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有価証券報告書、読む理由&コツ

こんにちは
有価証券報告書(有報)は約100ページくらいあり、読むのが大変。しかし、ボリューム分の情報がギッシリ詰まってます。読んだ方が良いのですが、何故読まないといけないの理由を記事にします。
 3月決算を迎え、4月以降開示されるこの文書。今からその読みかたを勉強することはとても意義がある。

有価証券報告書を読む必要性など

 株式への投資目的で、有報見る場合は全てをみることはない。ポイントを絞ることが可能。そのポイントを抑えると有報は簡単に理解可能。特に企業分析をするため有報は避けて通れません。
 まず、有報を読む理由は、

 企業の将来の業績予想をより正確に把握する

これに尽きる。業績予想に必要な細部の情報が集約された文書です。

 ちなみにほとんどの人が、企業を知るため真っ先に読むものは「四季報」だと思う。四季報には、上場企業約三千強の会社から投資対象を絞り込むツールである。では、その次に読むものは・・・決算短信では。決算短信には、さらに詳細な業績や財務情報がある。そして、さらに読むのが「有報」となる。決算短信では得られない詳細な情報があるので。
 しかし、結構な文章量で読むのはとても大変。でも、読むことで得ることができる情報が貴重です、有報で得る情報はというと、

 ・当該企業の事業課題
 ・事業上のリスク

ざっくりこんな情報を得る。特に課題やリスクは投資を継続するかどうかを判断する重要な情報となる。

有報を読む

 有報は決算短信によく似ていることが見るとわかる。なので、決算短信と有報を比較しながら読むと有報の意味が簡単に理解可能。そして、決算短信と有報の違いを意識すると読みやすい。

 決算短信とはなにか、その開示目的は投資家素早く企業情報を提供することにあります。
 では、有報の開示目的はというと、金融商品法に基づき市場の公正化と投資家保護が目」となります。決算短信と違い「時間」です。

 決算短信 ==> 速報(正確な「決算」情報)
 有報   ==> 正確(決算情報に基づく詳細な情報)

 つまり、投資家保護の観点から、決算短信で開示した決算情報を有報をもってより詳細に開示します。正確性を重視するため、決算短信より遅く開示されます。そのためより詳細な記載となってます。もう少し補足すると、

 決算短信==> 決算情報を「数字」で速報
 有報  ==> 決算情報の「数字’」言葉・詳細データで分析

従って、財務上のリスクや決算数字に対する要因など、有報に記載される。そのような情報をもとにあらゆる角度から会社の将来見通しを立てることができる。

しかし、有価証券報告書には、「今後数字を出すためにどのように成長するか。」といった徹底的な要因分析をされた文章の情報が記載されています。

したがって、有価証券報告書を理解することで、数字だけではなく文章でも企業の奥深い実態・情報を知り、企業分析をすることができます。

有報はどこに開示される

 有報は、

 ①金融庁のEDINET(エディネット)
 ②企業のHPの「投資家情報(IR)」

いずれかです。EDINET(エディネット)とは、金融庁が提供しているサービスであり、四半期報告書や有価証券報告書を閲覧することができます。すべての上場している企業の有価証券報告書を読むことができます。

有価証券報告書の構成

 有価証券報告書は大きく分けて第一部と第二部に分かれています。

 第一部は「企業情報」、
 第二部は「提出会社の保証会社等の情報」

第二部は、企業の事業性や株価に関わりがない情報なので、見る必要はありません。したがって、投資家が有価証券報告書を見る際には、第一部の「企業情報」を見て分析しましょう。

第一部の「企業情報」の構成は、

 第1 企業の概況 ・主要な経営指標の推移
  ・沿革
  ・事業の内容
  ・関係会社の状況
  ・従業員の状況
 第2 事業の状況 ・業績等の概要
  ・生産、受注及び販売の状況
  ・経営方針、経営環境及び対処すべき課題等
  ・事業等リスク
  ・経営上の重要な契約等
  ・研究開発活動
  ・財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
 第3 設備の状況 ・設備投資等の概要
  ・主要な設備の状況
  ・設備の新設、除却等の計画
 第4 提出会社の状況 ・株式等の状況
  ・自己株式の取得等の状況
  ・配当政策
  ・株価の推移
  ・役員の状況
  ・コーポレート・ガバナンスの状況等
 第5 経理の状況 ・連結財務諸表等
  ・財務諸表等
 第6 提出会社の株式事務の概要 –
 ・・・・

 そこで次の章では、有価証券報告書の見るべきポイントをご紹介します。

有価証券報告書の読むべきポイント

 有価証券報告書の読むべきポイントに絞って説明をしていきます。

「第1 企業の概況」は、

1 主要な経営指標等の推移
2 沿革
3 事業の内容
4 関係会社の状況
5 従業員の状況

主要な経営指標等の推移
 主要な経営指標等の推移には、売上や純資産や総資産など経営に関わる重要な経営指標等が記載されています。この中でも見ておきたいのは、売上と経常利益と自己資本比率の推移です。成長しているかどうかは単年ではわからないので、前期、前々期と比べて伸びているかを確認しましょう。ここで、経営指標が悪化している場合、決算説明会資料を見れば「なぜ悪化してしまったか。」が簡単に理解できます。決算説明会資料はパワーポイントのような、イラストがメインなので非常にわかりやすいです。決算説明会資料は企業のHPの「投資家情報(IR)」から見ることができます。また主要な経営指標等の推移は決算短信からもわかります。なので、主要な経営指標等の推移がわからない方は決算短信を読みましょう。

従業員の状況
従業員の状況は次の通りの構成です。

・従業員数
・平均年齢
・平均継続年数
・平均年間給与
・事業の種類別の従業員

従業員は人・金・モノ・情報と言われる経営資源の一つであり、企業にとって事業を回すうえで非常に重要になります。

従業員の状況の読み方

・従業員数の推移
過去の有価証券の従業員数と比較することで企業が順調かどうかを見ることができます。従業員数が増えていれば、売り上げも伸びやすいです。
・平均年間給与
特にIT企業では平均年間給与が低い場合、競合企業に人材を流出してしまう可能性があります。
・平均勤続年数
平均勤続年数が低い場合、労働環境に問題がある場合があります。
ただし、設立年数が浅い、新規採用が多い場合は例外。

「第2 事業の概況」

1 事業等の概要
2 生産、受注および販売の状況
3 経営方針、環境変化及び対処すべき課題等
4 事業等のリスク
5 経営上の重要な契約等
6 研究開発活動
7 財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

生産、受注および販売の状況
生産、受注および販売の状況では、当期における生産や販売の実績が記載されています。ここで注目すべきことは「主要な取引相手がどの程度の割合を占めているか。」という点です。結論から言うと、取引相手は一社に依存せず分散している企業が良いです。取引相手が一社に依存してしまうと、取引相手の経営不振が自社にも大きな影響を与えるからです。取引相手がうまく分散していると、取引相手のうち1社の業績が停滞したとしても、自社への影響は軽微に抑えることができます。したがって、生産、受注および販売の状況では、相手別売上や相手別仕入れで一社に依存していない企業が良いといえます。

主要な取引相手が一社に占めている場合
 ジャパンディスプレイやKLabなど、iPhoneを製造するアメリカ企業のApple Inc.に依存する日本企業も非常に多いです。もちろんApple Inc.が成長している際は、成長しやすいですが、Apple Inc.の業績が傾けば、同じように業績・株価が落ち込んでしまいます。現に中小型液晶パネルを製造するジャパンディスプレイは、Appleが販売するiPhoneの売れ行きの不調が要因で経営が大きく揺らいでいます。

経営方針、環境変化及び対処すべき課題等

「経営方針、環境変化及び対処すべき課題」は難しく聞こえてしまいますが、「今後成長していく際に、どのような障壁があるか。どのようにその障壁を解決していくか。」ということです。ファンダメンタルズ分析に基づいて投資する場合、企業のリスクや課題の把握は必ずしておかなければなりません。

事業等のリスク

 中長期投資やファンダメンタルズ投資をする上で、最も大切な情報が「事業等のリスク」です。事業等のリスクは、事業を行っていくうえでの懸念材料をあらかじめ投資家に知らせているものです。もちろん記載されているリスクが顕在化した場合、企業の売上や利益を下げる要因にもなります。その銘柄を保有しリスクが顕在化した場合、銘柄を売ることが損を回避する手段です。よくある例をご紹介します。

・当グループの事業活動は、世界経済及び特定の国・地域の経済情勢の影響を受ける。
・当グループは、取引先及び取引地域が世界各地にわたっているため、為替相場の変動リスクにさらされている。

企業ごとのリスクだけではなく、経済の影響でも株価に影響を与えることを忘れてはいけません。

財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析では、どの事業で収益を上げることができているかを見ましょう。黒字企業だったとしても、セグメント別(事業別)で見た際に、大きく赤字を出してしまっているセグメント(事業)が行っている企業かもしれません。具体例でいえば楽天が挙げられます。

楽天は楽天ショッピングや楽天カードなど、大きな利益あげる事業を持つ一方、携帯事業は一向に赤字が続いています。

このように、複数の事業を行う企業は、セグメント別(事業別)で売上・利益を見なければなりません。その事業で将来的に採算が合うような見込みがあるならば投資をしてもいいでしょう。投資フェーズや赤字事業が採算をとれるかどうかを推測することも、投資の面白さでしょう。

「第3 設備の状況」

1 設備投資等の概要
2 主要な設備の状況
3 設備の新設、除去等の計画

主要な設備の状況
 主要な設備の状況では、現在の設備投資の状況を見ることができます。

設備の新設、除去等の計画
 設備の新設、除去等の計画では、新たな設備投資や取り除く設備投資が記載されていることから、今後どの事業に力を入れようとしているかが推測することができます。設備投資の新設の欄を読むことで、企業が複数事業をやっているうちの、どの事業を成長させたいのか意図を読むことが大切です。また除去される場合は、「なぜその事業を縮小・撤退するのか。」を明確にする必要があります。

「第4.提出会社の状況」~「第7.提出会社の参考情報」

 決算短信の内容と重複する部分が多いです。有価証券報告書より決算短信の方が早く開示されます。したがって、決算短信の内容を見ておけば、第4.提出会社の状況以降は見なくてもいいでしょう。

最後に

有価証券報告書を見る際は、要点を絞って企業分析を行いましょう。有価証券報告書は100ページもあり、文章や数字も非常に多く混乱しやすいです。もし、一度有価証券報告書を読んでみて、理解に苦しむ場合は、決算説明資料や説明会の動画と一緒に読むことで理解がしやすくなります。決算説明資料や説明会の動画はパワーポイントのようなイラストメインでの説明がされているので、頭にも入ってきやすいでしょう。


ここまで読んで頂きありあとうございます。