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「すべての歌手はベストを尽くすために声帯の仕組みを正確に知るべきだ」-ユーリ・サンソン(ETERNITY'S END)インタビュー

-ETERNITY’S ENDのニュー・アルバム『EMBERS OF WAR』の完成、おめでとうございます。まずは今の気持ちをお聞かせください。

ユーリ・サンソン: どうもありがとう。最高の気分だし、日本の友人と話せる機会があるのはいつも嬉しいね。

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ユーリ・サンソン(ヴォーカル)

-あなたがETERNITY’S ENDに加入した経緯を教えてください。

ユーリ: 確かクリスティアン・ミュンツナーが2018年に初めて連絡をしてきたんじゃないかな(前ギタリストのフィル・トウガスが連絡をしたという説もある)。俺はまだHIBRIAの『MOVING GROUND』の歌メロを作っていたんだ。クリスティアンは俺にETERNITY’S ENDの次のアルバム『UNYIELDING』で俺のヴォーカルを入れたいと考えていると話してくれた。とても驚いたけど、クリスティアンはレコーディングのスケジュールをかなり取っていると話してくれて、彼らと仕事を始めるのはとても簡単だった。そうして今に至るんだ。

-メッセージを貰うまで、クリスティアンやETERNITY’S ENDのことはご存知でしたか?

ユーリ: いや、知らなかった。でも彼らはとても素晴らしいミュージシャンだからね、クリスティアンが初めて連絡をしてきた後、俺は彼らのキャリアについてもっと詳しく知ろうとしたんだ。それがミュージシャンの素晴らしいところで、多くの素晴らしい人々と友人になれるのさ。

-最初にデモを聴いた時に、ETERNITY’S ENDの音楽性をどのように感じられましたか?

ユーリ: クリスティアンが最初のデモを送ってくれたのは、後に『UNYIELDING』に収録される“Blood Brothers (The Oath)”だった。この曲の歌詞を書く機会があったんだけど、とても気分が良かったよ。なぜならこの曲は俺にとってとても快適な曲なんだ。だから歌メロの作曲も歌詞の内容もすんなりと決まったね。

-最終的にETERNITY’S END加入の決断をする決め手は何でしたか?

ユーリ: 自然の流れだったんだ。『UNYIELDING』のレコーディングの後、クリスティアン、フィル、そして俺はアルバムのプロモーションやその反響について話していた。それに俺がポルトガルへ移住する計画も話していたんだ。その後、クリスティアンから新曲についての相談があって、その曲に俺のヴォーカルを入れる可能性があることを聞いたんだ。もちろん俺は「イエス」と答えて、今に至る。今ではバンド全体がヨーロッパに拠点を置いていて、ライヴやビデオの撮影、写真の撮影などがやりやすくなっている。

-『UNYIELDING』は日本で大きな話題となりました。その理由にはあなたのETERNITY’S ENDへの加入もあると思います。日本からのリアクションは如何でしたか?

ユーリ: あぁ…それを知れて嬉しいね。『UNYIELDING』がリリースされた時、日本の友人からたくさんの素晴らしい反応があって、それが俺の胸を高鳴らせたよ。
 俺がHIBRIAを脱退した時、そのせいなのか俺が歌うことを止めるのではないかと思われ始めたんだ。その時、俺は皆に「俺は歌うことを止めないよ」と言ったんだ。まず俺はヴォーカル・レッスンで指導をしているし、それに歌うのが最も好きなことだからね。俺はバンドに在籍せず、人生で他のことをするための時間が必要だったんだ。自分が持つ別の情熱を実践するためにね。それで俺はバリスタ、ビール・ソムリエ、それにハンバーガー職人のコースを受講したんだ。その後にポルトガルで音楽制作のコースを受講した。そんなことをしているうちに、素晴らしいミュージシャンのレコーディングに招かれたり、ポルトガルで多くの人と知り合う機会があったりして、再び作曲もするようになったんだ。

-今振り返って『UNYIELDING』をどのようなアルバムに思われていますか?

ユーリ: まず、『UNYIELDING』のレコーディングは大きなチャレンジだった。ハイトーンの曲をたくさん歌わなくてはいけなくて、『DEFYING THE RULES』(HIBRIAの1stアルバム)の頃を思い出したね。違うのは10年以上経った今でも同じ声域で歌わなくてはいけないことだ。何年経っても同じ聖域を維持する、これはシンガーにとっては最大の難関だと思う。クリスティアンやフィルといっしょに歌メロを作っていると、自信がついてきてね、自分がまだ「調子がいい」という確信が持てるようになったよ(笑) 最終的にネオクラシカルなパワー・メタルと、すべての楽器の一貫性を持ったアルバムになったと思う。パワーとスピードを超えた、ファンが何度繰り返し聴いても飽きないアルバムだ。

-『EMBERS OF WAR』の制作では、当初あなたもドイツへ渡ってヴォーカルの録音を行う予定だったと聞きました。しかしパンデミックの影響で結局ポルトガルの音楽学校のスタジオで録音したそうですね。クリスティアンとはヴォーカル・パートのことでどのようにコミュニケーションを取っていましたか? あなたからのインプットもあったのでしょうか?

ユーリ: そうだ。完璧なシナリオだったけれど、残念ながら実現はしなかった。ヴォーカルのプリ・プロダクションですべてのアレンジとハーモニーを決めた。そして俺がレコーディングしている時は、実はとてもクールなことがあったんだ。クリスティアンはWhatsappでオンラインになっていて、いくつかのフレーズができあがると、それを聴いてすぐに意見を返してくれてね、何か変更できることがあれば、すぐに対応することができたんだ。まるでオンライン制作のようだったね(笑) クリスティアンはそういう人物なんだ。いっしょに仕事をするにはとても気楽な人物だね。

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『EMBERS OF WAR』アルバム・ジャケット

-歌詞はすべてクリスティアンが書いていますが、歌う前に歌詞の内容についてもクリスティアンに訊いたり、自分で調べたりしましたか?

ユーリ: クリスティアンは幾つかの歌詞にまつわるストーリーの背景について教えてくれたよ。これは俺がヴォーカルに加えるべき解釈のためにも重要なことだった。基本的にこのアルバムには第一次世界大戦の海戦についての歌詞や、ファンタジーやSF、コミック、北欧神話、死後の世界にインスパイアされた曲がある。ファンが歌詞をより深く理解して、どの曲がこれらのテーマについて語っているかを見つけるための良い出発点になると思うね。

-ヴォーカルのアプローチは、これまであなたが歌ってきたバンドやプロジェクトと比べて変化している部分はありますか?

ユーリ: それは一緒に仕事をするバンドにもよるね。ETERNITY’S ENDは常に大きなチャレンジなんだ。なぜならハイトーンと大きなエネルギーを持った力強いヴォーカルをしなくてはならないからね。前にも話したことがあるけれど、45歳という年齢を考えると、幾つかの目標を達成するためには異なるヴォーカルの戦略を用いなければならないこともある。例えば“Hounds Of Tindalos”では、ピアノの五音階まで続く高音域の強いヴォーカルが特徴だ。この曲のレコーディングを始める前には、じっくりとヴォーカルのウォーム・アップをしなくてはいけなかった。これは目標を達成し、将来に向けて声帯を維持するための最良の方法だ。

-あなたのヴォーカルは今もパワフルで、素晴らしいハイトーンを聴かせてくれます。その力強い歌声はどのようにして維持しているのですか?

ユーリ: どうもありがとう。簡単なことではないね。でも俺が生徒にいつも言っている良いヒントは、練習を続けることだ。声帯は筋肉の塊だから、体の他の筋肉と同じように鍛えて健康を保つことができる。それに加えて、健康的な食事を摂ったり、ジムに行ったり、有酸素運動をしたりするのもいいだろう。もちろん俺の個人的な意見だけど、すべての歌手はベストを尽くすために声帯の仕組みを正確に知るべきだ。

-『EMBERS OF WAR』であなたのお気に入りの曲はどれでしょう? 理由もあれば教えてください。

ユーリ:難しい質問だ。でも“Hounds Of Tindalos”は、キャッチーなサビと詩の流れるようなヴォーカル、素晴らしいソロが特徴的だね。ベースとドラムも素晴らしい。この曲はレコーディングに参加したことを誇りに思えるような曲かな? 技術的なことを言えば、すべての楽器にとって大きなチャレンジだ。

-少し前にETERNITY’S ENDのメンバーと会ったそうですが、ビデオか何か撮影をしたのですか? メンバーに直接会ったのはこれが初めての機会だったのですか?

ユーリ: そうなんだ。3年間のクリスティアンとハネス・グロスマン(Ds)との友情を経て、初めて握手をしたよ。そしてリーヌス・クラウゼニッツァー(B)とジャスティン・ホムバッハ(G)とも初めて会った。彼らはとても良い人たちで、撮影もうまく行ったよ。冷戦時代に使われていたドイツのバンカーで1日過ごしたんだ。1日大変な作業だったね。でも同時に、シーンの撮影の度に曲がエネルギーで俺達をプッシュして、俺達はベストを尽くしたよ。ミュージック・ビデオは俺達がライヴでオーディンエンスに見て貰いたいと思っているバンドのフィーリングを表現している。このインタビューを読んでいる皆の中で、ミュージック・ビデオを気に入ってくれた人がいたら、ETERNITY’S ENDのライヴへ行く準備をしてくれよ。

-バンドの中心であるクリスティアン・ミュンツナーという人物をあなたはどう評価しますか?

ユーリ: あぁこれは答えるのが簡単だ(笑) クリスティアンは俺が仕事をする機会を得た最も偉大なギタリストの1人というだけでなく、紳士的な人物だ。快適に過ごせるようにすべてに気を配ってくれるような、そんな人なんだよ。最初から彼はとてもクールで、俺達の友情は仕事上だけではなく、個人的にも深まっていった。だから俺はミュージシャンという仕事が好きだし、クリスティアンのような人と知り合えるチャンスがあるんだと思う。

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クリスティアン・ミュンツナー(ギター)

-ツアーができるようにメンバーがあなた以外全員ドイツ人となりましたが、具体的に何か話は進んでいますか?

ユーリ: 初めてのツアーに向けて俺達は夢中になっているよ。今やメンバー全員がヨーロッパにいるから、実現にかなり近づいている。11月24日に『EMBERS OF WAR』が日本でリリースされ、11月26日には全世界でリリースされる。これは俺達の3枚目のアルバムだけど、おそらく今俺達が受けている素晴らしいフィードバックのおかげで、ETERNITY’S ENDはプロモーターの目に留まることだろう。これは間違いないと思うよ。日本にも行けるように祈っている。

-日本にもツアーで訪れてくれる可能性はあるのでしょうか?

ユーリ: そうだね。俺たちは日本でプレイしたい! また日本でツアーをして、友人に会えるのは最高だよ。でも、もちろん新型コロナウイルスの状況を待っているところだ。ワクチンを接種した人の数が増えているし、おそらくコンサートはすぐに再開できると思っている。

-HIBRIAでのデビュー以降、あなたにも日本の思い出が多いかと思いますが、印象に残っているエピソードはありますか?

あぁ、あるよ。年に2回も日本へ行った2009年の最初のツアーのことは忘れられないね。最初は5月の単独ツアーで、2度目はLOUD PARKでプレイをした。日本の思い出はたくさんある。日本の文化や美食、東京・大阪・名古屋へ行く度に日本の友達がよくしてくれることが大好きなんだ。日本に着いてからいつもすることは、ホテルの部屋でアサヒビールを飲みながら動画を作ることだ。これは迷信のようなものだけどね(笑) もうひとつの楽しい思い出は、ツアーの最終日に、最後のライヴが終わると、バンドのメンバーとプロモーター全員でカラオケに行って、たくさん歌って楽しんだことだ。俺はこれがとても好きで、次は家族と小さな子供を連れていって、日本のことをもっと知りたいと思っている。早く実現できることを願っているよ。

-あなたは現在ポルトガルの音楽学校で教師をしているとのことですが、どんなことを教えているのでしょうか?

ユーリ: すべての年齢層と音楽のスタイルに合わせて教えているよ。もちろんほとんどの中高年のシンガーは、ロックやヘヴィ・メタルを習いたいと言ってくるね。教えることの良い面は、多くの素晴らしいシンガーやバンドを知る機会があることだ。俺はこのことをとても気に入っている。

-ETERNITY’S END以外にもALL ABOUT YOUというバンドで活動をしていますが、これはどんなバンドですか? 簡単に紹介をしてください。

ユーリ: ALL ABOUT YOUはとても自然に始まったんだ。俺がポルトガルに移る以前、2017年にオンラインのインタビューでアンドレ・プリスタと出会った。その2年後、俺達はポルトガルのリスボンで行われたALTER BRIDGEのコンサートのチケットを買った。SHINEDOWNがオープニング・アクトだったね。俺達は同じ場所に行ったんだけど、アリーナが混雑していたから、俺達は会場で会うことができなかったんだ。コンサートの後、帰宅するまでの間に俺達は何度かメッセージの交換をしていたんだけど、その中のひとつに「こんなバンドを作る必要がある」というのがあった(笑) アンドレはポルトガルで有名なギタリストで、素晴らしいソングライターでもある。それで彼が作った曲を送ってくれて、俺が歌メロを作って、後は自然にできあがっていったんだ。
 ALL ABOUT YOU はモダン・ロック/メタル・バンドで、これまでの俺達の作曲してきたものに誇りを持っている。俺達はライヴで、オーディエンスが俺達と歌い、頭を振り、いっしょにジャンプするような曲を作っているんだ。何のプレッシャーもなくスタートしているよ。これまでに2曲リリースされたけど、ファンの皆から素晴らしい反応を貰っている。そのうちの1曲“Mess & Shame”には皆もご存知な2人のスペシャル・ゲストが参加しているんだよ。最初のギター・ソロを弾いているのは高崎晃、もう1人はベースの山下昌良さ。彼らとは大の仲良しなんだ。もうひとつ重要なことはアイヴァン・ベックとマルセロ・モレイラとも大の仲良しで、彼らをバンドの仲間として迎え入れることができて最高だということ。もうすぐ完成するALL ABOUT YOUの1stアルバムには、歌いやすいサビとキャッチーなリフがたくさん入っているよ。

-最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

ユーリ: 再び日本へ行く新しい機会が待ちきれないね。前にも言ったように、俺は日出ずる国とその文化を愛している。今は日本で再びをライヴができるということに少し近づいたと思う。でも新型コロナウイルスの状況がもっと安定するまで、もう少し時間をかけて、それからライヴをやろう。それまでは僕のSNSにメッセージを送ったり、ALL ABOUT YOUやETERNITY’S ENDのYouTubeチャンネルをフォローしたり、曲を歌う練習をしたりね。次は皆が俺といっしょに歌っている姿が見たいね…。改めて素晴らしいインタビューをありがとう。すぐに会おうね!

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