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「ジェイニー・レインはいつもこれと同じ方法で作曲していたんだよ」-ロブ・ワイルド(MIDNITE CITY)インタビュー

2020年から現在に至るまで、現在進行形で世界を覆いつくすパンデミックの勢いは未だ衰えを見せない。そんな困難な中でも多くのバンドが活路を見出そうと試行錯誤を繰り返している。大盛況に終わった2019年の初来日公演後、ニュー・アルバム制作していたMIDNITE CITYもこの困難に直面したバンドの一つだった。当初の予定から大幅に遅れたものの、無事新作『ITCH YOU CAN’T SCRATCH』を完成させたバンドのヴォーカルで、メイン・ソングライターでもあるロブ・ワイルドに、来日公演の思い出や新作のこと、これからの予定などを語ってもらった。

-まず2019年の初来日公演を振り返ってみての感想をお願いします。

ロブ・ワイルド: 初めての日本は信じられないくらい素晴らしかったよ。今までメンバーの誰も日本には行ったことは無かったんだ。けど俺らのヒーローたちが歩んできた同じ足跡を辿って行けたことは、正に夢が現実になったって感じだった。俺たちレベルの知名度のバンドが日本でプレイする機会を得るのはそう多くはない。だから本当に大チャンスだったんだ。この初めて日本を訪れた時の気持ちは、映画『ロスト・イン・トランスレーション』を思い出させるね。全てが違っていてユニークで。でもすぐに日本を気に入ったよ。
 会った人たちは皆親切で温かく迎えてくれたし、ファンのみんなは今まで会った中でも間違いなく最も熱狂的で生粋の人たちばかりだった。この経験が更にこの旅を特別にしてくれたよ。観客のみんなはセットリストのすべての歌詞と曲を一緒に歌い上げてくれたからもうブッ飛んだね。あとラッキーなことに滞在最終日に京都に行っていくつかお寺を見て回ったんだけど、そりゃあ信じられないくらい美しかったよ。日本は間違いなく俺たちのお気に入りの国だし、戻ってくるのが待ちきれないよ。俺とピートとショーンは、到着した当日、その記念におそろいのタトゥーを入れたんだ。

-今回あなたにインタビューするのは初めてなので、あなたのバイオグラフィーを教えてもらえますか?

ロブ: 俺はまず9歳の時ギターを始めたんだ。11歳になると曲を書き始め、14歳になるとドラマーとしてバンドでプレイするようになり、その後ギター、ベース、ヴォーカルと移行していった。1999年にノッティンガムへ引っ越す前はいくつかのバンドを経験していて、CHINA DOLLというバンドにも加入していた。その後、俺はTEENAGE CASKET COMPANYというパワー・ポップ・バンドを結成し、13年間で5枚のアルバムを作ってイギリスやヨーロッパをツアーしたんだ。2007年にはアメリカのボストンに移住し、SINS OF AMERICAというバンドに参加して2枚のアルバムとアメリカ・ツアーを数年経験した。同時にスティーヴィー・ジェイムズ(元 TIGERTAILZ)のギタリストとしてツアーもしたし、2012年にTIGERTAILZに加入するまでは VEGAでベースとして数年活動した。TIGERTAILZに参加してからは4枚のアルバムを作って、イギリス・ヨーロッパとアメリカ・ツアーをした。その中には2014年にKISSと一緒に周ったツアーも含まれている。こうした経験を経て2017年1月にMIDNITE CITYを結成することになったんだ。

-バンド名を“MIDNIGHT” CITYにせず“MIDNITE” CITYにした理由は何でしょうか?

ロブ: ロックの世界ではミススペルがカッコイイとされている。例えばDEF LEPPARD、 RATT、 ENUFF Z’NUFFなんかそうだよね。“Nite”を使うのは“Night”よりもアメリカンな響きと印象を与えるし、俺たちがやっている音楽スタイルに合っているからなんだ。

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-海外ではレーベルをAOR HeavenからRoulette Media(以下RM)に移籍しました。そこに至るまで時間が掛かったようですが、その間に何か問題があったのでしょうか?

ロブ: 別にAOR Heavenと何かあった訳ではないよ。ただ2nd アルバムに関しては、1stアルバムの時よりプロモーションに力を入れてくれなかったと感じたからなんだ。みんな世界で最高のアルバムを作ることもできるけど、それが適切なプッシュを得られない場合、やれることは限られてしまう。日本ではAnderstein Musicがリリースしたけれど、アルバム発売後2ヶ月で倒産してしまって何もできなかったんだ。だから先に進む必要を感じたんだ。レーベル移籍にはかなり時間が掛かったよ。RMだけじゃなくFrontiers Recordsもオファーをくれて、最終的にRMとサインするまでに長い間両者を行ったり来たりして検討した。RMは手広くバンドと契約せず、厳選したバンドと契約してプロモーションを手厚くしてくれるんだ。彼らは俺たち同様MIDNITE CITYとその音楽を信頼してくれているよ。

-コロナの影響で多くのバンドが活動の停滞を余儀なくされました。あなた方もレコーディングなどに支障が出たようですね。以前は2020年末には本作を出したいと語っていましたが。結局2021年の5月(海外は6月に変更)までずれ込んでしまいました。

ロブ: 完全なる悪夢だったよ! もしコロナが無ければこのアルバムは2020年10月には出ていたはずだったからね。コロナに全部台無しにされたよ。レコーディングにはかなり苦労させられた。バラバラの5つのスタジオで別々に録音しなきゃいけなくなったし、顔を合わせて作業も出来なかった。だから遅れたんだ。結局完成したのが去年の10月だよ。長く待たされた。去年の8月にRMと契約したんだけど、彼らは今の状態がもう少し落ち着くまで新譜のリリースは待った方が良い、そしてリリースする数か月前から計画的にプロモーションしていくと言ったんで、待っていたんだ。ホント言うと年明け早々にでもリリースしたかったんだけど、今思えば正しい判断だったと言える。早く出してツアーをやろうとしても、結局年始には何もできなかったわけだからね。

-“Crawlin’ in the Dirt”のビデオは呪いの人形に針を刺して、相手に復讐する不気味な内容になっていますがこれは誰のアイデアでしょうか?

ロブ: 呪いの人形のアイデアはショーンなんだ。この曲は今まで録音した曲の中でも最も重い内容で、過去12か月の俺たちのフラストレーションを要約したものさ。とてもエッジが効いていて、ショーンのアイデアがこのビデオの内容にばっちりハマると思ったよ。結果は素晴らしいものになったね。

-“They Only Come Out At Night”のビデオもショーンが企画・制作し、映画仕立てになっていますが、何か参考にした作品は有るのでしょうか?

ロブ: ある時、彼女と『ロストボーイ』という映画を見ていたんだ。お気に入りの映画で昔は何度も見ていたんだけど、しばらくはずっと見ていなかった。で、急にこの映画のサウンドトラックは素晴らしかったことを思い出してね。彼女に「もしこの映画をリメイクして、サウンドトラックをMIDNITE CITYの曲にしたら恰好良くないか?」って言ったんだ。タイトルはすぐに“They Only Come Out At Night”に決まって、次の日にはこの曲を書き始めたんだ。頭の中にはその映画を思い浮かべてね。まるでその映画のために特別に作られたかのような曲、それがこの曲の全体のテーマなんだ。
 俺たちはこの曲を絶対にシングルにしなくちゃいけないということを早い段階から分かっていたし、撮影をするならロケをしに街へ出ないといけないなとも考えていた。ショーンが役者の募集、編成、脚本、指揮…このビデオに関するあらゆることを取り仕切ってくれて、素晴らしい仕事をしてくれた。俺たちが作ったビデオの中で間違いなく最高傑作だよ。30 SECONDS TO MARSがビデオを作るのと同じように、それを単なる別のミュージックビデオではなく、小映画のようにすることもショーンのアイデアなんだ。

-あなたはバンドの大半の曲を作っていますが、どのように作曲し、そのインスピレーションはどこから得るのでしょうか?またあなたは数多くの楽器をプレイしますが、他のメンバーに細かいフレーズの指示を出したりするのでしょうか?

ロブ: 俺の作曲過程はいつも決まっている。アコースティック・ギターで全て書いているんだけど、これは曲の良し悪しを判断する基準になるからなんだ。マーシャルでデカい音を出しただけのくだらない曲は良いプロダクションで誤魔化すこともできるけど、一人の人間にアコースティック・ギターだけで成り立つ曲は、それが良い曲だってことが証明されるんだ。俺が尊敬するソングライターのジェイニー・レイン(WARRANT)はいつもこれと同じ方法で作曲していたんだよ。
 インスピレーションは至る所から得る。俺はいつも心から曲を書き、その意味を表現する。今まで書いた曲は誰についてなのか、そしてそれを書いたきっかけは何だったのかは、はっきり覚えている。だからこそ人はその曲と深く関わり、自分たちのものにしているんだと思う。なぜならそれは“現実”を表しているからに他ならないし、彼らの生活に関係しているからなんだ。曲が仕上がったら、歌を含め全てを演奏してデモ録りをする。それをメンバーに送って、全員で手を加え、そして MIDNITE CITYにするわけだ。ただ俺が全部書いたとしても、最終工程においてはみんなが重要だよ。

-あなたの書く歌詞は、男女関係の苦しみや、現実での苦悩を綴ったものが多いですが、あなたの個人的経験から発想を得たものなのでしょうか?

ロブ: かつてはそういう悪い関係性を書くことが多かったよ。たくさん経験したからね! でも俺は今100%幸せでプライヴェートな生活は充実している。今は他人の人間関係が変化していくのを覗いているような曲を、今までに無い視点でアルバムに書いているよ。まるで壁にいるハエから見たようにね。

-今回のアルバム・タイトルが『ITCH YOU CAN’T SCRATCH』となった理由は?

ロブ: 今回のタイトルは“Crawlin’ in the Dirt”の歌詞の一節から取ったフレーズなんだ。同じく 2ndアルバムのタイトル『THERE GOES THE NEIGHBOURHOOD』も収録曲“Here Come The Party”のサビから取ったものなんだよ。で、今回のタイトルは過去18ヶ月間のバンドのまとめとも言える。俺たちは何としてもアルバムを完成させて、リリースして、ツアーに出たかった。でもコロナのせいで全部が止まって何もできなくなってしまった。だから好きなこと、生み出すことを、とてつもなくやりたい。でもそれが出来ない。それが今回のタイトルになったんだ。俺たちが溜まったフラストレーションを表す完璧なタイトルだね。

-日本盤ではボーナス・トラックに“Girls Of Tokyo”を収録しています。これは2019年の来日公演を経て作られたものですよね? 特にモチーフとなった人物はいるのでしょうか?

ロブ: これはショーンのアイデアで、日本のファンに捧げる特別な曲を書くべきだって提案してきたんだ。BON JOVIが2ndアルバムで“Tokyo Road”を書いたようにね。良いアイデアだと思ったんで、すぐに書き始めたよ。この曲をすごく誇りに思うし、イギリスから来た5人の男が初めて日本に来た時の気持ちを良く表している。自伝的で、俺たちが経験した全てを集約した曲さ。誰か特別の女性をモデルにしたわけじゃなくて、俺たちの2回のライヴに足を運んでくれて、歓迎してくれた全ての女性についてなんだ。もちろん男性ファンを忘れたわけじゃないよ。同じくらい素晴らしかった。俺たちと同じようにバンドを愛し信じてくれた、この美しい国のみんなに本当に感謝しているよ。

-あなたがミュージシャンになる上で重要な、影響を受けたアルバム5枚を教えてもらえますか?

ロブ:
KISS『ALIVE 2』: 大のお気に入り
DEF LEPPARD『HYSTERIA』: プロダクションとソングライティングにおけるお手本だね
BON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』: 青春時代のサウンドトラックPOISON『OPEN UP AND SAY... AHH!』: サイコ―のパーティ・ロック・バンドさ
DANGER DANGER『SCREW IT!』: メロディック・ロックとグラム・ロックを最高な形でブレンドした、 MIDNITE CITYの音とスタイルに最大級の影響を与えた作品
 俺を語る上では、あとこれに DURAN DURANとEUROPEを加える必要があるね。

-あなたの歌声は非常にパワフルですが、普段何かトレーニングやケアをしていますか?

ロブ: ありがとう。できる限り声の調子には気を使っている。毎回ライヴの前やレコーディングの前にはウォーミング・アップは欠かさないし、水もよく飲むようにしている。あとエンドースメント契約しているVocalzoneが作っている、喉を保護するトローチやお茶をツアー中は使っているんだ。

-現在TIGERTAILZの活動に何か動きはありますか?

ロブ: 今は特に無いかな。

-NITRATEが間も無くニュー・アルバムを出すようですが、あなたとピートは参加しているのでしょうか?

ロブ: NITRATEはバンドじゃないんだ。ニック・ホグによるノッティンガムの知り合いを集めたプロジェクトなんだよ。初期2作で俺は共作、プロデュース、楽器をプレイした。ピートは2ndアルバムで参加している。ニックは次の3作目で参加メンバーを変えて作ることにしたんだ。ただ、そのアルバムで俺は2曲共作し、彼とデモも作ったよ。

-今後のバンドの予定を教えてもらえますか?

ロブ: 何よりもアルバムがリリースされたらツアーに出ることが最優先事項さ。復帰第一弾のライヴは7月11日にイギリスで行うCall Of The Wild festivalと呼ばれる野外フェスなんだ。その後イギリスで5回のヘッドライン・ショウをやって、10月にあるフェスでもヘッドライナーを務める。11月にもヘッドライン・ショウをする予定だ。来年も忙しくなる。ヨーロッパではリスケジュールされた多くのフェスに加えて、2月にはまた別のイギリスツアーが待っている。日本やオーストラリアにも行く予定だよ。

-今後バンド以外で作品を出す予定はありますか?

ロブ: メンバーはみんな外部プロジェクトをやっているけど、MIDNITE CITYが俺たちにとって100%どれよりも優先するトップ・プライオリティさ。俺自身は今 DARREN PHILLIPS PROJECTやNITRATEなどのために、いくつかセッションや曲作りをしているよ。

-最後に、また日本に来たら訪れたいところはありますか?

ロブ: 願わくは次に日本に来た時は観光する時間がもう少し欲しいね。個人的には日本武道館を見に行くのが好きなんだ。伝説の場所で、俺らのヒーローたちが演奏して来たわけだから。他に街をブラブラしたり、ファンとの交流も楽しいよ。

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MIDNITE CITY / ITCH YOU CAN'T SCRATCH
MICP-11625 ¥2,970(税込)
<HM/HR>
☆ボーナス・トラック1曲追加収録


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