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第2回 短歌の会 振り返り

阿吽です
ポレモロさん主催の「第2回 短歌の会」の振り返りをしていきます

かなり時間が経ってしまいました
私事ですが、文章を書けるような状態になく書くなら落ち着いた時に、と決めてたので遅くなりました
申し訳ございません

流れは前回の振り返りと同じです
短歌の性質上、作り手と読み手で解釈の乖離が少なくともあると思います。これから書く内容は私の解釈をこれでもかと綴っております(しかも初心者)のでもしかしたら不快に思う部分もあるかもしれません、、ご了承を


1.はじめに

「写真使ってもいいですか?」
それを生業とする者にとってこれ以上なく嬉しい瞬間です

今回のお題の画像は、私が学生の頃に撮り溜めたフィルム写真の中から提供しました

写真もまた短歌と密接なもので、表現の仕方やプロセスは違えど本質は同じものだと思っています

この写真を見て、何を感じ何を思い出すのか
脚本の柱が固定されたこの写真でいくつの物語と出逢えるのかとても楽しみにしていました

今回選んだのは5つ、僭越ながら講評させていただきます

※事前に5名の方には許可をいただいています!

2.うみねこさんの作品

どうせコピペで作った教室なのに
2組に行くと初見の街だ

私が何かを作る時、また誰かに伝えたい時に大切にしているものがあります

受け手の脳に土台を作る早さ

です
特に競技性が高いもの(いくつかの作品と並ぶ場合)ほど意識しています

1回読んで情景が浮かぶこの作品はそれだけで質の高いものとなっていて、すぐに身につく能力ではないです

以下、私の解釈です

登場人物は15歳の新高校生
同じ中学からの友人は違うクラスになってしまったので、ホームルームが終わったらすぐに会う約束をしていた
ホームルームが終わり、友人の待つ2組へ向かう
時計の位置、少しズレた机、そして消したばかりの黒板
私と同じ景色のはずなのにどうしてこうも違うのか


もう少し砕いていきます

短歌には(というか文字で表現するもの全般)リズムがあります
短歌は5/7/5/7/7で、5つの文節4つの転換からなるものです、転換が大きくても小さくても美しく意味を成すところに私は良さを感じています

では、もう一度うみねこさんの作品を見ていきます

どうせコピペで作った教室なのに 2組に行くと初見の街だ

私の解釈では2つにしか分かれてなく転換も2つです
言葉を選ばずに言うとリズムが悪い、です

ですが私がこの作品を評価したのはここです

前半の句のリズムが悪いのは、新しい環境下での不安と焦りがそうさせているのだと感じました
「どうせ」から見える不安、コピぺという単語を使用したのもストレートで素晴らしく、何より「街」というワードに表情が見えていて素晴らしいです

ワードの取捨選択が非常に気持ちいいものとなっていてそれが前半のリズムの悪さをより際立たせていると思いました

短歌と聞くと、ワードにどんどん服を着せていくイメージがあり無意識にしてしまう人が多いです
もちろん、日本語の美しさが表れていて一般的に評価されるものはその方向にあります

ただ、私はこの作品の素直さと受け手の脳に土台を作る早さを評価しました



3.watosonさんの作品

二言か三言放り投げられる
チョークを折って雑学を言う

字幕映画を観てる時、私は大事なシーンだけ字幕を見ていません
これは自分でも説明ができないもので、何故と聞かれたらわからないが答えです

"何か"を見て感じようとする時、視覚と聴覚のバランスや深さというのはこちらの興味に大きく左右されそれを意図的に操作することはできません

以下、私の解釈です

登場人物は16歳の高校1年生
テストも終わり、皆が勉強への意欲が落ちている中、化学の先生はいつもと変わらない授業をしている
こちら側に問いかけたりはなく、黒板に黙々と書いては消し、を繰り返している
化学の先生の知らない姿、皆はいつも寝ていて気付いていない
よしチョークが折れた、雑学の時間だ

前述で伝えたかったことはこの作品の主人公の行動に全て表れています

また、対比がとてもわかりやすく表現されていて、全て恣意的に流れています

寝ている皆と主人公、意欲と忌避、静かな化学の先生と強い筆圧、そして興味と無駄
31音にこんなにも散らばっているのは柱が良く文章全体を見た時の印象がそうさせています
つまり、うみねこさんの作品とはまた姿が違うものでワードやリズムに作為的なギミックがありません

具体的に
「二言や三言」と「チョークを折って雑学を言う」
この2つを見比べるとわかりやすいと思います
曖昧な言い回し(寝ている皆には必要なテスト範囲の情報)
主人公には二言だったか三言だったかさえ覚えていない情報であり、後者は雑学を言うきっかけまでも覚えている

これが全て作為的でないのが本当に素晴らしいです

これは失礼に値することになりますが(すみません…)もっと言うと、この句の順位が低いのも美しいです
評価しなかったから悪いとかではなくこの句に複数票を入れたのが私だけというのが雑学を待ってる主人公とリンクしていてとても嬉しかったです


4.はさまりさんの作品

このクラスが最高の宝物だ
卒業アルバムなくした 無限

これは全て持論なのですが、写真にマイナスな感情を加える時、全体を暗くするのは2流であり感性が豊かな写真家は日差しを加えます

逆の要素を足すというわけではなく、あくまで受け手が感じるギリギリのマイナス感情が日差しなのです

以下、私の解釈です

登場人物は卒業式後のクラスメイト全員
教室でアルバムを見る時間
部活で活躍してるあいつ、修学旅行で変顔してるあいつ、文化祭で泣いてるあの子
「そうだ、みんな後ろにメッセージ書いてよ」
ふと
アルバムをなくした時のことを思う

宝物をなくしたとき、無限の感情が交差します
言語化ができないという意味での無限です


私の解釈ではこの句には枕詞「ら」が入っています

卒業アルバムなくした無限

に見えました
短歌の調子的にはあってもなくても崩れるわけではないですがなぜ抜いたのか、ここに関しては無理に考察や解釈をするのは蛇足だと感じ、だからこその無限なのだと落ち着くことにしました


最初この作品と向き合った時、教室でなくした主人公を想像し項垂れながらもみんなから笑われてる姿が宝物だ、とそう解釈しました

しかし見れば見るほど無限と結びつかなくて困惑しました

熟考の末、"なくしたら無限"の解釈になったのです

またまた失礼な解釈となってしまったら申し訳ないですがこの作品は「無限」だけが異様に光っています
つまり、前の28字は「無限」を引き立たせるためにある文字列で、写真で言うところの被写体です

前述で写真の話をした中の日差しが「無限」にあたり、「卒業アルバムなくした 喪亡」という作品なら票は入れていません

前回のねこねずみさんの作品同様、短歌というのは非常に繊細で一文字で表情が変わるものです
はさまりさんの作品は「無限」の選択がバチっとハマり我々受け手に「無限」の解釈を与えてくれました



5.懐かしむ会さんの作品

復帰技というよりどうしようもない
人が使うバグみたいな、その

つくづく日本語は美しいと思います

全く同じ文章でも親が違えば、別のものに聞こえる
というのは大袈裟でしょうか

何個も短歌と向き合ってきて、意図的な場合を除き既視感を抱いたことがありません
毎回、心が濡れるのがどうしようもなく心地良いのです

以下、私の解釈です

登場人物は18歳の高校3年生
友人と僕は進路も決まり、学校での過ごし方を余らせていた
そんな中2人がハマった格闘ゲーム
同じ時期に始めたはずなのにお前が使うとキャラがいきいきとしているのはなんで

票を入れたみなさんも感じてると思います
「その」の良さを

日本語の美しさについて熱弁した後なので暑苦しかったら申し訳ないですがもう少しだけお付き合いください


この作品ははさまりさんのものと似ているようで違うと思います
構成や目を引くポイントは同じですが、背景が違います

わかりやすく、緩急としましょうか
はさまりさんの作品には緩急が良い意味で存在しておらず永続的な感情があります
懐かしむ会さんの作品は反対に緩急が出ているところに良さがあります

決して緩急があれば良いというわけでもなく、非常にリスクがあるものだと思っています
要は緩急には感情の起伏がつきものでそれを受け手はあまり好みません
短歌を読んでいて忙しさは要らないからです

ですが、この作品の緩急は「、その」のみに凝縮されていて且つ文章の最後なので受け手には余韻しか残らないのです

あと、お題にあまり沿ってないのでは?と思いましたが、お題をインサートに使っている点が最強におしゃれだったのでこと短歌に於いてはこういうズラし方もいいなと勉強になりました


6.白犬さんの作品

何となくでよかったんだと思う
「頑張ろうね」とか 何となくで

フランス映画の好きなところに「意味のある無駄」があります

特にヒューマンドラマに於いて役者にセリフを言わせない時間帯やインサートが多く全体の雰囲気を柔らかくしています

「君の名前で僕を呼んで」という映画のラスト
主演のティモシーシャラメが焚き火の前で涙を流します
何も言わずに、ただ火を見つめます
そのままエンドロールに移行し映画は終わり、火がパチパチと鳴る音だけが耳に残って離れません

以下、私の解釈です

僕たちは掃除の時間にだけ繋がっていた
全員が帰った後の放課後
どちらが綺麗に黒板を消せるかという勝負も、机をこれでもかと綺麗に揃えるあの時間も、全てを忘れているかのように、あの子は静かだった
2つ並んだ黒板消しがいつもより離れて見えた
「あのさ」
後悔だけが今も残る

私が短歌で1番好きなスタイルでした
故に阿吽賞です

主観があまりにも入っている、という指摘は甘んじて受け入れますがこういう句が好きなのはどうしようもない事実で、好きが評価に映るのは必然的です

一言、余韻が素晴らしいです
映画的であり、身近にあるものでもあるのが本当に良くて心がジュワーと染みていくのがわかります

フランス映画が好きな理由と同じで、31音全てが意味のある無駄です
全てのワードに代わりがあり、「何となく」は極論「黒板消し」で代用できます
言いたいことは、これほど刹那的な作品はないということで詠んだ本人だけが後悔という刺青として残り続けます

私の解釈では「後悔」としましたが、「何となくで」で始まり「何となくで」で終わってるという点からの推測です、短歌として無理やり意味を持たせた感じに見えてしまったら申し訳ないですが他意はないです

本当に好きな作品でした
ありがとうございます

7.おわりに

またまた長々と自己満の文章をぶつけてしまい申し訳ございません
そして、解釈を述べることを快く承諾してくださった5名の方々、主催のポレモロさんに感謝です

短歌は素晴らしいです、皆さんもやりましょう

最後に、また宣伝失礼します
個人アカウント「和紙」で超ラフなnoteも書いています
好きなもの、感じたこと、体験記、紹介など
興味がある方はぜひ一度遊びに来てください


それでは、あう〜ん

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