定性分析のやりかた

定性調査の分析には集計表やグラフはない。発言録、録画・録音とモデレーターの記憶(メモ)があるだけである。
これらにモデレーション体験・マーケティング知識、消費者理解などを合わせて分析・報告書を作成する。方法論は体系化されてない。
<定性分析の6ステップ>
FGI分析は、次の手順に留意して行う。①インタビュー中から分析視点を持つ、②インタビュー直後の「印象」を大事にする、③デブリーフィングを活用する、④冷却期間を置く、⑤始めたら一気に結論まで書く、⑥表現方法はクライアントの好みに合わせるの6ステップである。もちろん、テーマによっては飛ばしたり、加えたりするステップはある。1on1インタビューも基本的に同じ。
<インタビュー進行中から始まる分析>
インタビューが始まるとインタビューの進行、次にどの話題を振るか、今の発言の意味は、発言のない対象者をどうするか、聞き漏らしはないか、などに注意を払うのがモデレーターで、どう分析するかに注意を向けることはむずかしい。
これは当然、妥当な姿勢であるが、これだけではモデレーターとしての成長は弱く、会話を上手に進める司会者以上にはなれない。
MCと言われる司会とモデレーションは職業として目指すところ、期待アウトプットが全く違う。
<秘密の仮説>
インタビュー中から分析を始めるためにモデレーター独自の仮説を持つという方法がある。これは本人のモデレーター体験から作られる仮説で「こういった質問にはこう反応するのが対象者である」という内容になる。仮説通りの反応か仮説とズレる反応かでテーマへの対象者の理解度を図り、質問の仕方、テーマの振り方が的確かが判断できるとともに、テーマ、つまりはクライアントの仮説の正当性が判定できる。クライアントの仮説はマーケター発想だから、それを対象者発想のモデレーター仮説にぶつけてみることがインタビュー中の分析の始まりになる。
クライアントと同じ視点でインタビューを進行させるだけでなく、モデレーター独自の視点を持ち込むことが重要である。
<その直感はだいたい正しい>
インタビュー中に「結論はコレだな」と直感することがある。
しかし、それは論理的に考えられなかったり、途中で消えてしまったり、それとは違う直感が浮かんだりする。そして、インタビュー終了直後にこの数々の直感が蘇る。(もちろん、消えたまま思い出せないものもある)
ここで、それらを振り返り、論理的に組み立てるより、ストーリー化することを目標に自分ひとりで考える。
<言語隠蔽効果と場の気分>
すぐにバックルームに行ってデブリーフィングに入ると、つまり、言語表現してしまうと直感は消えてしまうことが多い。そこで、後片付けを手伝う風で、自分ひとりで考える。最も印象に残った発言をした対象者の席に座ってみるとその発言の意味が再発見されることもある。
このモデレーターの直感と同じようにバックルームにいる人のそれぞれが違った直感を持つ。
そして鏡1枚隔てただけで両者の印象、感覚、得られる直感は大きくことなる。対象者と場を共有する、同じ空間を体験するモデレーターならではの直感は特有のものである。これはオンラインインタビューでは実現できないことであり、FGIはリアルに限る理由でもある。 
 *これ以降の手順は次回でのべる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?