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門下コンサート

先日、高一の娘の初めての門下コンサートがありました。
門下コンサートというのは、文字通り、教授の門下生によるコンサートで、音大のホールで、大学生、大学院生に混じり入門半年の娘も出していただきました。
よく考えてみたら、今までの「人前で弾く」経験は、同年代の子ばかりが弾くコンクールや、年下の子供達のトリとして弾く、個人の先生の発表会のみ。自分よりはるかにうまい人たちに混じり、スタインウェイのコンサートグランドピアノをスポットライトの中で弾くのは初めての経験でした。
バルトークやラフマニノフの難曲をバリバリ弾く男子たちの後出てきてバッハを弾く娘は、大木に囲まれた小さな花みたいな感じ。

繊細な(すぎる?)感じで始まり、一番得意なはずのサラバンドで暗譜ミス!私も頭が真っ白になりましたが、なんとか止まらずにごまかして続けて最後まで演奏できました。

何かの本で読んだのですが、暗譜で複雑な曲を弾く時の脳の動きは、例えばサッカーのゴールキーパーや卓球の選手が一瞬で相手の体の微妙な動きをみて球の動きを察知して飛び出る時と同じようなものらしく、何千時間、何万時間の練習を重ねてきた結果、普通の頭の使い方では難しい、複雑な動きを脳が瞬時に判断しているような感じらしいです。
でも、せっかくの脳の動きも、別のことを考えてしまうと途端にダメになるらしく、「失敗したくない」とか、「良い音を出したい」「勝ちたい」と意識すると途端に崩れる。
娘は、おそらく「教授や同門の先輩に良いところを見せたい」と思って演奏したのが良くなかったのでしょう。

それにしても、ステージに出たら一人。スポットライトの中で、次の音が思い出せなくても誰も助けてくれません。一人で切り抜けて、最後まで弾ききり、堂々とお辞儀をして舞台を去らなければならない。時間にしたら5分10分ですが、この経験を切り抜けることでどれだけ逞しくなるのかと思いました。

門下生コンサートに出てきた子たちは、みんなできるだけ多くの人前で弾く機会が欲しい、より大きな会場で、より多くの人が見る前で弾きたいという子たちですが、若い時は、喜びよりも、失敗や恐怖を感じる経験の方が多いはず。コンサート後の教授を囲んだ食事会では、お腹を空かせた男子にしか見えなかった彼らですが、みんな5歳、6歳からピアノに向かい、競争率100倍のベルリン行きの希少な切符を手に入れるために切磋琢磨してきた留学生たち。
頭の中はどうなっているのかなあ、どんな経験をしてきたのかなと思いましたが、初対面で聞くのもなんなので、「僕は日本語が少しできます!コンニチハ!」「日本のご飯は美味しいですね」とかの、ピアノとは関係ない話しかしませんでした。

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