出したいわけでもない。君の言葉を借りるなら、今日の声は熟成されたワインで、その人が今まで経験してきたことを反映しているんだ。俺は今これらの曲を指揮する立場だ。逆に80年代は曲が俺を指揮していた。多くの歌手がかつての様な歌い方をしようとしているけど、それは無理だし、誰が少女のように歌う老人を聞きたいんだ?と思うかってことさ。
Q: 今回のアルバムのレコーディング・メンバーは、あなたとは長い付き合いがあるミュージシャンばかりのようですが、このアルバムを録音しようと決めた時、すぐに彼らに声を掛けたのでしょうか。それとも他のミュージシャンにも尋ねて、最終的に今のメンバーに決まりましたか?
M:オリジナルのWHITE LIONの持ち味を壊さないというのがとても重要だった。2023年に、今忠実に再現したらどうなるのかという、自然な流れだったんだ。だからWHITE LIONに対して敬意を持った友達やミュージシャンが必要だったんだ。曲でアピールするのではなくね。
Q: またレコーディング・メンバーには録音する時に、あなたからどんな指示を出しましたか?もしくは全く指示は出さず、彼らに任せましたか?
M:彼らに何か指示する必要なんかなかったよ。全員WHITE LIONのファンだし、モナ・リザの絵にひげを描いたり、モーツアルトの曲を変えたりするような奴らじゃないからね。
Q: クレジットによると、このアルバムはソレン・アンダーセンとあなたでデンマークのスタジオで録音されたようですが、他のメンバーもこのスタジオに集まって録音したんでしょうか?
M:このアルバムでは、実験的なことはせず、できるだけオリジナルなものを残すことがとても重要だったんだ。マーカス・ナンドはほぼ100%ヴィトのパートを演奏してるんだ。それも違うキーで、かなり不可能な作業をやってくれた。ソレン・アンダーセンとは13年以上一緒に仕事をしてきたけど、彼は最も信用でき、マイク・トランプのことを最も良く知っている人物なんだ。目をつぶってもいいし、ビールを飲みに行ってもいい。スタジオに戻ると、まさに思い通りの状態にしてくれるんだ。
Q: 今回のアルバムのジャケットについての質問です。バラと動物の頭蓋骨2つが描かれています。このカヴァーは何かを意味しているんでしょうか?
M:何か魔法のようなストーリーや気の利いた答えがあれば良いんだけどね。でも単にこのアルバムがどういうものなのか、はっきりとした印象を与えるものを友人に頼んだだけなんだ。俺はこれをコンサート・ポスターと呼ぶこともある。これを見れば、今夜俺が何を演奏するのか、疑う余地はないからね。
Q: 日本のファンにはこのアルバムのどこに注目をして聴いてもらいたいと思っていますか?
M:オー日本かい⁈ 日本がなければ、WHITE LIONもなかったかもしれないということを、ファンの皆には是非覚えていてほしいんだ。もし1984年にVictor/JVCとバンドが契約せず、「FIGHT TO SURVIVE」をリリースしなかったら…。ヨーロッパ全土がそれを輸入し、アメリカでまだ知られる前に、ヨーロッパのアンダーグラウンド・シーンで大きくなっていなかったら、WHITE LIONもなかったかもしれない。俺たちがそういったスタートを切れたのはとても重要だったんだ。だから日本のファンというのは今回の新譜に収録された曲の一部でもあるんだよ。彼らがバンドに命を与えてくれたからね。
Q: あなたのファンの多くはWHITE LIONはあなたとヴィト・ブラッタのバンドであると認識しています。過去何度かあなたは彼とWHITE LIONの再結成について話し合ったと思いますが、いまだ実現はしていません。それは何故でしたか?
M:そうだね。ヴィトと自分がバンドの核であることは否定しないよ。そのとおりだ。ただ実際WHITE LIONの再結成については、彼と只の1回も話し合ったことは無いし、これからも起こりえない。マイク・トランプだけがこの世で唯一WHITE LIONを名乗れるんだ。
Q: WHITE LIONの再結成は無いと仰いましたが、肝心のヴィトは現在どうしているのでしょうか?
M:真の問題点はヴィトがWHITE LIONが解散した1991年以降、どのステージにも、どのスタジオにも参加したことが無い事なんだ。加えて彼は、今までメディアに対して理由が何なのかという公式声明を一度も出したことが無く、今後の計画も分からない。解散から30年以上経って、まだ可能性のドアが開いているとは言い難い。実際無理だろう。俺はヴィトを愛しているし、彼とは友達だ。だがWHITE LIONの再結成は上手くいかないだろう、起こりえない。ジェームズ・ロメンゾ(B)はMEGADETHで成功しているし、グレッグ・ダンジェロ(Ds)とは誰も連絡を取っていないんだ。
Q: WHITE LIONの曲の中であなたが一番思い入れの深い曲を挙げてもらえますか。またその理由も教えて下さい。
M:”Broken Heart”はヴィトと俺が1983年に最初に書いた曲なんだ。俺たちのベスト・ソングとは言い難いけど、WHITE LIONが始動して、夢が動き出した日ということを反映した曲だね。この曲無くして俺たちのライヴは成り立たなかったよ。
Q: あなたはWHITE LIONで日本に来ていますよね。初来日時のライヴ映像は「One Night In Tokyo 1988」というタイトルでもリリースされています。翌年の1989年にも来日しておりますが、他に来日公演時のライヴ音源や映像は残っていないんでしょうか? もし残っていたら是非商品化してほしいのですが…。
M:ある・・・と言いたいところなんだけどね。当時それらについて担当してくれた人々は、そういったことについては考えていなかった。だからこれから将来、素晴らしいライヴ作品を残せたらと思っているよ。
Q: そしてWHITE LIONで来日した時の思い出やエピソードがあれば教えて下さい。
M:素晴らしい思い出しかないよ。でも、特に初来日の時は本当に信じられなかった。上でも言った通り、WHITE LIONがスタートした場所であり、日本はある意味で俺たちのホームタウンだった。本当に、本当にもう一度日本のファンの前でWHITE LIONの曲を演奏するチャンスが貰えたらと思っている。(初来日から)35 年経ち、バンドがショーではなく音楽を重視するようになると、これらの曲がどれほど素晴らしいかを多くの人が理解できると思うんだ。
Q: あなたのキャリアはどこかのバンドに在籍するよりもはるかにソロ活動の方が長くなりましたが、今後もソロ活動を続けるのでしょうか? もうあなたはバンドを結成して活動することには興味がないのですか?
M:バンドというのは結婚に似ていると思うんだ。破局した時の気持ちも似ている。俺は3つのバンドに在籍したけど、また破局することには耐えられそうもない。でもこの「SONGS OF WHITE LION」でプレイしてくれる兄弟たちは、間違いなくベスト・フレンドさ。
Q: ここ数年のコロナの影響で世界中の多くのミュージシャンたちは、音楽活動の停止もしくは停滞/休止をせざるを得なくなりましたが、あなたは積極的にソロ・アルバムをリリースし続けていました。一連のコロナ騒動はあなたの音楽活動や生活にどのような影響を及ぼしましたか?
M:勿論、自分もツアーはキャンセルせざるを得なかった。ただ俺は農場に住んでいて自然に囲まれた生活をしている。だから都会に住んでいる人たちのように、外にいても過密になることは無かったんだ。直ぐそばに自分のスタジオもあるし、自分がやりたいことが何でもできたよ。
Q: 普段音楽から離れている時は何をしていますか?
M:上で答えたように農場に住んでいるから、トラクターに乗って仕事をしたり、モノを作ったり直したりをしたりしていることが多いね。それが気分転換になって、ロックンロールに飽きるということは無いよ。もし俺がツアーから帰ってきて、その日のうちにバーで酒を飲んでパーティーをしていたら、俺はもうとっくに死んでいただろうね。俺は自分の音楽とファンを尊重し、自分の健康も尊重するんだ。
Q: あなたが音楽を続けていく上での最大のモチヴェーションは何でしょうか?またミュージシャンとしてのあなたの最終目標を教えて下さい。
M:音楽と言うのは自分の一部であって、やらなきゃならない義務ではないんだ。自分だから出来ることなんだよ。曲を書くのは自分を表現するものであって、レコード契約を果たす為とかお金の為ではないんだ。自分の音楽でお金を稼ぐことはオマケなんだよ。KISSがやるようなことは絶対やるつもりはないね。
どうもありがとうございました。
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