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シンギュラリティはやってくる?!【AI vs 教科書が読めない子どもたち】

今回紹介するのは、
AI vs 教科書が読めない子どもたち」です!

教育学を専攻していることもあり、「教科書が読めない子ども」というワードに引っ張られて購入してみました!

著者の新井紀子さんは、「ロボットは東大に入れるのか」という大規模プロジェクトを主導した人物で有名です。

さて、このプロジェクトの目的について新井さんは次のように述べています。

私は東大に合格するロボットを作りたかったのではありません。本当の目的は、AIにはどこまでのことができるようになって、どうしてもできないことは何かを解明することでした。そうすれば、AI時代が到来したときに、AIに仕事を奪われないためには人間はどのような能力を持たなければいけないかが自ずと明らかになるからです。

AIに仕事を奪われる未来はくるのか、私たちに求められる力は何か、などと漠然とした不安に駆られることも多い時代に、ぜひ読んでいただきたい一冊です!

では、少しだけ、内容を見てみましょう!

真の意味のAIは生まれるのか

そもそもAIとは、Artificial Intelligence(人工知能)の略称です。

人工知能に関する定義は、まだ研究者によってバラつきがあるようですが、筆者の定義する人工知能は、人間と同等のレベルを持つ知能です。業界では、これを「強いAI」や「AGI(Artificial General Intelligence)」と表現します。

対して、現時点で私たちの身の回りにあるのは、AIを実現するために開発されている「AI技術」です。何か一つのタスクにおいて、人間以上の能力を持ちますが、いくつものタスクを活用して動くことはありません。

アメリカの発明家で人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル博士らが示した、2045年にシンギュラリティ(技術的特異点:人間の知能を超えるAIが登場する)が訪れるとの見解もありますが、筆者は、少なくとも私たちが生きているうちに「真の意味でのAI」が完成することはない、と断言します。

私もそうですが、技術が発展すれば、機械が勝手に学習して、いつかはドラえもんみたいなロボットできるんじゃないの??と楽観的な考えは通用しないようです。

理由は簡単で、AIは機械で、機械は数字がすべてだからです。

しかし、真の意味でのAIが生まれるには、私たちの感情ですとか、常識といったものを数理モデル化しなければいけません。

私たちが、どのように嬉しいという感情を抱くのか、なぜ、人を殴ってはいけないのか、について機械に教え込む人が必要なのです。

確かに、AI技術の発展は目覚ましいですし、加速度的に進化し続けるでしょう。しかし、私たちとAIが共存して生活を送るなんて未来はまだ先のようです。

AIに仕事を奪われても新しい仕事が生まれるから大丈夫?

時代が変わるにつれて、仕事は変化してきました。

産業革命で、農作業が効率化されたことにより、農業に携わる人数は減りましたが、産業を担う肉体労働者が生まれました。

かつて時代の花形だとされたタイプライターや、牛乳の配達といった仕事がなくなっても、日本の失業率に変化はそこまでありませんでした。

だから、AIが生活の中に入ってきても仕事はなくならないでしょうか?

筆者はここでは、「だから」は使えないと言います。今までとは質的に大きな違いがあるからです。それほど、AIの及ぼす影響は大きいということです。

金融業界に目を向けてみると、ジャパンネット銀行では、ビックデータによる機械学習ができるAIが優位になる、与信審査を完全に自動化したといいます。

みずほファイナンシャルグループは、ITによる業務効率化で10年間で約2万人の人件費削減を検討しているようです。従業員6万人の企業が、です。

その他の業界でも同じです。全雇用者の仕事の半数が仕事を失う可能性があるとも言われていますが、これほど大規模な影響を与えたことは今までの時代ではなかったでしょう。

AI vs 教科書の読めない子どもたち

さて、「ロボットは東大に入れるのか」プロジェクトでおなじみの、東ロボくんは、本書が出版された当時、偏差値57を記録しています。

読解があるために難しいとされていた英語や国語においても、過去のデータを教え込むことによってここまでの学力に達しているのです。MARCHの中でも学部によっては合格できてしまうレベルです。大学生の上位20%に入ろうかというあたりです。

また、筆者は学力と強い相関関係があるのは「読解力」だとして、中高生を対象とした独自の調査を行っています。

その結果は、中高生は「教科書も理解できていないレベル」だと言わざるを得ないものでした。

そして、正答率だけみたらAIの方が高いものも見られました。

つまり、私たちはAIに代替されないと思われていた文章の意味を理解する「読解力」の分野においても、多くは東ロボくんに劣っていたということです。

この結果が意味することは、真の意味のAIが完成しなくとも、AIによって多くの仕事が代替されていく可能性があるということです。題名はある種の警告でした。

しかしながら、残念なことに、読解力を伸ばす要因は見つかってないようで、読書量やテレビ・スマホの利用時間、学習時間などはほとんど関係ないらしいのです。

おわりに

もし、AIが人間の仕事の大半をまかなうようになったら、どういう社会になるんでしょうか…。

資本主義が成り立つかも怪しいですし、お金の概念自体大きく変わりそうですね。

読解力が学力と関係があることが、データとして出されているのも興味深かったです。どうしたら読解力が上がるのかが解明されたときには、人間の読解力が上がるよりも先にAIの読解力が上がりそうです。

AIは私たちの生活を豊かにしてくれる…。そんな期待ばかり先走りですが、AIに限らず客観的なデータで自分のゆがんだレンズを直すことは大事かもしれませんね!

では、また!


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