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UX向上しながら問い合わせを50%削減した話


はじめに

ランサーズ(lancers.jp)でエンジニアをしている @intrudercl14です。
この2023年は、企画〜ディレクション、エンジニア担当として既存機能のサービス改善に取り組んだので、その内容を紹介できればと思います。

この記事では、具体的にどう改善したか?というより、現状把握のプロセスや手法、思考に重きをおいて書きます。どうやって企画し、どう設計し、どうデリバリーするのか?という話はあまり書きません。(もし聞きたいことがあったらコメントなど頂ければ嬉しいです!)

※ 社外秘情報などもあり、数値面はやや濁した数値になっています。

お問い合わせを起点に現状を把握する

まずは前提から

ランサーズは、お問い合わせの運用・管理に zendesk を利用しており、zendesk上にすべてのお問い合わせや運用情報が集約されています。

お問い合わせごとにタグ付け運用がされ、どういうジャンルのお問い合わせがどの頻度で何件発生しているのかがモニタリング可能になっています。
今回は、「本人確認に関して」のお問い合わせ改善の取り組みをご紹介します。

本人確認とは
ランサーズサービス上にて本人確認書類を提出することで本人確認承認マークを付与し、安心安全な仕事のやり取りができるといった機能です。

※ 謝辞: お問い合わせごとにタグ付け管理が継続して運用できていることで分析・改善活動ができます。日々の運営・お客様対応によりサービスを支えてくれてる運営チームには心から感謝です。

問い合わせに向き合う

まずは、問い合わせを1件ずつ確認しながら整理していきます。

  • お客様とサポート担当者のやり取り、最終的にどうなったか?までを見に行き、サービス上で起きていることの解像度を上げる

  • 問い合わせごとに「なにを求めた問い合わせなのか?」を分類する

  • 最終的に分類結果を集約する

具体的には、以下を行いました

  1. zendesk APIを利用して問い合わせとそのやり取り結果をCSVダウンロード ※

  2. スプレッドシートに展開

  3. 分類列に「問い合わせの分類」を定義&整理

  4. ピボットテーブルでサマリーを作る

※ ChatGPTに 「zendeskAPIを使って問い合わせとやり取り結果をCSVでダウンロードするスクリプト作って」といって python のコマンドを作りました

お問い合わせだけではミスリード

お問い合わせはユーザが自力で解決できない結果発生します。
本来、面倒な問い合わせをしたくないはずにも関わらず、お問い合わせをさせてしまっているということにとても申し訳ない気持ちになりました。

すぐにいくつかの改善を進めようとコードを書き始めましたが、それが表面的な解決にしかならないと気づき、手を止めました。
問い合わせは、既存のサービスの仕様・サービス運用の上で発生します。
それを把握せずして本質的な改善は難しいと気づき、現状把握に動きます。

現状把握の3つの軸

以下の3つの軸で現状を把握・整理することにしました。

  • ユーザを把握する

    • すでに前述の問い合わせから更に、どういうユーザがどういう目的で利用する機能なのか?

    • 目的に照らし合わせると、どういう心境で利用し、問い合わせに至っているのか?

  • 機能、仕様、サービス運用を把握する

    • どういった機能で、利用の条件や利用方法はなにか?

    • 機能を利用する上での仕様やルールはなにか?

    • 機能に関連するサービス上の運用(今回でいうと本人確認申請の承認業務など)はなにか?

    • 運用の手順やルールはなにか?

    • 運用上の課題(例えば効率や正確性など)はなにか?

    • 運用状況・履歴はなにがあるか?

  • システム・データ・設計を把握する

    • どういう設計で実装されているか?

    • 関連するデータはなにか?

    • 技術的問題や負債などはなにか?

構造的に把握していくことで立体的に起きていることと要因が繋がっていくのです。これを 現状把握の US2分析 (User/Service/System) と名付けることにしました。

現状把握したことでわかったこと

以下のような負のサイクルが起きていると整理ができました

マイナスなUXによる問い合わせ増加の負のサイクル
  1. 15年前に作られた申請フォームがミスが起こりやすいフォームである

  2. 故に、不備率(申請もれや間違い)が40%とかなり高い

  3. 不備時の案内が汎用的で分かりにくく、結果問い合わせになる構造

  4. 年間の問い合わせ1000件のうち、不備理由不明が65%、650件もの問い合わせが発生している

ここまで整理できてようやく全容が見えてきました!

あるべきをデザインし、改善する

問い合わせが多く発生し、UXが悪く、運用担当メンバーにも苦労をかけている原因がわかったら、とにかくあるべきUXをデザインし、今後、改善のサイクルを回しやすいようなシステムに設計し、とにかく作るだけです。
場合によっては、UI/UXデザイナーとディスカッションしてあるべき体験をデザインしてもらうのが良いでしょう。

前述の現状と原因から以下のような改善を実施してリリースしました。
ちゃんと現状が分かれば、あるべきに改善することはそう難しくはないと思います。

問題と解決策

予想を上回る改善結果

元々、30%程度の効果があれば・・・と思っていたところ、大きく効果が出たことはとても嬉しい経験です。

実施の結果

お問い合わせ、申請不備率が改善できただけでなく、不備→再申請の数も減ったことで、本人確認の承認件数を削減することができました!
さらに、システムの見直しの結果、申請結果のモニタリングができるようになったことで、継続的な改善ができるようになったことがエンジニア的には嬉しいですね。

まとめ

このように 現状分析を丁寧に行い、本質的な改善をすることで、予想以上の改善に繋がっています。この他のジャンルに関しても同様に50%以上の問い合わせ改善の実績が出ており、今後の取り組みに力が入ります!

また、このような状況に対して「お問い合わせ担当者が課題提起するべき」という責任分担はうまく行かないかもしれません。

お問い合わせ対応は、緊急度の高いものから、ユーザーに向き合って対応していきます。また、一人で全てのお問い合わせを対応できるわけではなく分担するため情報把握をして、マクロな視点でサービス担当に連携していくというのはとても難易度が高いと思います。
例えば、「こういう傾向で問題になっている可能性がある」のような連携は容易かもしれませんが、それだけでサービス担当は意思決定に到れるでしょうか?

サービス担当として、問い合わせを分類し、n1まで調査して現状を見に行くということはとても重要な要素と感じます。

今回、構造的な把握を進めたことで、機能・運用・システムを通して適切な体験設計としてできてないことを理解し、心から、なんとかして改善したいという気持ちになれたことは、サービス開発する上で重要なマインドセットだと感じています。

最後までご覧いただきありがとうございます。
サービス開発・運営する方々へ、なにかの助けになれば嬉しいです(^^)


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