アレルギーも悪くない(エッセイ)

 私は小さいときから食物アレルギーがあった。卵と乳製品は食べられず、最近ではナスとカカオもアレルギー症状が出るため避けている。旅行などの外出先で、限られた時間の中食べるものを探すのは、少し大変だ。周りの人に手間や迷惑をかけてしまうこともある。しかし、彼らは面倒くさがりもせず、私に対応してくれる。高校時代のうれしかったエピソードを紹介しよう。
 一つはイギリス留学に行った時のこと。二台のバスで移動中、食事当番の子がスーパーでパンやハムなどの簡単な昼食を買ってきてくれた。しかし、パンにはすべて卵や乳製品が入っていた。朝ごはんの残りが余っていないか探したがない。困っていると、同じバスに乗っていた子が隣のバスまで行って、朝食のパンが余っていないか聞いてくれた。幸い余っていたようで、その子はパンを持って戻ってきた。その気がよく回るところに憧れた。彼女とはあまり接点がなくどんな子なのかあまりわからなかったが、その出来事があり、優しい人だと思うようになった。
 もう一つは、クラス全体で研修旅行に行ったときのことだ。女子四人で晩御飯を食べに中華料理屋へ向かった。いくつか料理を注文して分け合うことになったが、私がいるため食べる料理も限られてくる。もっと色々なものを食べたいだろうに、と申し訳なくなって謝ると、彼女たちは笑ってこう言ってくれた。
「アレルギーなのは仕方がないし、もるちゃんが謝らなくていいんだよ」
その言葉に、心が温かくなった。私が足を引っ張っているのではという気持ちがあったが、その気持ちがスッと軽くなっていった。彼女たちと同じクラスでよかった、と心の底から思ったものだ。
 ほかにも、学校でおやつが出たときに食べられるものがあるか聞いてくれた友人がいたなど、うれしかった経験はたくさんある。アレルギーで損をすることも多いが、人の優しさに触れられる点では、アレルギーも悪くないな、と思えている。

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