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シヴァ・ビンドゥ06. トリックスター

このようにオウムの主宰神「シヴァ大神」を、「対立するもの(両極)が結びついたところにあらわれるもの」に関連していると考えると、クンダリニーも同じ働きをするエネルギーであることに気づきます。

ヨーガの身体観では、尾てい骨に眠るクンダリニーを覚醒させると、背骨に沿って第一チャクラから第七チャクラまで、交差する左右の管を上昇していくとしています。このときクンダリニーは左右および基底部(地)と頭頂部(天)という対極をつないでいくのですから、クンダリニーとシヴァ大神は同じものということもできます。

オウムの世界観「コーザル(無色界)」→「アストラル(色界)」→「現象界(欲界)」という三界の構造にそって、オウムの神のありようを整理して図に示してみます。

・見えない世界(神の光、集合無意識、コーザル界、無色界など)にシヴァ大神の法身(データ・エネルギー)がある。それは「対立物を統合する」働きをするエネルギーである。

・見えない世界からイメージの世界(夢の世界、アストラル界、色界)に降りてくると、それはグヤサマジャや太極図や十字架や、その他、さまざまなマンダラ的な統合のイメージ群としてあらわれてくる。

・このような幾何学的なマンダライメージは、現象界(意識、欲界)に近いところでは、「人物像」(変化身)となる。たとえば、イエス・キリストやヘルメスやホルスやスサノオといった人物像。

三界のイメージ

このような神の化身である人物像は「トリックスター」と呼ばれ、西洋・東洋を問わず、世界のあらゆる神話のなかで「対立物を結びつける」働きをする人物として登場します。

トリックスター的人物像に共通する性格・性質は「二重性」「両義性」です。これは「A」と「反A」という対立するものがあるとき、たとえばそれを「善」と「悪」とした場合、二極を統合する働きのあるトリックスターは、善と悪という二つの性質をあわせもっています。そのためトリックスターは常に「矛盾」をはらんだ存在になります。

イエス・キリストという人物像のトリックスター的側面を例にあげると、イエスにみられる「二重性」「両義性」の最大のものは「神の子」というあり方ではないでしょうか。「神の子」とは、神の性質と人間の性質の両方を持っている、つまり、神でもなく人間でもない、神でもあり人間でもある、神と人間の中間に位置する存在だということになります。

また、イエスは「罪人」として処刑されて「救世主」になりましたが、ここでも「罪人」と「救世主」という矛盾する性質を背負っていることがうかがえます。これらはイエスのもつ「二重性」「両義性」といえるでしょう。

イエスが、神の世界(あの世・天国)と人間の世界(この世)の橋渡しをするトリックスター的働きをするならば、このように「神」「救世主」と「人間」「罪人」両方の性質をおびていなければならないのでしょう。


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